夏の海といえばサーフィン。輝く太陽の下、波に乗る爽快感は格別です。「夏なんだから、水着だけで大丈夫でしょう?」と思っている方も多いのではないでしょうか。実は、その考え方には少し注意が必要です。真夏の海であっても、サーフィンを快適かつ安全に楽しむためには、適切な服装選びが欠かせません。
夏の海は、強烈な紫外線、クラゲの発生、そして意外と冷たい海水温など、陸上とは異なる環境要因がたくさんあります。初心者が服装選びを間違えると、怪我や体調不良でせっかくの楽しい時間が台無しになってしまうこともあります。
この記事では、夏のサーフィンに最適な服装を、基本的な考え方から具体的なアイテム選び、男女別のコーディネートまで徹底的に解説します。これからサーフィンを始める方も、もっと快適に波に乗りたい方も、ぜひ参考にしてください。
サーフィンを夏に楽しむための基本的な服装の考え方

夏のサーフィンにおける服装選びは、単に「暑いか寒いか」だけでは決まりません。陸上の気温は30度を超えていても、海の中の環境はまったく異なるからです。まずは、なぜ夏のサーフィンでも装備が必要なのか、その基本的な理由と目的を理解しましょう。
「水着だけ」のリスクを知っておこう
開放的な夏のビーチでは、水着一枚で海に入りたくなる気持ちもわかります。しかし、サーフィンをする場合、水着だけ(上半身裸やビキニのみ)のスタイルは、初心者にはあまりおすすめできません。その最大の理由は「怪我」と「擦れ」のリスクです。
サーフィンでは、パドリング(手で漕ぐ動作)をする際、ボードの上に腹ばいになります。このとき、ワックスを塗ったボードと肌が直接こすれ続けると、胸やお腹の皮膚が赤く腫れ上がり、ヒリヒリと痛む「サーファーズイヤー」ならぬ「ワックス擦れ」を起こしてしまいます。これが非常に痛く、翌日以降の生活に支障が出るほどです。
また、海中には目に見えない微生物や、ボードのフィン、海底の岩など、肌を傷つける要因がたくさんあります。薄手でも一枚ウェアを着ているだけで、こうした外部の刺激から肌を守ることができるのです。
気温と水温の「ズレ」を理解する
「今日は気温が35度もある猛暑日だから、海の中も温かいはず」と考えるのは早計です。海の水温は、空気の温度よりも1〜2ヶ月遅れて変化すると言われています。つまり、気温が急上昇する初夏(6月〜7月上旬)の海水温は、まだ春のように冷たいことが多いのです。
逆に、秋口の方が水温が高いこともあります。この「気温と水温のギャップ」を理解していないと、海に入ってから「寒くて震えが止まらない」という状況に陥ります。長時間水に浸かっていると体温は急速に奪われ、体力を消耗してしまいます。夏の服装選びでは、その日の気温だけでなく、必ず「水温」をチェックする習慣をつけましょう。
メモ:
一般的に、人間が「水着だけで寒くない」と感じる水温は25度以上と言われています。日本の多くの地域では、真夏でも長時間入っていると肌寒く感じることが多いため、保温性のあるウェアの準備が安心です。
疲労軽減のための紫外線対策
夏の海における紫外線は、街中とは比較にならないほど強力です。空から降り注ぐ直射日光に加え、海面からの照り返し(反射)があるため、サーファーは全方向から紫外線を浴びることになります。
日焼けは単に肌が黒くなるだけでなく、軽度の火傷状態を引き起こし、体に大きなストレスを与えます。過度な日焼けは激しい疲労感や発熱の原因となり、サーフィン後の回復を遅らせてしまいます。翌日に疲れを残さず、長くサーフィンを楽しむためにも、物理的に肌を覆う服装は「最強の日焼け止め」となるのです。
お盆過ぎのクラゲ対策と服装
夏のサーフィンで避けて通れないのが「クラゲ」の存在です。特にお盆(8月中旬)を過ぎると、日本各地の海でアンドンクラゲやカツオノエボシなどの毒を持つクラゲが増加します。
刺されると激痛が走り、ミミズ腫れのような跡が残るだけでなく、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性もあり非常に危険です。クラゲの触手から身を守るためには、肌の露出を極力減らすことが最も有効な対策です。この時期は、暑さ対策よりも「肌を出さないこと」を優先した服装選びが求められます。
夏のサーフィンで活躍するウェットスーツの種類と選び方

一口に「夏のサーフィンの服装」と言っても、実はたくさんの種類があります。素材の厚さや袖の長さなど、それぞれの特徴を知ることで、自分にぴったりのアイテムが見つかります。ここでは、夏によく使われる代表的なウェアを紹介します。
ラッシュガードとサーフパンツ
もっとも手軽で安価なスタイルが、水着(サーフパンツやビキニ)の上に「ラッシュガード」を羽織る組み合わせです。ラッシュガードはポリエステルなどの化学繊維で作られており、速乾性と伸縮性に優れています。
主な目的は「日焼け防止」と「擦れ防止」です。保温性はほとんどないため、水温が高い真夏(8月〜9月上旬)や、南国のリゾート地でのサーフィンに適しています。Tシャツタイプとジップアップタイプがありますが、サーフィン中は波に巻かれてめくれ上がりやすいため、体にフィットするサイズを選ぶか、裾にループが付いていてトランクスと連結できるタイプがおすすめです。
タッパー(ウェットスーツジャケット)
「タッパー」とは、上半身のみのウェットスーツ(ジャケット)のことです。厚さは1.5mm〜2mm程度が一般的で、長袖と半袖のタイプがあります。ラッシュガードとの大きな違いは、ゴム素材(ネオプレーン)を使用しているため、保温性とクッション性があることです。
風が吹いて肌寒い時や、早朝・夕方のサーフィンで大活躍します。また、生地に厚みがあるため、パドリング時の肋骨への負担を和らげてくれるのも初心者には嬉しいポイントです。サーフパンツと合わせてスタイリッシュに着こなせるため、夏のマストアイテムと言えるでしょう。
タッパーのメリット
・着脱が簡単(フロントジップが多い)
・暑くなったらすぐに脱げる
・上半身の保温と保護ができる
スプリング(半袖・半ズボン)
「スプリング」は、半袖・半ズボンのつなぎタイプのウェットスーツです。胴体部分がしっかりと保温されるため、体が冷えにくく、真夏を中心に前後の季節まで長く使えます。
ワンピース型でずれにくいため、激しい動きをしても安心です。特に初心者のうちは、波に揉まれてウェアが脱げそうになる心配をしなくて済むのが大きなメリットです。日本の夏サーフィンの「制服」とも言えるほど普及している、非常にバランスの良いアイテムです。
ロングジョン(袖なし・長ズボン)
「ロングジョン」は、タンクトップと長ズボンが一体になったような形のウェットスーツです。肩周りや腕が完全に露出しているため、パドリング(腕を回す動作)が非常に楽で、開放感があります。
下半身は足首まで覆われているため、水温が少し低い時や、足の冷えが気になる方に適しています。また、クラシカルなスタイルとして人気があり、見た目がおしゃれなのも特徴です。ただし、肩や腕は日焼けしやすいため、日焼け止めをしっかり塗るか、上にラッシュガードやタッパーを重ね着して調整するスタイルも一般的です。
シーガル(半袖・長ズボン)
「シーガル」は、半袖で長ズボンタイプのウェットスーツです。スプリングよりも保温性が高く、春の終わりから秋の初めまで、かなり長い期間活躍します。
特に、水温が低い千葉以北のエリアや、曇りの日、風が強い日には重宝します。「夏だけどちょっと寒いかも?」と不安な日は、スプリングではなくシーガルを選ぶと快適に過ごせます。膝下の怪我防止にもなるため、岩場が多いポイントなどでも安心してサーフィンができます。
男女別・夏のおすすめサーフィンコーディネート

機能性を重視しつつも、やっぱり海ではおしゃれも楽しみたいものです。ここでは男性・女性それぞれの視点で、機能的かつスタイリッシュな夏のコーディネート例を紹介します。
男性向け:機能性と涼しさを両立するスタイル
男性の夏サーフィンで最も人気があるのは、「ボードショーツ(サーフパンツ)+長袖タッパー」の組み合わせです。黒のタッパーに、柄物のボードショーツを合わせることで、シンプルながらも個性を出すことができます。
ポイントは、ボードショーツの丈とサイズ感です。最近は膝上丈の少し短めなスタイルが主流で、動きやすさとトレンド感を両立できます。また、インナーパンツを必ず着用しましょう。これは股ズレ防止だけでなく、激しいワイプアウト(転倒)の際にボードショーツがずり落ちるのを防ぐ役割もあります。
真夏の炎天下では、あえて「サーフハット(帽子)」を取り入れるのもおすすめです。頭部への直射日光を防ぐことで熱中症リスクを下げ、視界も確保しやすくなります。
女性向け:日焼け対策と「ズレない」安心感を重視
女性サーファーにとって最大の悩みは「日焼け」と「水着のズレ」です。ビキニでサーフィンをする姿は素敵ですが、波の力は想像以上に強く、普通のファッション水着では簡単に脱げてしまうことがあります。必ず「サーフィン用」として販売されている、固定力の強い水着を選びましょう。
おすすめのコーディネートは、「サーフレギンス+長袖ラッシュガード(またはタッパー)」のスタイルです。足首まであるレギンスを履くことで、絶対に焼きたくない足の日焼けを完全にガードできます。さらに、クラゲやチンクイ(甲殻類の幼生)による虫刺されも防げるため、肌トラブルのストレスが激減します。
最近では、ワンピースタイプの薄手(1mm程度)のスイムカット・ウェットスーツも人気です。これは水着のような可愛さとウェットスーツの機能性を兼ね備えており、お腹や腰回りの冷えも防いでくれます。
男女共通:サーフハットとサングラスの活用
強烈な日差しから目を守ることも重要です。サーフィン専用の「サーフハット」や「サーフキャップ」は、あご紐がついているため波に巻かれても紛失しにくくなっています。
また、目が充血したり、紫外線によるダメージ(翼状片など)を防ぐために、サーフィン用のサングラスを使用する人も増えています。これらは必須ではありませんが、長時間海に入り続ける夏のシーズンには、身体を守るための賢いアイテムと言えるでしょう。
地域や時期による服装の違いをチェック

「夏」と一言で言っても、北海道と沖縄では状況が全く違いますし、6月と8月でも大きく異なります。ここでは、地域や時期に応じた服装の微調整について解説します。
エリアによる水温差:千葉北以北と湘南・西日本
日本列島は南北に長いため、サーフポイントによって水温に大きな差があります。例えば、サーフィンのメッカである千葉県の「千葉北」エリアや茨城、東北、北海道は、真夏でも水温が低いことで有名です。これらの地域では、真夏でもスプリングやシーガル、場合によっては3mmフルスーツが必要な日もあります。「夏だから海パン一丁で!」と意気込んで行くと、寒くて1時間も入っていられないことになりかねません。
一方、湘南エリアや静岡、四国、九州、沖縄などは水温が高く、真夏はトランクスとタッパー、あるいはラッシュガードだけで快適に過ごせる日が多いです。遠征して初めての海に行く際は、必ず現地のサーフショップのブログや波情報サイトで「今日の推奨ウェア」を確認してください。
時間帯による変化:朝夕は冷えることも
日中は灼熱のビーチでも、早朝(サンライズ)や夕方(サンセット)の時間帯は気温が下がります。特に風が吹くと、濡れた体から気化熱で体温が奪われ、急激に寒さを感じることがあります。
「朝一番から入りたい」「夕方の空いている時間を狙いたい」という場合は、日中の服装よりも一枚多く着るか、厚手のウェットスーツを用意するのがベターです。車に予備のタッパーやジャケットを積んでおくと、急な温度変化にも対応できて安心です。
台風シーズンの注意点
夏から秋にかけては台風シーズンです。台風からのうねりが入ると、海底の冷たい水がかき混ぜられて表面に上がってくることがあり、突然水温が下がることがあります(底冷え)。
また、波のパワーが格段に強くなるため、軽装だと波に巻かれた時のダメージが大きくなります。サイズのある波に挑む際は、怪我防止の観点からも、肌の露出が少ないシーガルやフルスーツを着用することをおすすめします。
忘れがちな「陸上での服装」と便利グッズ

サーフィンの準備というと、海の中で着るものばかりに気が向きがちですが、実は「海から上がった後」の服装も同じくらい重要です。着替えや移動をスムーズにするためのアイテムを紹介します。
サーフポンチョ:着替えの救世主
夏のサーフィンで絶対に持っておきたいのが「お着替えポンチョ」です。これはタオル素材でできた、かぶり式の大きなパーカーのようなものです。
サーフポイントの駐車場には、個室の更衣室やシャワーがない場所もたくさんあります。そんな時、ポンチョをすっぽり被れば、外から見られることなく、その中でウェットスーツを脱ぎ、服に着替えることができます。バスタオルを腰に巻いて着替えるよりも圧倒的に楽で、女性にとっても必須級のアイテムです。
素材は、吸水性の高いコットン製や、速乾性のあるマイクロファイバー製などがあります。夏は薄手のマイクロファイバー製がかさばらず、乾きも早いのでおすすめです。
着替えやすくてリラックスできる服装
海から上がった後の体は、心地よい疲労感と共に、日焼けで少し敏感になっています。また、肌に海水や砂が残っていることもあります。そのため、帰りの服は「締め付けがなく、肌触りの良いもの」を選びましょう。
タイトなスキニーパンツや、着脱が面倒なボタンの多いシャツは、湿った肌にはりついて着替えのストレスになります。ゆったりとしたTシャツ、ショートパンツ、ワンピース、スウェットパンツなどが最適です。素材は通気性の良いコットンやリネンが快適です。
サンダルと足元のケア
夏の砂浜やアスファルトは、火傷するほど高温になります。海に入る直前まで履いていける「ビーチサンダル」は必須です。鼻緒があるタイプが一般的ですが、靴下を履いたままでも履ける「シャワーサンダル(スライドサンダル)」も便利です。
また、岩場や珊瑚があるポイントでサーフィンをする場合は、海の中で履く「リーフブーツ」も必要になります。怪我をしてからでは遅いので、ポイントの海底が砂なのか岩なのか、事前にリサーチしておきましょう。
まとめ
サーフィンの夏の服装について、基本的な考え方から具体的なアイテム選びまで解説してきました。最後に、大切なポイントを振り返りましょう。
夏のサーフィンでは、「暑いから水着でOK」と安易に判断せず、「怪我」「日焼け」「冷え」「クラゲ」のリスクを考慮して服装を選ぶことが重要です。初心者のうちは、肌の露出を抑えたスタイルの方が、安心して練習に集中できます。
具体的には、以下の3つのポイントを意識してください。
1. 気温だけでなく水温をチェックする。
2. ラッシュガードやタッパーを活用して肌を守る。
3. 地域や時期(特にお盆過ぎのクラゲ)に合わせて微調整する。
適切な服装を準備すれば、真夏の強烈な日差しも、少し冷たい水も、すべてが心地よいスパイスに変わります。万全の準備を整えて、最高の夏の波を楽しんでください。




