真冬のサーフィン、海から上がった瞬間の体の震えは、何度経験しても辛いものがあります。冷え切った手足で着替えるあの時間は、サーファーにとって最大の試練かもしれません。そんな時、キャンピングカーから温かいお湯が出て、その場でシャワーを浴びられたらどれほど幸せでしょうか。
「キャンピングカーの温水システムなんて、高価なキャンピングカーにしかついていない装備だ」と諦めていませんか?実は、ホームセンターで手に入る部品や、少しの工夫で、誰でも温水シャワーを自作することが可能です。自分のスタイルに合った温水システムを構築して、一年中快適なサーフィンライフを手に入れましょう。
キャンピングカーの温水システムを自作するメリットと基本

キャンピングカーに温水システムを導入することは、単に体を洗うためだけではありません。特にサーファーにとっては、冬場の海での活動時間を延ばし、怪我のリスクを減らすためにも重要な要素となります。まずは、なぜ自作がおすすめなのか、そのメリットと基本的な考え方について解説します。
サーフィン後の快適さが劇的に変わる理由
サーフィンにおいて、体温の維持はパフォーマンスに直結します。海の中にいる間はウェットスーツが守ってくれますが、上がった直後の外気による冷却は急激です。ここで温水シャワーがあれば、体温を一気に回復させることができます。指先の感覚が戻り、着替えもスムーズに行えるようになるため、精神的なストレスも大幅に軽減されるでしょう。
また、温水があれば、海水でベタついた体や髪をさっぱりと洗い流すことができます。冷水では落ちにくい皮脂汚れや塩分も、お湯なら簡単に落とせます。これにより、車内を清潔に保つことができ、帰りの運転もリラックスして行えるようになります。まさに、温水はサーファーにとって「贅沢品」ではなく「必需品」と言えるのです。
既製品導入と比べてコストを大幅に抑えられる
キャンピングカービルダーに温水ボイラーシステムの設置を依頼すると、数十万円単位の費用がかかることが一般的です。専用のボイラー本体、配管工事、ガスや電気の供給システムなど、大掛かりな工事が必要になるためです。しかし、自作であれば、数千円から数万円程度でシステムを構築することが可能です。
例えば、ポリタンクとお湯を沸かすヒーター、そして簡易的な電動ポンプを組み合わせるだけのシンプルな構成なら、驚くほど安価に済ませられます。浮いた予算を新しいサーフボードやウェットスーツ、あるいは遠征費に回すことができるのも、自作ならではの大きなメリットです。コストパフォーマンスを重視するなら、間違いなくDIYがおすすめです。
自分の車中泊スタイルに合わせた設計が可能
市販のキャンピングカーのシャワールームは、居住スペースを大きく圧迫することがあります。「シャワーは外で浴びるから、車内のシャワールームは不要」というサーファーも多いはずです。自作であれば、リアゲートを開けて使うスタイルや、簡易テントと組み合わせるスタイルなど、自分たちの動線に合わせた設計が自由自在です。
タンクの容量も、ソロでの使用なら10リットル、仲間と使うなら20リットル以上など、必要に応じて選ぶことができます。また、使わない季節にはシステムごと降ろして、車内を広く使うといった柔軟な運用も可能です。自分の遊び方に完全にフィットしたシステムを作れることこそ、DIYの醍醐味と言えるでしょう。
初心者でも簡単!ポリタンクと投げ込みヒーターを使う方法

最も手軽で、多くのサーファーが実践しているのがこの方法です。特別な配管工事が不要で、既存のポータブル電源などを活用できるため、DIY初心者でも安心して取り組めます。ここでは、具体的な機材選びと構築手順について詳しく見ていきましょう。
必要な機材とシステム全体の仕組み
このシステムの基本構成は非常にシンプルです。水を貯める「ポリタンク」、その水を温める「投げ込みヒーター(サーモスタット付き)」、そしてお湯を浴びるための「電動シャワーポンプ」の3点があれば成立します。仕組みとしては、ポリタンクに入れた水にヒーターを投入し、電気の力でお湯を沸かし、それをポンプで吸い上げてシャワーとして使うというものです。
電源には、AC100Vが使えるポータブル電源や、オートキャンプ場の電源サイトを利用します。最近は大容量のポータブル電源が普及しているため、エンジンの熱に頼らずとも、安全かつクリーンにお湯を作ることができるようになりました。複雑な工具もほとんど必要なく、誰でもすぐに始められるのが最大の特徴です。
投げ込みヒーターの選び方と使用上の注意点
ヒーター選びは非常に重要です。必ず「温度調節機能(サーモスタット)」が付いているものを選びましょう。これがないと、お湯が沸騰しすぎてポリタンクが変形したり、火傷をする危険性があります。一般的には、30度から100度まで温度設定ができるタイプが販売されており、40度〜42度前後に設定しておけば、適温のシャワーをいつでも浴びることができます。
特に注意が必要なのは「空焚き」です。ヒーター部分が水から出た状態で通電すると、数秒で故障したり、火災の原因になったりします。水量を十分に確保し、ヒーターが完全に水没していることを確認してからスイッチを入れる癖をつけましょう。また、使用後はヒーターが高温になっているため、冷めるまで安全な場所に置く配慮も必要です。
電動シャワーポンプとの組み合わせ方
お湯が沸いたら、次にお湯を浴びるためのポンプが必要です。USB充電式や、車のシガーソケット(12V)から電源を取るタイプのポータブルシャワーが便利です。これらはホームセンターやネット通販で数千円程度で購入できます。ポンプ部分をポリタンクの口から差し込むだけで使えるため、設置も撤収も非常に簡単です。
ポンプを選ぶ際は、ポリタンクの口径(キャップの大きさ)にポンプが入るかどうかを必ず確認してください。一般的な灯油用ポリタンクの口径は狭いものが多いですが、アウトドア用の広口タイプ(口径10cm以上)を選ぶと、ヒーターもポンプもスムーズに出し入れできてストレスがありません。ホースの長さも、自分の車の車高に合わせて適切なものを選びましょう。
ポータブル電源の容量とお湯が沸くまでの時間
電気でお湯を沸かす場合、気になるのが「どのくらいの時間で沸くのか」と「バッテリーは持つのか」という点です。例えば、20リットルの水を10度の水温から40度まで上げる場合、1000Wクラスのヒーターを使っても30分〜1時間程度かかります。サーフィンを始める前にスイッチを入れておけば、上がってくる頃にはちょうど良い湯加減になっています。
ただし、ヒーターは消費電力が大きいため、ポータブル電源の容量には余裕が必要です。1000Wのヒーターを1時間使うと、理論上は1000Whの容量を消費します。中型のポータブル電源では容量不足になる可能性があるため、ヒーターのワット数を下げる(500W程度にする)か、あらかじめ家でお湯を作って保温性の高いタンクに入れて持参するなどの工夫も検討してみてください。
サーフィンをするポイントに到着したらすぐに準備を始めましょう。海に入っている時間を計算してタイマーをセットしておくと、戻ってきた時に最高のお湯が待っています。
本格派向け!ガス瞬間湯沸かし器をDIYで設置する手順

電気式ではお湯が沸くまでに時間がかかりますが、ガス式なら「瞬間」にお湯が出ます。自宅のシャワーと同じような感覚で使いたい方には、この方法が最適です。ただし、ガスの取り扱いには細心の注意が必要です。
カセットガス式湯沸かし器の仕組みと特徴
アウトドア用の「ポータブルガス給湯器」を利用する方法です。これらはカセットガス(CB缶)やプロパンガス(OD缶)を燃料とし、バーナーで配管を熱して、そこを通る水を瞬間的にお湯に変える仕組みです。代表的な製品には、海外製の「Kampa(キャンパ)」や、最近では国内メーカーが販売しているアウトドア用給湯器などがあります。
最大のメリットは、待ち時間がゼロであることです。スイッチを入れて蛇口をひねれば、すぐにお湯が出ます。また、連続してお湯を使えるため、複数人でサーフィンに行った際も、全員が温かいシャワーを浴びることができます。水圧さえ確保できれば、自宅と変わらない快適さを手に入れられるでしょう。
車内への取り付け場所と排気システムの確保
ガス湯沸かし器を設置する場合、最も重要なのが「設置場所」と「換気」です。燃焼には大量の酸素が必要であり、同時に排気ガスが発生します。車内に固定設置する場合は、必ず排気ダクトを車外に出す工事が必要になりますが、これはDIYの難易度が非常に高くなります。
そのため、サーファーの間では、使う時だけリアゲートを開けて、製品を吊り下げて使用するスタイルが主流です。これなら排気ガスが車内に充満する心配がありません。もしくは、リアハッチの内側にフックなどを取り付け、使用時のみ本体をセットできるように加工するのが現実的で安全なDIYと言えるでしょう。
給水タンクとポンプの配管接続方法
ガス湯沸かし器には、水圧が必要です。チョロチョロとした水流では、着火センサーが反応せず、お湯にならないことがあります。そのため、使用する水中ポンプは水圧が高めのもの(毎分5リットル以上など)を選ぶ必要があります。ポンプから湯沸かし器の「給水口」へホースを繋ぎ、湯沸かし器の「出湯口」にシャワーヘッドを繋ぎます。
配管接続には、ワンタッチコネクターを使用すると便利です。準備と片付けがワンタッチで行えるようになり、寒い屋外での作業時間を短縮できます。ホースバンドを使ってしっかりと固定し、水漏れがないようにチェックすることも忘れずに行いましょう。特に高圧ポンプを使う場合は、接続部にかかる負荷も大きくなるため注意が必要です。
エコロジーな選択!エンジンの熱を利用する熱交換器システム

長距離移動が多いサーファーにおすすめなのが、車のエンジン熱を利用する方法です。走行中に捨ててしまう熱エネルギーを再利用するため、燃料代や電気代がかからず、非常にエコロジーで経済的なシステムです。
ラジエーター液の熱を利用する仕組みとは
車のエンジンは走行中、非常に高温になります。その熱を冷やすために循環しているのが「ラジエーター液(クーラント)」です。この熱々のラジエーター液を、別のパイプを通して水タンクの中に通す(あるいは熱交換器という部品を通す)ことで、タンク内の水を温めるのがこのシステムの基本原理です。
この仕組みの素晴らしい点は、目的地に着く頃にはお湯が完成していることです。電気を使わないためバッテリー上がりの心配もなく、ガスのような燃料切れもありません。車が走れば走るほどお湯が作れるため、移動を繰り返しながらサーフィンポイントを探すようなスタイルには最適です。
設置に必要なパーツと配管の難易度について
このシステムは非常に魅力的ですが、DIYの難易度は最も高くなります。エンジンの冷却系統に割り込ませて配管を分岐させる必要があるため、車に関する専門的な知識が不可欠です。万が一、冷却水が漏れるようなことがあれば、オーバーヒートを起こしてエンジンが壊れてしまうリスクがあります。
必要なパーツとしては、熱交換器(ヒートエクスチェンジャー)、耐熱ホース、分岐用のアダプター、そして温まった水を循環させるためのポンプなどがあります。これらを安全に取り付けるためには、プロのショップに相談するか、十分な知識を持って慎重に作業を行う必要があります。初心者にはあまり推奨できませんが、完成した時の満足度は非常に高いシステムです。
走行直後に熱いお湯が使える利便性
熱交換器システムの最大のメリットは、その圧倒的な熱量です。エンジンが十分に温まっていれば、タンクの水温は60度〜80度近くまで上昇することもあります。これでは熱すぎるため、実際には水と混ぜて使うことになりますが、結果として少量の温水で大量の適温シャワーを作り出すことが可能です。
冬の早朝、ポイントまでの移動中に自動的にお湯が沸き、到着してすぐに温かいシャワーで着替えの準備ができる。このスムーズな流れは一度体験すると手放せません。ただし、停車してエンジンを切ると徐々に水温が下がっていくため、保温性の高いタンクを使うなどの工夫を組み合わせると、より快適に利用できるでしょう。
自作温水シャワーを安全に使い続けるための注意点と対策

ここまで様々な方法を紹介してきましたが、どの方法を選ぶにしても「安全」が最優先です。水と電気、あるいは火を扱うシステムである以上、トラブルはつきものです。ここでは、長く安全に使い続けるためのポイントを解説します。
水漏れトラブルを防ぐための定期チェック
車内での水漏れは、キャンピングカーにとって致命的なダメージになりかねません。床材が腐ったり、カビが発生したり、最悪の場合は車の電気系統にかかってショートする恐れもあります。自作した配管や接続部分は、走行中の振動で徐々に緩んでくることがあるため、定期的な点検が欠かせません。
特に、ポンプとホースのつなぎ目、タンクのキャップ周辺、ヒーターの固定部分は念入りにチェックしましょう。使用する際は、必ず防水トレイの上にタンクを置くなど、万が一漏れても車内に広がらないような「二重の対策」をしておくことを強くおすすめします。水漏れセンサーなどを設置するのも一つの有効な手段です。
一酸化炭素中毒を防ぐ換気の徹底
ガス式の湯沸かし器や、カセットコンロでお湯を沸かす場合、一酸化炭素中毒は命に関わる重大なリスクです。一酸化炭素は無色無臭で、気づかないうちに意識を失い、死に至るケースも少なくありません。寒いからといって、閉め切った車内で火を使うことは絶対にしてはいけません。
基本的には車外で使用するのがルールですが、どうしても車内で火を使う必要がある場合は、窓を全開にし、換気扇を回し、さらに「一酸化炭素警報機」を必ず設置してください。警報機は数千円で購入できる命綱です。また、換気をしていても風向きによっては排気が戻ってくることもあるため、常に警戒心を持って使用してください。
カビや雑菌の繁殖を防ぐタンクの清掃方法
温水は人間にとって快適ですが、同時に雑菌やカビにとっても繁殖しやすい環境です。使い終わったタンクの中に水を残したままにしておくと、次に使う時に異臭がしたり、ヌメリが発生したりします。特に、ぬるま湯の状態が長く続くと菌の繁殖スピードは早まります。
使用後は必ずタンク内の水を完全に抜き、乾燥させることが大切です。定期的に食品用のアルコールスプレーで消毒したり、酸素系漂白剤を使ってタンク内部を洗浄したりしましょう。また、シャワーヘッドやホースの中にも水が残りやすいため、これらもしっかりと水抜きを行ってください。清潔な水を使ってこそ、サーフィン後の肌ケアも効果的になります。
キャンピングカーの温水を自作して快適なサーフトリップを実現しよう
キャンピングカーに温水システムがあれば、冬の厳しい寒さの中でも、サーフィンの楽しさは倍増します。海から上がった後に温かいシャワーを浴びるあの至福の瞬間は、言葉では言い表せないほどの感動があります。
今回ご紹介したように、ポリタンクとヒーターを使った手軽な方法から、ガスを使った瞬間湯沸かし、エンジンの熱を利用する本格的なシステムまで、自作のアプローチは様々です。予算や技術、そして何よりあなたのサーフィンスタイルに合わせて、最適な方法を選んでみてください。
自作することは、単にコストを抑えるだけでなく、自分の愛車への愛着を深め、万が一のトラブルにも自分で対応できるスキルを身につけることにも繋がります。ぜひ、この週末から準備を始めて、次のトリップでは最高の温水シャワーを体験してください。安全には十分配慮しつつ、快適なキャンピングカーライフを楽しみましょう。




