サーフィンを始めようとサーフショップに行ったり、ネットで情報を探したりしていると、必ずと言っていいほど目にするのが「PU(ピーユー)」という言葉です。「EPS」という言葉と並んで表記されていることも多く、一体どちらを選べば良いのか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
サーフボードは、見た目が同じように見えても、使われている素材によって乗り心地や扱いやすさが大きく異なります。特に「PU」は、サーフィンの歴史の中で長年愛され続けてきた、最もスタンダードで信頼性の高い素材です。
この記事では、サーフボードの基本とも言える「PU」について、その特徴やメリット・デメリット、そしてどんな人に合っているのかを、専門用語も交えながらやさしく解説していきます。これからマイボードを手に入れたいと考えている方は、ぜひボード選びの参考にしてみてください。
「PU」って何?サーフボードの基本素材を知ろう

まずは、そもそも「PU」とはどういうものなのか、その正体と基本的な構造について見ていきましょう。サーフボードの素材を知ることは、サーフィンの上達にもつながる大切な第一歩です。
PUは「ポリウレタン」の略称です
「PU」とは、ポリウレタン(Polyurethane)の頭文字を取った略称です。サーフボードの世界では、最も古くから使われている伝統的な素材であり、現在でもプロ・アマ問わず多くのサーファーが愛用している「王道」とも言える存在です。
サーフボードのカタログやスペック表に「PU」と書かれていたら、それは「ポリウレタン製のフォーム(発泡材)を使っていますよ」という意味になります。長い歴史の中で改良が重ねられ、サーフボードに最適な硬さや密度に調整された素材が使われています。
いわゆる「普通のサーフボード」と言えば、このPU素材のものを指すことがほとんどです。まずは「PU=スタンダードな素材」と覚えておけば間違いありません。
サーフボードの構造を簡単に解説
PUサーフボードがどのように作られているかを知ると、その特徴がより深く理解できます。サーフボードは、大きく分けて「芯材(フォーム)」と「外側の殻(樹脂)」の2つの要素で構成されています。
PUボードの場合、芯材には「PUフォーム」と呼ばれる白くて軽い発泡ポリウレタンが使われます。そして、そのフォーム全体をガラス繊維の布(ガラスクロス)で包み込み、「ポリエステル樹脂(レジン)」を使って固めることで完成します。
この「ポリウレタンフォーム」と「ポリエステル樹脂」の組み合わせが、PUボードの独特な乗り味を生み出しているのです。シェイパー(ボードを削る職人)がフォームを削り出し、ラミネーター(樹脂を塗る職人)が仕上げるという、職人技が光る製法で作られることが多いのも特徴です。
なぜ長年愛され続けているのか
新しい素材が次々と登場する中でも、なぜPUボードは廃れることなく主役の座を守り続けているのでしょうか。その最大の理由は、サーファーが求める「感覚」に最も素直に応えてくれる素材だからです。
海の上では、波の形やパワーが刻一刻と変化します。PUボードはその変化に対して敏感すぎず、かといって鈍感でもない、絶妙なバランスを持っています。波の力を受け止めたときに適度にしなり、その反発力を使ってターンを加速させることができるのです。
また、世界中のトッププロたちがコンテストで使用するボードの多くも、依然としてPU素材が主流です。これは、極限の状況下でも信頼できるコントロール性能を持っていることの証明でもあります。初心者から上級者まで、あらゆるレベルのサーファーに寄り添ってくれる懐の深さが、PUの最大の魅力と言えるでしょう。
初心者にもおすすめ!PUサーフボードの3つのメリット

サーフィンを始めたばかりの方が最初の1本を選ぶ際、PUボードは非常におすすめの選択肢です。なぜPUが選ばれるのか、具体的なメリットを3つのポイントに絞って詳しく解説します。
波に馴染む「しなり」と「安定感」
PUボードの最大の特徴でありメリットと言えるのが、その独特な「乗り味」です。水の中に適度に沈み込むような感覚があり、これをサーファー用語で「ドライブ感が強い」や「波に張り付く」と表現します。
この適度な重さと材質の特性により、ボードが波の表面で跳ねすぎず、しっかりと水面を捉えてくれます。特に初心者のうちは、ボードが不安定だと立つことさえ難しいものですが、PUボードならそのどっしりとした安定感がテイクオフ(波に乗って立つ動作)をサポートしてくれます。
また、ターンをする際にも、ボード全体がしなってから元に戻る反発力が、自然な加速を生んでくれます。自分で無理にボードを動かそうとしなくても、ボードが波に合わせてくれるような感覚を味わえるため、正しいフォームを身につけるのにも最適です。
風の影響を受けにくい適度な重さ
サーフィンは自然相手のスポーツなので、常に良い波とは限りません。特に海面が風でざわついているとき(オンショアやチョッピーと呼ばれる状態)は、軽いボードだと風に煽られてしまい、コントロールが難しくなります。
PUボードには、素材由来の「適度な重さ」があります。この重さが、悪条件下では逆に大きなメリットになります。風が強く吹いていても、ボード自体の重みで海面を抑え込むように進んでくれるため、ふらつきにくく安定したライディングが可能になります。
「重い」と聞くとマイナスイメージを持つかもしれませんが、サーフボードにおいては「重さ=安定」という図式が成り立ちます。特にオフショア(岸から沖へ吹く風)が強い日など、軽いボードでは波を降りていけないような状況でも、PUボードなら自重でスムーズに滑り降りることができるのです。
お財布に優しく、修理もしやすい
これから道具を揃える方にとって、コストパフォーマンスは無視できない要素です。一般的に、PUサーフボードは最新素材のEPSボードなどに比べて、比較的安価に購入できる傾向があります。
製造工程が確立されており、材料費も安定しているため、新品でも手が出しやすい価格帯のモデルが多く揃っています。また、中古市場でも流通量が非常に多いため、予算に合わせて質の良いボードを見つけやすいという利点もあります。
さらに、万が一ボードを壊してしまった場合の「リペア(修理)」についてもメリットがあります。PUボードの修理方法は広く普及しているため、ほとんどのサーフショップで修理を受け付けてもらえますし、修理費用も比較的安く済みます。自分で直すためのリペアキットも安価で手に入るため、長く付き合っていく上で維持費を抑えられるのは嬉しいポイントです。
プロも認める多彩なデザインと調整の幅
PU素材は加工がしやすいため、シェイパー(作り手)にとっても扱いやすい素材です。そのため、サーファーの体格や好みに合わせて、ミリ単位での微調整が可能です。
例えば、テールの形状を少し変えたり、レール(ボードの側面)の厚みを調整したりといった細かいオーダーに応えやすいのがPUの特徴です。これにより、世界に一本だけの自分専用のマジックボードを作ることも夢ではありません。
また、色のノリも良く、美しいエアブラシデザインやティントカラー(樹脂に色を混ぜて着色する技法)を施すことができます。機能性だけでなく、見た目の美しさやオリジナリティを追求したいサーファーにとっても、PUボードは魅力的なキャンバスとなるのです。
購入前に知っておきたいPUのデメリットと注意点

メリットの多いPUボードですが、もちろん完璧な素材というわけではありません。購入してから後悔しないように、デメリットや取り扱いの注意点についてもしっかりと理解しておきましょう。
EPSに比べると少し重い
先ほどメリットとして「適度な重さ」を挙げましたが、これは裏を返せば「持ち運びが大変」というデメリットにもなり得ます。特にロングボードや大きめのファンボードの場合、PU素材のものは女性や小柄な方にとって少し重く感じるかもしれません。
海の中では浮力があるためそれほど重さを感じませんが、駐車場からビーチまでの移動や、家での収納時に持ち上げる際などには、腕への負担を感じることがあるでしょう。ただし、ショートボードであればそこまで極端な差ではないため、過度に心配する必要はありません。
最近では軽量化されたPUフォーム(ライトウェイトなど)も登場していますが、基本的には「EPSよりは重いもの」と認識しておくと良いでしょう。
衝撃に弱く、凹みやすい
PUサーフボードの最も気をつけるべき点は、衝撃に対するデリケートさです。PUフォームは柔らかい素材であるため、強い圧力がかかると凹んでしまいます。これを「フットマーク」と呼びます。
サーフィンをしていると、立ったときのかかとの位置などが徐々に凹んでいきます。これはある意味、一生懸命練習した勲章のようなものですが、いつまでも新品のような平らな状態を保ちたい方にとっては気になるポイントかもしれません。
また、陸上で固い地面に落としたり、運搬中にどこかにぶつけたりすると、ガラスクロスにヒビが入ってしまうことがあります。いわゆる「クラッシュ」と呼ばれる状態です。扱いには十分な注意が必要で、ハードケースやニットケースに入れて大切に保護することが推奨されます。
紫外線による「黄ばみ」などの経年変化
PUボードに使われているポリエステル樹脂やウレタンフォームは、紫外線に対してあまり強くありません。長く使い続けていると、真っ白だったボードが徐々にクリーム色、そして黄色っぽく変色していきます。
これを「日焼け」や「黄ばみ」と呼びます。性能自体にいきなり大きな影響が出るわけではありませんが、見た目の白さは失われていきます。どんなに大切に使っていても、経年劣化による変色は完全には防げません。
ただし、この黄ばみも含めて「味」として楽しむサーファーもいます。ヴィンテージのボードが飴色に変色しているのは、それはそれで渋くてかっこいいものです。どうしても白さを保ちたい場合は、保管場所に気を配る必要があります。
メモ:吸水性について
PUフォームは水を吸いやすい性質を持っています。もしクラッシュして傷からフォームが見えてしまった場合は、すぐに海から上がりましょう。そのまま使い続けると水を吸ってボードが重くなり、剥離(はくり)の原因になります。
永遠のテーマ?「PU」と「EPS」の違いを比較

サーフボード選びで多くの人が直面するのが、「PU」にするか、それとも「EPS」にするかという悩みです。ここでは、この2つの主要素材を比較し、それぞれの特徴を明確にします。
乗り味の違い:しっとり vs 軽快
乗り心地を一言で表すなら、PUは「しっとり」、EPSは「軽快」です。PUは水の中にレールが入っていく感覚があり、波との一体感を得やすいのが特徴です。雪山で例えるなら、パウダースノーを滑るような滑らかさがあります。
一方、EPS(発泡スチロール素材+エポキシ樹脂)は、非常に軽く、浮力が強いのが特徴です。水の上にポカーンと浮いているような感覚があり、パドリングが軽く、漕ぎ出しのスピードが速いです。反発力が強いため、パンッとした弾けるようなターンが可能です。
どちらが良い悪いではなく、好みの問題です。どっしりとしたカービングターンを描きたいならPU、小刻みに動かしてアクションを決めたいならEPS、といった選び方が一般的です。
得意なコンディション:オールラウンド vs 小波
波のコンディションによっても、得意不得意が分かれます。PUは基本的にどんな波でも対応できる「オールラウンダー」です。波のサイズが上がってもバタつかず、面が荒れていても安定して走ります。
対してEPSは、「小波(こわみ)」や「パワーのない波」で真価を発揮します。ボード自体が軽いため、パワーのない波でも素早く走り出し、失速しにくいという強みがあります。日本の海は比較的パワーのない小波が多いと言われているため、EPSを選ぶサーファーが増えているのも事実です。
しかし、風が強くて面がガタガタしている日は、EPSだとボードが弾かれてしまい、うまく乗れないことがあります。そんな日でもPUなら、その重さで波のコブを潰しながら進んでいける安心感があります。
価格とランニングコストの比較
最後にコスト面での比較です。先述の通り、購入価格はPUの方が安価に設定されていることが多いです。ブランドやモデルにもよりますが、EPSボードは特殊な材料と手間がかかるため、PUよりも数万円ほど高くなるのが一般的です。
修理費用(リペア代)についても違いがあります。PUは修理が簡単で材料も安いため、ショップでの修理代も安く済みます。一方、EPSはエポキシ樹脂という硬化に時間がかかる樹脂を使用するため、修理期間が長く、費用も割高になるケースが多いです。
また、EPSは熱に非常に弱く、真夏の車内に放置すると中の空気が膨張してボードが剥離してしまうリスクがPUよりも高いです。管理の手間やリスクも含めて考えると、初心者にとってはPUの方が扱いやすいと言えるでしょう。
| 比較項目 | PU(ポリウレタン) | EPS(エポキシ) |
|---|---|---|
| 重さ | 適度な重さがある | 非常に軽い |
| 乗り味 | しなやかで安定感がある | 硬めで反発力が強い |
| 価格 | 比較的安い | 高価な傾向にある |
| 弱点 | 衝撃で凹みやすい | 風や熱に弱い・黄ばむ |
大切なボードを長く使うためのメンテナンス方法

相棒となるPUサーフボードを手に入れたら、できるだけ長く良い状態で使い続けたいものです。ここでは、PUボードの寿命を延ばすための、日々のメンテナンス方法をご紹介します。
海上がりは必ず真水で洗い流す
サーフィンが終わった後、そのままボードをケースにしまっていませんか?海水に含まれる塩分は、結晶化するとボードの表面を傷つけたり、樹脂を劣化させる原因になります。海から上がったら、必ず真水で全身を洗い流しましょう。
シャワーがない場所では、ペットボトルに水を入れて持っていくだけでも十分です。特に、フィンボックス(フィンを差し込む部分)やリーシュカップ(紐を結ぶ部分)の周りは塩が溜まりやすいので、念入りに洗ってください。
洗い終わったら、タオルで水分をしっかりと拭き取ります。濡れたままケースに入れて長時間放置すると、湿気でカビが生えたり、樹脂が劣化したりする原因になります。
保管場所は「日陰」が鉄則
PUサーフボードにとって、紫外線は大敵です。直射日光に長時間当て続けると、真っ白なボードがあっという間に黄ばんでしまい、さらにフォームの劣化も早まります。
保管する際は、直射日光の当たらない風通しの良い屋内がベストです。ベランダや庭に置くのは避けましょう。また、車の中に積みっぱなしにするのも厳禁です。夏場の車内は想像以上の高温になり、ボードが熱で変形したり、剥離したりする恐れがあります。
部屋に置く際も、窓際など日が差し込む場所は避けるか、遮光性の高いボードケースに入れて保管するようにしましょう。
小さな傷も早めのリペアが寿命を延ばす
サーフィン中に「コツン」と何かにぶつけてしまったら、すぐに傷を確認してください。爪が引っかかるような傷であれば、そこから水が浸入する可能性があります。
PUフォームは水を吸いやすいため、小さな傷でも放置して海に入り続けると、内部が腐食したり、重くなって性能が落ちたりします。「これくらい大丈夫だろう」と思わずに、すぐにリペアテープ(応急処置用の透明テープ)を貼って水の浸入を防ぎましょう。
そして、時間があるときにプロショップで修理してもらうか、市販のソーラーレジン(紫外線で固まる樹脂)を使って自分で修理します。早めの処置が、ボードの寿命を数年単位で延ばすことにつながります。
セルフリペアの注意点
自分で修理する場合、必ず「ポリエステル樹脂(PU用)」または「ソーラーレジン」を使用してください。EPS用の樹脂を使っても問題はありませんが、逆にPUボード用の樹脂をEPSボードに使ってしまうと、中のフォームが溶けてしまいます。将来的にEPSも持つ可能性があるなら、両方に使える「エポキシ樹脂」のリペアキットを持っておくのも一つの手です。
まとめ:PUサーフボードはこんな人におすすめ
ここまで、PUサーフボードの特徴やメリット・デメリットについて詳しく見てきました。最後に、どんな人にPUボードがおすすめなのかを振り返ってみましょう。
PUサーフボードは、その歴史が証明するように、サーフィンの基本が詰まった素晴らしい素材です。「しなり」が生み出す独特の加速感や、波面が荒れていてもブレない安定感は、サーフィンの基礎を学ぶ上で非常に大きな助けとなります。
具体的には、以下のような方に自信を持っておすすめできます。
・サーフィン初心者で、最初の1本を何にするか迷っている人
・基本に忠実な、レールを使ったターンを練習したい人
・風が強い日やサイズがある波でも安定して滑りたい人
・なるべく初期費用や修理代を抑えたい人
最近はEPSボードの人気も高まっていますが、決して「PU=古い」「EPS=新しいから良い」というわけではありません。それぞれの素材に良さがあり、適したコンディションがあります。まずはクセのないPUボードで波乗りの感覚を掴み、自分のスタイルが見えてきたら、次のステップとしてEPSなどを試してみるのも良いでしょう。
あなたにぴったりのPUサーフボードが見つかり、海での時間がより一層楽しくなることを願っています。




