「視力が悪いけれど、サーフィンを始めたい」「海の中でコンタクトレンズをしていても大丈夫なのかな?」そんな疑問や不安を抱えている方は非常に多いです。美しい海と波、そして周囲の状況をしっかりと見るためには、良好な視界が欠かせません。
結論から言うと、サーフィンはコンタクトレンズをしたままでも楽しむことができます。実際に、多くのサーファーがコンタクトレンズを使用しながら波乗りをしています。しかし、海という自然相手のスポーツだからこそ、陸上とは異なるリスクや注意点が存在するのも事実です。
この記事では、サーフィンでコンタクトを使用する際の正しい選び方や、レンズを失くさないためのテクニック、そして知っておくべき目のトラブルについて、初心者の方にも分かりやすく丁寧に解説します。視界の悩みを解消して、思い切りサーフィンを楽しみましょう。
サーフィンでコンタクトを使用する際の基本知識

視力が悪い方にとって、サーフィン中の視界確保は死活問題です。波のうねりを見極めたり、他のサーファーとの接触を避けたりするためには、クリアな視界が必須となります。まずは、サーフィンにおけるコンタクトレンズ使用の基本的な考え方と、最適なレンズの選び方について解説します。
サーフィン中のコンタクト使用は一般的?
サーフィン中にコンタクトレンズを使用することは、実は非常に一般的です。視力が悪いサーファーの多くが、コンタクトレンズを装用したまま海に入っています。裸眼で0.1を切るような視力の場合、波のブレイクする位置や、アウト(沖)から来るセットの波を確認することが困難になり、安全面でもリスクが高まります。
もちろん「絶対に大丈夫」というわけではありません。水流や衝撃でレンズが外れてしまうことや、海水による目のトラブルといった可能性はゼロではないからです。しかし、正しい知識と準備を持っていれば、コンタクトレンズは視力の悪いサーファーにとって最も手軽で有効な解決策となります。眼鏡のように物理的に壊れて顔を怪我するリスクも低いため、多くの人に選ばれているのです。
ハードレンズとソフトレンズ、どちらが適している?
コンタクトレンズには大きく分けて「ハードレンズ」と「ソフトレンズ」がありますが、サーフィンに適しているのは圧倒的にソフトレンズです。これには明確な物理的な理由があります。
ハードレンズは硬い素材でできており、黒目よりも一回り小さいサイズです。瞬きをするたびにレンズが動く構造になっているため、衝撃に弱く、少しの水流や風圧で簡単に目からポロリと落ちてしまいます。また、万が一サーフボードや他のサーファーと接触した際に、硬いレンズが目の中で割れて角膜を傷つけるリスクも否定できません。
一方、ソフトレンズは水分を含んだ柔らかい素材でできており、黒目全体を覆うようにフィットします。目に吸着する力が強いため、多少の水しぶきや軽いワイプアウト程度では外れにくいという特徴があります。安全面と紛失リスクの両面から見て、サーフィンにはソフトレンズ一択と言えるでしょう。
なぜ「ワンデー(1日使い捨て)」が推奨されるのか
ソフトレンズの中でも、サーフィンに最も推奨されるのは「1日使い捨て(ワンデー)タイプ」です。2週間交換タイプや1ヶ月交換タイプを使用している方もいるかもしれませんが、サーフィン用としてはおすすめできません。その最大の理由は「衛生面」と「紛失時のコスト」にあります。
海水には雑菌やプランクトン、目に見えない微細な砂などが大量に含まれています。サーフィン後のレンズにはこれらが付着しており、通常の洗浄ケアだけでは完全に落としきれないことがあります。汚れたレンズを翌日以降も使い続けることは、眼病のリスクを跳ね上げる行為です。その点、ワンデータイプなら海から上がった後に捨てるだけなので、常に清潔な状態を保てます。
また、海の中でレンズを失くすことは珍しくありません。高価な長期使用タイプのレンズを片方失くしてしまった時の精神的なショックは大きいものです。ワンデータイプであれば、「失くしてもまた新しいのをつければいい」と割り切ることができ、リラックスしてサーフィンに集中できます。
【サーフィン用コンタクトの選び方まとめ】
・基本は「ソフトレンズ」を選ぶ(ハードはNG)
・衛生面と紛失リスクを考え「ワンデータイプ」にする
・UVカット機能付きなら紫外線対策にもなりベスト
コンタクトを失くさないための実践的なテクニック

ソフトレンズを使用していても、激しい波に巻かれたり、大量の海水が顔にかかったりすれば、レンズが外れてしまうことはあります。しかし、ちょっとしたコツや習慣を身につけることで、その確率を劇的に下げることができます。ここでは、ベテランサーファーも実践している「コンタクトを失くさないためのテクニック」をご紹介します。
ワイプアウトの瞬間は必ず目を閉じる
コンタクトレンズを失くす最大の原因は、目を開けたまま水中に投げ出されたり、強い水流を目に受けたりすることです。特に初心者のうちは、波に乗ろうとしてバランスを崩し、海面に叩きつけられる「ワイプアウト」が頻繁に起こります。
この時、「落ちる!」と思った瞬間に反射的に目を強く閉じる癖をつけてください。これは最も単純ですが、最も効果的な防御策です。まぶたを閉じていれば、水圧でレンズが流されることはまずありません。水中でも身体が安定し、海面に顔を出すまでは目は閉じたままにしておきましょう。
ドルフィンスルー(波の下を潜り抜ける技術)の際も同様です。水中で目を開けて波の状況を確認したい気持ちは分かりますが、波が激しく崩れている場所では水流が複雑です。薄目を空ける程度なら大丈夫なこともありますが、基本的にはしっかりと目を閉じて、レンズを守ることを優先しましょう。
目に水が入っても絶対に手で擦らない
サーフィン中に海水が目に入ると、塩分の刺激で目が染みたり、ゴロゴロしたりすることがあります。この時、無意識に手で目をゴシゴシと擦ってしまうのは厳禁です。濡れた手で目を擦ると、その摩擦でレンズが簡単にズレたり、ポロリと落ちたりしてしまいます。
また、手についた砂が目の中に入り込み、レンズと角膜の間でジャリジャリと擦れて激痛を引き起こす原因にもなります。もし違和感を感じたら、まずは手を使わずに何度か「パチパチ」と瞬きを繰り返してください。涙の作用で自然と違和感が解消されるのを待つのが正解です。どうしても触る必要がある場合は、一度岸に上がり、真水で手を洗ってから慎重に対処しましょう。
予備のコンタクトレンズを常備する場所
どんなに気をつけていても、失くす時は失くします。重要なのは「失くしても大丈夫な準備」をしておくことです。予備のコンタクトレンズは必ず持参しましょう。ただし、保管場所には注意が必要です。
ビーチに置いてあるバッグの中に予備を入れておくのも良いですが、車で海に行く場合は、車内にも予備を置いておくことをおすすめします。海の中で片方だけ失くしてしまった場合、とりあえず片目の視力だけでなんとか岸まで戻り、車ですぐに新しいレンズを装着できれば、その後のサーフィンも継続できます。
また、帰りの運転のために眼鏡も必ず持参してください。長時間海に入って目が充血したり疲れたりしている場合は、無理にコンタクトを入れ直さず、眼鏡で帰宅して目を休ませるという判断も大切です。
サーフィン中に起こりうる目のトラブルとリスク

海は楽しい場所ですが、目にとっては過酷な環境でもあります。海水、紫外線、風、そして砂。これらはすべて、コンタクトレンズ装用者の目にとってダメージの要因となり得ます。ここでは、知っておくべきリスクと、最悪の事態を防ぐための知識について深掘りします。
海水中の雑菌による感染症リスク
海水は見た目が綺麗でも、決して無菌ではありません。特に雨が降った後の海や、河口付近のポイントでは、陸地から流れ込んだ生活排水や汚れにより、大腸菌などの細菌濃度が高まっていることがあります。
コンタクトレンズはスポンジのように水分を吸収する性質があるため、汚れた海水を吸い込んだまま長時間目にのせていると、レンズが細菌の温床となります。これが原因で「細菌性角膜炎」や「結膜炎」を引き起こすことがあります。目が充血したり、目ヤニが止まらなくなったりした場合は、すぐに眼科を受診しましょう。放置すると視力低下を招く恐れもあります。
アカントアメーバ角膜炎の恐怖
コンタクトレンズユーザーにとって最も恐ろしい感染症の一つが「アカントアメーバ角膜炎」です。アカントアメーバは淡水や土壌に生息する微生物ですが、ごく稀に海水や、シャワーの水などを介してレンズに付着することがあります。
角膜に小さな傷(砂などでついた傷)があると、そこからアメーバが侵入し、角膜を食べてしまいます。感染すると激しい痛みを伴い、治療も非常に困難で、最悪の場合は失明に至るケースもあります。このリスクを最小限にするためにも、海から上がったらすぐにコンタクトを外し、しっかりと洗眼すること、そして絶対に同じレンズを再利用しないことが重要です。
紫外線による目の病気「翼状片」
サーファー特有の目の病気として知られるのが「翼状片(よくじょうへん)」です。別名「サーファーズ・アイ」とも呼ばれます。これは、白目の組織が異常増殖して黒目の方へ侵入してくる病気で、主な原因は強烈な紫外線と、風や砂埃による慢性的な刺激だと言われています。
海面は紫外線を反射するため、サーファーは陸上の数倍もの紫外線を浴びています。コンタクトレンズをしているからといって油断はできません。最近ではUVカット機能付きのコンタクトレンズも多く販売されていますので、少しでもリスクを減らすために、そういった機能性の高いレンズを選ぶことを強くおすすめします。
目の乾燥とレンズの張り付き
海の上では、強い日差しと潮風に常にさらされています。これにより、目は想像以上に乾燥します。ソフトレンズは水分を含むことで柔らかさを保っていますが、乾燥すると水分が失われ、レンズが収縮して目に張り付いてしまうことがあります。
レンズが目に張り付いた状態で無理に外そうとすると、角膜の上皮を剥がしてしまい、激痛を伴う「角膜びらん」になる恐れがあります。海から上がってレンズを外す際、もし張り付いている感覚があれば、無理に外そうとせず、まずは人工涙液などの目薬をさして十分に潤してから、ゆっくりと外すようにしてください。
コンタクト以外の視力矯正方法という選択肢

ここまでコンタクトレンズの使用を前提にお話ししてきましたが、実はサーフィンにおける視力矯正の方法はコンタクトだけではありません。それぞれの方法にメリットとデメリットがあります。自分のライフスタイルや目の状態に合わせて、最適な方法を検討してみるのも良いでしょう。
度付きサーフゴーグル・サングラス
一つ目の選択肢は、度が入ったサーフィン専用のゴーグルやサングラスを使用することです。これらは頭の後ろでバンドを固定できるため、激しい動きでも外れにくく作られています。
最大のメリットは、目に直接レンズを入れないため、感染症のリスクが低いことです。また、紫外線から物理的に目を守れるため、翼状片の予防にもなります。しかし、デメリットもあります。温度差でレンズが曇りやすかったり、水滴がついて視界が悪くなったりすることです。また、顔への圧迫感や、「見た目が仰々しい」と感じて敬遠するサーファーも少なくありません。ただ、目の健康を最優先にするなら非常に有効な選択肢です。
レーシック手術(視力回復手術)
多くのプロサーファーも行っているのが、レーシック手術です。角膜をレーザーで削って屈折力を調整し、裸眼視力を回復させる方法です。成功すれば、コンタクトの煩わしさから完全に解放され、裸眼でクリアに波を見ることができます。
メリットは圧倒的な快適さです。朝起きてすぐに海へ行けますし、海中でレンズが外れる心配もありません。デメリットは、手術費用が高額であることや、角膜を削る手術であるため、術後は一時的にドライアイになりやすいことなどが挙げられます。また、一度削った角膜は元に戻せないため、慎重な判断が必要です。
ICL(眼内コンタクトレンズ)
近年、レーシックに代わって注目されているのがICLです。これは角膜を削るのではなく、目の中に小さなレンズを埋め込んで視力を矯正する手術です。「永久コンタクトレンズ」とも呼ばれます。
レーシックに比べて角膜への負担が少なく、ドライアイのリスクも低いとされています。また、万が一見え方に不具合があった場合、レンズを取り出して元の状態に戻すことができるという「可逆性」が大きなメリットです。サーファーにとっても非常に魅力的な選択肢ですが、費用はレーシックよりもさらに高額になる傾向があります。
裸眼でのサーフィン(視力が悪いまま)
「コンタクトは怖いから」といって、視力が悪いまま裸眼でサーフィンをする方もいますが、これは安全面でおすすめできません。サーフィンは自然の変化を予測するスポーツです。「うねりがどこから来ているか」「他のサーファーがどの方向に進もうとしているか」が見えないことは、衝突事故や怪我に直結します。
特に0.3以下の視力の場合、自分の近くにいる人の表情すら分かりにくいため、混雑したポイントでは非常に危険です。自分だけでなく他人を傷つけるリスクもあるため、視力が悪い場合は、何らかの方法で必ず視力矯正を行ってから海に入るようにしましょう。
メモ: オルソケラトロジーという「寝ている間にハードレンズをつけて角膜の形状を変え、日中は裸眼で過ごす」方法もありますが、矯正効果の持続時間に個人差があるため、長時間のサーフィンには不向きな場合があります。
快適にサーフィンを楽しむための便利アイテム

最後に、コンタクトレンズ派のサーファーが持っておくと便利なアイテムをいくつか紹介します。これらを用意しておくだけで、目のトラブルを未然に防ぎ、より快適にサーフィンを楽しむことができます。
真水を入れたポリタンクやボトル
海から上がった直後、すぐに顔や目を洗えるように、真水を持参しましょう。シャワー設備のあるポイントなら良いですが、そうでない場所も多いです。大きなポリタンクでなくても、500mlのペットボトルや、100円ショップなどで売っている調理用のドレッシングボトルなどに水道水を入れておくだけで十分です。
特に「ウォッシュボン」と呼ばれるような、手動ポンプ式の洗浄グッズは便利です。海から上がったら、まずは顔全体の海水を洗い流し、目の周りの塩分を取り除いてからコンタクトを外すように習慣づけましょう。
防腐剤無添加の目薬(人工涙液)
海上がりは目が乾燥し、充血していることが多いです。コンタクトを外した後、あるいは外す前に点眼するための目薬を常備しておきましょう。選ぶ際のポイントは「防腐剤が入っていないこと」です。
「ソフトサンティア」のような、涙に近い成分で作られた人工涙液(1回使い切りタイプなど)がおすすめです。スースーする清涼感のある目薬は気持ち良いですが、傷ついた角膜には刺激が強すぎる場合があるため、まずは優しい成分のもので目を洗い流すイメージでケアしましょう。
UVカット機能付きのサングラス
海に入っている間だけでなく、海への行き帰りや休憩中も目のケアは大切です。陸上に上がった後も、砂浜の照り返しなどで目は強い紫外線を浴び続けています。
サーフィンが終わった後は、できるだけ早くサングラスをかけて目を休ませてあげましょう。偏光レンズのものであれば、海面のギラつきを抑えてくれるので、波チェックの際にも波の形がよく見えて一石二鳥です。目の疲れを翌日に残さないためにも、アフターサーフのケアアイテムとして必須です。
サーフィンとコンタクトの付き合い方まとめ
サーフィンは視力が悪くても、コンタクトレンズを上手に活用することで十分に楽しむことができます。最後に、今回ご紹介した重要なポイントを振り返ってみましょう。
まず、レンズ選びは「ソフトレンズのワンデータイプ」が鉄則です。外れにくく、衛生的で、紛失時の精神的ダメージも少ないため、これ以外の選択肢はないと言っても過言ではありません。そして、海の中では「落ちそうになったら目を閉じる」「絶対に手で目を擦らない」という基本動作を徹底することで、紛失トラブルの大半は防げます。
また、海という環境は細菌感染や紫外線ダメージのリスクがあることを忘れず、予備のレンズや洗浄用の真水、目薬などの準備を怠らないようにしてください。もし予算やライフスタイルが許すなら、レーシックやICLといった手術も長期的な視点では素晴らしい投資になります。
しっかりとした準備と知識があれば、コンタクトレンズはあなたのサーフィンライフを支える強力な味方になります。クリアな視界で、最高の波を見逃さないようにしましょう!




