「明日の朝、いい波が立つかもしれない」。そんな予報を見たら、居ても立っても居られなくなるのがサーファーの性(さが)ではないでしょうか。ハイエースがあれば、前日の夜に出発して海の目の前で車中泊し、誰よりも早くピークに向かうことができます。サーフボードをたっぷりと積み込み、足を伸ばしてぐっすり眠れるハイエースは、まさにサーファーにとって「走る秘密基地」です。この記事では、ハイエースを活用してサーフィンと車中泊を楽しみ尽くすためのノウハウを、選び方からカスタム術まで余すことなくご紹介します。
ハイエースがサーフィンと車中泊に選ばれる4つの理由

サーフポイントの駐車場を見渡すと、必ずと言っていいほど目にするのがハイエースです。なぜこれほどまでに多くのサーファーから愛され続けているのでしょうか。単に「荷物がたくさん積めるから」というだけではありません。ハイエースには、サーファーのライフスタイルを劇的に快適にする、計算し尽くされたかのような魅力が詰まっています。ここでは、ハイエースが最強のサーファーズビークルと呼ばれる理由を4つのポイントで深掘りします。
ロングボードも中積みできる圧倒的な積載力
サーファーにとって最大の悩みの一つが、サーフボードの積載方法です。特に9フィートを超えるロングボードの場合、一般的な乗用車ではルーフキャリアに乗せるしか選択肢がないことも少なくありません。しかし、ハイエースの荷室長(荷室の長さ)は、標準ボディでも約3メートルあります。
これにより、大切なロングボードを車内にそのまま中積みすることが可能です。車内に積むことで、高速道路での風切り音や飛来物による破損のリスク、さらには真夏の紫外線や熱によるボードへのダメージを防ぐことができます。もちろん、ショートボードであれば、友人の分まで何枚も余裕で積み込めます。大切なギアを安全かつ手軽に運べる点は、ハイエースの最大のメリットと言えるでしょう。
足を伸ばして快眠できるフラットな空間
「いい波に乗るためには、十分な睡眠が必要不可欠」です。ハイエースの荷室は、タイヤハウスの出っ張りが少なく、スクエアな形状をしているため、ベッドキットを設置することで広大で完全にフラットな就寝スペースを作り出すことができます。
一般的なミニバンやSUVでシートを倒して寝る場合、どうしてもシートの段差や傾斜が気になり、翌朝に体が痛くなることがよくあります。しかし、ハイエースのベッドキットなら自宅のベッドと変わらないレベルの寝心地を実現できます。身長が高い男性でも足を曲げずに真っ直ぐ寝られるため、早朝のラウンドに備えてしっかりと体力を回復させることができるのです。この「質の高い睡眠」こそが、サーフィンのパフォーマンスアップに直結します。
着替えや休憩も快適なプライベート空間
冬のサーフィンや、雨の日の着替えほど過酷なものはありません。冷たい風に吹かれながら震えてウェットスーツに着替える経験は、誰しもが持っているはずです。ハイエースの広い車内空間(特にハイルーフやミドルルーフ、あるいは標準ボディでもベッドの高さを調整した場合)があれば、車の中で着替えを済ませることができます。
外からの視線を気にする必要がなく、暖房の効いた車内でゆっくりと着替えられるのは、女性サーファーにとっても大きな安心材料になります。また、2ラウンド目の波待ちの時間に、車内で足を伸ばしてランチを食べたり、少し昼寝をしたりと、リビングのようにくつろぐことも可能です。ハイエースは単なる移動手段ではなく、海辺での滞在そのものを快適にする「部屋」としての機能も果たしてくれます。
リセールバリューが高く経済的にも優秀
車を購入する際、どうしても気になるのが維持費や将来的な売却価格です。ハイエースは国内だけでなく海外でも圧倒的な人気を誇るため、走行距離が伸びても、年式が古くなっても、中古車価格が下がりにくい「リセールバリューの王様」として知られています。
サーフトリップで長距離を走ることが多いサーファーにとって、過走行になっても値段がつくというのは非常に大きなメリットです。また、耐久性が非常に高く設計されている商用車ベースであるため、故障が少なく、長く乗り続けることができます。初期投資は少し高く感じるかもしれませんが、数年乗って売却した際の差額を考えると、実は他のミニバンよりもトータルのコストパフォーマンスが良いというケースも珍しくありません。
サーファーにおすすめのハイエースの選び方

「ハイエース」と一言で言っても、ボディサイズやエンジンの種類、グレードなど、そのバリエーションは多岐にわたります。自分のスタイルに合わないモデルを選んでしまうと、運転がしにくかったり、パワー不足を感じたりして後悔することになりかねません。ここでは、サーフィンと車中泊を目的とする場合に、どのような基準でハイエースを選べばよいのかを解説します。
ボディサイズは「標準」か「ワイド」か
ハイエース選びで最初に迷うのがボディサイズです。大きく分けて「標準ボディ(ナロー)」と「ワイドボディ」の2種類があります。日本の道路事情や一般的な駐車場事情を考えると、初めてのハイエースなら「標準ボディ」がおすすめです。
標準ボディは全幅が約1.7メートルと5ナンバーサイズに収まるため、細い道やサーフポイント近くの狭い駐車場でも取り回しが楽です。一方、ワイドボディは全幅が約1.9メートルあり、室内空間は圧倒的に広いですが、コインパーキングや狭い路地での運転に気を使います。もし、「家族4人でゆったり寝たい」「車内の広さを最優先したい」という場合はワイドボディ(特にミドルルーフ)が候補になりますが、日常使いの利便性を重視するなら標準ボディがベターです。
エンジンは「ディーゼル4WD」が最強
サーファーにおすすめしたいエンジンの組み合わせは、ズバリ「ディーゼルエンジンの4WD」です。なぜなら、サーフポイントへの移動は長距離になることが多く、燃料代が安い軽油で走れるディーゼル車は経済的だからです。また、ディーゼル特有の太いトルク(駆動力)は、重い荷物を積んでの高速巡航や、坂道での発進を楽にしてくれます。
さらに重要なのが4WD(四輪駆動)です。サーフポイントによっては、駐車場が舗装されておらず、砂地やスタックしやすい草地であることも多々あります。2WDのハイエースは後輪駆動でリアが軽いため、砂浜やぬかるみで意外と簡単にスタックしてしまいます。波が良い日に砂にハマって動けなくなる悲劇を避けるためにも、4WDを選んでおくと安心感が違います。
グレードは「スーパーGL」一択
ハイエースバンには主に「DX(デラックス)」と「スーパーGL」というグレードがあります。仕事でガンガン使い倒すならDXも選択肢に入りますが、サーフィンや車中泊、普段使いも兼ねるなら迷わず「スーパーGL」を選びましょう。
スーパーGLは、乗用車に近い内装やシートが採用されており、長時間の運転でも疲れにくい設計になっています。後部座席も座り心地が良く、エアコンもリアまで効きます。また、防音材や断熱材もDXより多く使われているため、静粛性や快適性が段違いです。DXは鉄板がむき出しの部分が多く、夏は暑く冬は寒い、走行音もうるさい傾向にあります。後からカスタムでお金をかけるよりも、最初から快適装備が整ったスーパーGLを選ぶ方が満足度は高いはずです。
快適なサーフトリップを実現する内装カスタム

ハイエースを手に入れたら、次は自分だけのサーファーズ仕様にカスタムしていきましょう。最初から全てを完成させる必要はありませんが、車中泊とサーフィンを快適にするために「これだけはやっておきたい」というカスタムポイントがあります。DIYで安く仕上げるか、専用パーツで見栄え良く仕上げるか、楽しみながら検討してみてください。
必須級アイテム!ベッドキットの導入
車中泊をするなら、ベッドキットはマストアイテムです。ハイエースの荷室にフレームを組み、マットを敷くことで、上下2段にスペースを分けることができます。上段は就寝スペース、下段はサーフボードやポリタンク、ウェットスーツなどの濡れ物や汚れ物を収納するスペースとして活用できます。
ベッドキットを選ぶ際のポイントは、「高さ調整機能」がついているかどうかです。積載する荷物の高さ(例えば、ポリタンクの高さやクーラーボックスの大きさ)に合わせてベッドの高さを変えられると、非常に便利です。また、マットの厚みも重要で、厚みがあるほど寝心地は良くなりますが、その分ヘッドクリアランス(天井までの高さ)が狭くなるので、バランスを見て選びましょう。
水や砂に強いフロアマット・床張り加工
サーファーの車内は、どうしても砂や海水が入り込みやすくなります。純正のカーペット素材のままだと、砂が繊維の奥に入り込んで取れなくなったり、海水が染み込んでカビや異臭の原因になったりします。そこで強くおすすめしたいのが、撥水性のあるフロアマットを敷くか、荷室全体をフローリング加工(床張り加工)することです。
特に木目調のクッションフロアなどを使った床張り加工は、見た目がおしゃれになるだけでなく、掃除が劇的に楽になります。濡れたウェットスーツのまま座ってもサッと拭き取れますし、砂が落ちてもほうきで掃き出すだけで綺麗になります。本格的な施工はプロに頼むのが確実ですが、最近ではカット済みのフロアパネルも販売されており、DIYで設置する人も増えています。
天井スペースを有効活用する室内キャリア
ハイエースの広い頭上空間を使わない手はありません。天井の左右にあるアシストグリップなどを利用して「室内キャリア(インナーバー)」を取り付けると、サーフボードを天井付近に収納できるようになります。これにより、ベッドスペースを一切圧迫することなく、長尺のボードを運ぶことができます。
特にショートボードやファンボードであれば、天井に2〜3枚並べて積載可能です。また、バーを利用してウェットスーツをハンガーにかけて干したり、ランタンを吊るしたりと、使い方は無限大です。純正のアシストグリップに取り付けるだけの簡易的なものから、ガッチリと固定できる専用のサイドバータイプまで様々な商品が出ていますので、積みたいボードの重さに合わせて選びましょう。
断熱対策とプライバシー保護のカーテン
ハイエースは鉄板の面積が広いため、外気の影響をモロに受けます。夏はサウナのように暑く、冬は冷蔵庫のように冷え込みます。快適に車中泊をするためには、断熱対策が欠かせません。窓ガラスに貼る「マルチシェード(サンシェード)」は、断熱効果だけでなく、外からの視線を遮断するプライバシー保護の役割も果たします。
また、運転席・助手席と後部スペースを仕切る「間仕切りカーテン」を設置するのも効果的です。冷暖房の効率が上がり、寝ている間にフロントガラスからの冷気が入ってくるのを防げます。本格的に断熱したい場合は、内張りを剥がして断熱材を入れる施工もありますが、まずは窓ガラスの対策をしっかり行うだけでも、車内の快適さは大きく変わります。
車中泊サーフィンにあると便利な必須アイテム

車というハードウェアが整ったら、次は快適に過ごすためのソフトウェア、つまり「グッズ」を揃えましょう。サーフトリップを何度も経験しているベテランたちが「これは絶対に持っていく」と口を揃えるアイテムを厳選しました。これらがあるだけで、海上がりの着替えや夜の過ごし方が格段にレベルアップします。
ポータブル電源と電気毛布
近年、車中泊のスタイルを一変させたのが大容量のポータブル電源です。これがあれば、エンジンを切った状態でもスマホやPCの充電ができるのはもちろん、電気ケトルでお湯を沸かしてカップラーメンを食べたり、コーヒーを淹れたりすることができます。
特に冬の車中泊サーフィンにおいて、ポータブル電源と電気毛布の組み合わせは「神器」と呼ばれています。ハイエースの広い車内を暖房なしで温めるのは困難ですが、電気毛布があれば就寝時に布団の中はポカポカです。寒さで体力を消耗することなく、翌朝のサーフィンに備えることができます。夏場には扇風機(サーキュレーター)を回す電源としても活躍します。
保温カバー付きポリタンクと簡易シャワー
海上がりに体を流すための水は必須ですが、特に冬場はお湯を使いたいものです。そこで役立つのが、保温性の高いカバーに入ったポリタンクです。自宅で熱めのお湯を入れておけば、数時間は温かい状態をキープできます。朝一のサーフィン後、冷え切った体に温かいシャワーを浴びる瞬間は至福のひとときです。
また、電動式の簡易シャワー(モバイルシャワー)も併せて用意しましょう。シガーソケットやUSB電源で動くタイプなら、十分な水圧でしっかりと砂や海水を洗い流せます。手動のポンプ式よりも手軽で、両手が使えるため着替えもスムーズに行えます。タンクを2つ用意して、1つは浴びる用、もう1つは食器洗いや手洗い用と使い分けるとさらに便利です。
防犯対策のキーボックス・キーケース
最近の車は電子キー(スマートキー)が主流ですが、サーフィン中にこれをどう管理するかは大きな課題です。海の中に電子キーを持って入るわけにはいきません。そこで活躍するのが、ダイヤルロック式の「キーボックス(セキュリティボックス)」です。
車のドアノブや牽引フックなどの頑丈な部分に南京錠のように取り付け、その中に鍵を収納します。ただし、最近はキーボックスごと破壊される盗難被害も報告されているため、取り付ける場所を目立たない位置にするか、電波遮断ポーチに入れて車内のわかりにくい場所に隠し、物理キー(メカニカルキー)だけを持って海に入るという方法も推奨されています。自分の通うポイントの治安に合わせて対策を選びましょう。
LEDランタンとマグネットフック
夜間の車中泊では、ルームランプだけではバッテリー上がりが心配ですし、光量も調節しにくいことがあります。そこで、充電式のLEDランタンをいくつか用意しておくと便利です。暖色系の明かりを選べば、リラックスした雰囲気を演出できます。
また、ハイエースのボディは鉄でできている部分が多いので、マグネットフックが非常に役に立ちます。リアゲート(バックドア)を開けてフックを取り付ければ、そこにランタンを吊るして着替えの際の照明にしたり、濡れたウェットスーツやタオルをハンガーで掛けて干したりすることができます。強力なネオジム磁石タイプなら、濡れて重くなったウェットスーツでもずり落ちずに支えてくれます。
ハイエースでの車中泊における注意点と対策

夢のようなハイエースライフですが、気をつけておかなければならない現実的な問題もあります。トラブルに巻き込まれたり、周囲に迷惑をかけたりしては、せっかくのトリップも台無しです。ここでは、ハイエースオーナーが特に意識すべき3つの注意点とその対策について解説します。
車両盗難への警戒レベルを上げる
残念なことに、ハイエースは「日本で最も盗まれやすい車」の一つとして知られています。海外での需要が非常に高く、部品取りとしても価値があるため、窃盗団のターゲットになりやすいのです。特にサーフポイントや人気の少ない駐車場での長時間の駐車、あるいは自宅の駐車場であっても油断は禁物です。
対策としては、純正のセキュリティだけでなく、物理的にハンドルを固定する「ハンドルロック」や、タイヤを固定する「タイヤロック」を併用することが効果的です。「この車は面倒くさそうだ」と犯人に思わせることが重要です。また、GPS追跡装置を設置したり、セキュリティアラームのLEDを目立つように点滅させたりするのも有効です。車両保険への加入も、万が一のために必須と言えるでしょう。
駐車場の高さ制限(2.1m)に注意
ハイエースの標準ボディ(標準ルーフ)の車高は約1.98メートルですが、ミドルルーフになると約2.1メートル、ハイルーフだと約2.29メートルになります。ここで問題になるのが、都市部の立体駐車場やコインパーキングによくある「高さ制限2.1m」の壁です。
標準ルーフであれば基本的にクリアできますが、ルーフキャリアを取り付けていたり、タイヤをインチアップして車高を上げたりしていると、2.1メートルを超えてしまう可能性があります。ミドルルーフのワイドボディを選ぶ際も、ギリギリ入れる場所と入れない場所が出てきます。出先で駐車場が見つからずに困ることがないよう、自分の車の正確な車高(カスタム後の実測値)を把握し、事前に駐車場の高さ制限をチェックする癖をつけましょう。
結露対策と換気の重要性
車中泊につきまとう問題が「結露」です。人は寝ている間にコップ1杯分の汗をかくと言われており、閉め切った車内ではその水分が窓ガラスに冷やされて大量の水滴となります。放っておくと、内装が濡れたりカビが発生したりする原因になります。
対策としては、少しだけ窓を開けて空気を循環させることが基本です。雨の日でも窓を少し開けられるように「サイドバイザー(ドアバイザー)」は必須装備です。また、市販のUSBファンを回して空気を動かしたり、吸水性の高いタオルや結露取りワイパーを用意して、朝起きたらすぐに窓を拭く習慣をつけましょう。除湿剤を車内に置いておくのも、地味ながら効果があります。
サーファーとしてのマナーも忘れずに
車中泊はあくまで「仮眠・休憩」です。道の駅やサービスエリア、海岸の駐車場で、テーブルや椅子を外に出してキャンプ行為をしたり、夜遅くまで騒いだりするのは厳禁です。また、サーフポイント周辺の住民の方への配慮(早朝のアイドリングストップやドアの開閉音など)も忘れずに。素晴らしい環境を未来に残すためにも、グッドマナーで楽しみましょう。
まとめ:ハイエース×サーフィン×車中泊で人生が変わる
ハイエースを手に入れるということは、単に便利な車を買うということ以上の意味があります。それは、「波に合わせて自由に生きる」という新しいライフスタイルのチケットを手に入れるようなものです。思い立ったらすぐに海へ向かい、波の音をBGMに眠りにつき、朝日とともに極上の波に乗る。そんなサーファーにとっての理想の週末が、ハイエースがあれば現実のものとなります。
積載量、居住性、耐久性、どれをとってもサーフィンと車中泊においてハイエースの右に出る車はありません。自分のスタイルに合わせて内装をカスタムし、お気に入りのギアを詰め込んで、あなただけの秘密基地を作り上げてください。きっと、これまでのサーフィンライフが色褪せて見えるほど、充実した時間が待っているはずです。




