「テイクオフは速いし、乗っている時は最高に楽しいけれど、沖に出るのがとにかく大変……」
最近、その乗りやすさから人気急上昇中のミッドレングスですが、多くのサーファーを悩ませているのが「ドルフィンスルー」です。ショートボードのように深く沈まない、戻されてしまう、と感じている方は多いのではないでしょうか。
実は、ミッドレングスのドルフィンスルーには、ショートボードとは少し違った「コツ」と「力の使い方」が必要です。この記事では、浮力のあるボードでも波をスムーズに越えるためのテクニックや、どうしても沈まない時の対処法をわかりやすく解説します。
ミッドレングスでのドルフィンスルーが難しい理由とは?

まず、なぜミッドレングスでのドルフィンスルーがこれほどまでに難しく感じるのか、その原因を整理しておきましょう。ここを理解することで、この後の技術的な解説がより頭に入りやすくなります。
浮力(ボリューム)の違いによる沈めにくさ
最大の理由は、やはり「浮力」です。一般的なショートボードが25〜30リットル程度であるのに対し、ミッドレングスは35〜50リットル、場合によってはそれ以上の浮力を持っています。
この浮力こそがテイクオフの速さを生むメリットなのですが、ドルフィンスルーにおいては「沈めにくさ」という大きな壁となります。ショートボードと同じ感覚で体重をかけても、ボードは海面下に沈みきらず、波のパワーをもろに受けてしまうのです。
ボードの長さが影響するタイミングのズレ
次に影響するのが「ボードの長さ」です。6フィート後半から7フィート台のボードは、ノーズからテールまでの距離が長くなります。これにより、ノーズを沈めてからテールを沈めるまでの動作に、ショートボードよりも長い時間を要します。
波が来る瞬間のタイミングで沈めようとすると、テールを沈め終わる前に波が到達してしまい、ボードごとひっくり返されることが多くなります。ミッドレングスでは、より早い段階での準備とアクションが求められるのです。
体力と技術のバランスが求められる
浮力の強いボードを強制的に沈めるには、単純に「腕力」や「体重」を効率よく使う技術が必要です。ショートボードなら勢いで沈められた場面でも、ミッドレングスではしっかりとした体幹と、ボードを抑え込む筋力が不可欠になります。
技術だけでなく、その技術を遂行するための基礎体力も、ミッドレングスのドルフィンスルーを成功させるための重要な要素と言えるでしょう。
成功のカギは「沈め方」!ミッドレングス特有のフォーム

ここからは、具体的にどのようなフォームや意識でドルフィンスルーを行えばよいのか、実践的なテクニックを解説します。ショートボードのやり方を少しアレンジする必要があります。
ノーズを刺す位置と体重のかけ方
最初のステップは、ノーズを深く沈めることです。ミッドレングスの場合、ショートボードよりも「前寄り」に手をつく意識を持ちましょう。普段のパドリング位置よりもさらにノーズ寄りのレールを掴むか、デッキに手をつきます。
そして、腕だけで沈めるのではなく、上半身全体の体重を真下に預けるようにして押し込みます。肘を伸ばし切る勢いで、自分の体がボードの上に乗り上げるようなイメージを持つと、浮力に負けずにノーズを沈めることができます。
膝ではなくつま先を使うメリット
ショートボードでは片膝を使ってテールを沈めることが多いですが、浮力の強いミッドレングスでは「つま先」を使うことを強くおすすめします。
【つま先を使う理由】
・膝よりも力が伝わりやすく、強い浮力を抑え込みやすい
・足の裏全体でデッキパッドやテール付近を捉えることで安定する
・より深く、垂直に近い角度でボードを蹴り込むことができる
ノーズを沈めた後、空中に足を振り上げ、その勢いを使ってつま先でテールを真下に踏み込みます。この「踏み込み」が甘いと、テールが浮いたままになり、波にさらわれる原因になります。
レールを掴む手と腕の使い方
ボード幅が広いミッドレングスでは、デッキ(ボードの表面)に手をつくと力が分散しやすくなります。そのため、特に波が大きい時や深く潜りたい時は、しっかりと「レールを掴む(グリッピング)」ことが有効です。
レールを掴むことで、ボードと体の一体感が増し、波の衝撃で手が滑るのを防げます。脇を締め、ボードを自分の体の下に引き寄せるように力を入れるのがポイントです。
体全体を使った体重移動の重要性
ミッドレングスのドルフィンスルーは、手先や足先だけの動作ではありません。シーソーのように、重心を前(ノーズ)から後ろ(テール)へスムーズに移動させる全身運動です。
まず上半身でノーズを押し込み、次にその反動を利用して、体が海中に入るタイミングで足を蹴り込みます。水中で体とボードが一直線になる瞬間を作ることで、水の抵抗を最小限に抑え、波の下をすり抜ける推進力が生まれます。
実践で使える!波のサイズ別ドルフィンスルー攻略法

波の大きさや強さによって、ドルフィンスルーのアプローチを変えることも大切です。状況に応じた使い分けを覚えましょう。
小波〜腰腹サイズの時の対処法
波が比較的小さい場合、無理に深く潜る必要はありません。ノーズを軽く沈め、波のトップ(崩れる部分)だけをやり過ごすイメージで行います。
この時、深く沈めすぎると浮き上がるまでの時間がかかり、次のパドリング動作へ移るのが遅れてしまいます。「浅く、速く」抜けることを意識し、波を越えたらすぐにパドリングを再開して沖を目指しましょう。
胸肩〜頭サイズで深く潜る方法
サイズがありパワーのある波では、中途半端な沈め方では一気に戻されてしまいます。ここでは、先ほど解説した「つま先での蹴り込み」を最大限に活用します。
早めにアプローチを開始し、波がブレイクする直前にはすでに水中にいる状態を作ります。水中でボードを水平にし、波が通り過ぎるのを待ちます。焦って浮上しようとせず、波のパワーゾーン(渦)が過ぎ去るまで我慢することも重要です。
スープ(白波)を抜ける時のポイント
すでに崩れてしまったスープ(白波)は、見た目以上に押し戻す力が強いものです。ここでは、ボードを真っ直ぐ波に向けることが最優先です。
少しでもボードが斜めになっていると、スープの圧力でボードが回転してしまいます。ボードと体を波に対して垂直にし、両手でレールをがっちりと掴んで耐える意識を持ちましょう。スープの層は表面に近いことが多いので、少しでも下へ潜ることで影響を減らせます。
どうしても沈まない時の裏技と代替テクニック

ボードの浮力が強すぎる場合や、波のサイズが大きすぎてドルフィンスルーが機能しない場合もあります。そんな時に使える代替テクニックを紹介します。
ローリングスルー(タートルロール)の活用
ロングボードで使われるテクニックですが、浮力のあるミッドレングスでも非常に有効です。ドルフィンスルーが厳しいと感じたら、無理せずこの方法に切り替えましょう。
【ローリングスルーの手順】
1. 波が来る手前でレールを強く掴む。
2. 体ごとボードをひっくり返し、自分が水中に潜る(ボードが上、人が下)。
3. ボードをしっかりと引き寄せ、波が通り過ぎるのを待つ。
4. 体を反転させて元の体勢に戻る。
コツは、ボードと体の隙間をなるべくなくすことです。隙間があると、そこで水流が暴れてボードが飛ばされそうになります。
プッシングスルーでスープを超える
比較的小さなスープや、力が弱い波であれば「プッシングスルー」が楽です。ボードの上にまたがったり寝そべったりした状態から、腕立て伏せのように腕を伸ばして胸を持ち上げます。
体とボードの間にスペースを作り、その間をスープ(白波)が流れていくようにします。ボードを沈める必要がないため体力を温存できますが、大きな波では通用しないので注意が必要です。
メモ: プッシングスルーをする際は、足首をしっかりと閉じておくとバランスがとりやすくなります。
片方のレールを沈める「片側沈め」
「ドルフィンスルーをするには浮力がきついけれど、ローリングするほどでもない」という微妙なシチュエーションで使えるのが、片側のレールだけを沈める方法です。
ボード全体を沈めるのではなく、体を傾けて片方のレール(波側のレール)だけを深く水中に食い込ませます。こうすることで波の衝撃を受け流しやすくなります。完全なドルフィンスルーの前段階の練習としても有効です。
陸上でできるミッドレングスのためのトレーニング

海に行けない日でも、ドルフィンスルーに必要な筋力を養うことは可能です。特にミッドレングスを扱うために強化したいポイントを紹介します。
腕立て伏せでプッシュ力を強化
ミッドレングスの強い浮力を押し沈めるには、上腕三頭筋(二の腕)と胸筋の強さが直結します。通常の腕立て伏せでも効果的ですが、手幅を狭くしたり、ゆっくりと沈んで素早く戻る動作を取り入れたりすると、より実践に近い力がつきます。
「ボードを押し込む力」が強くなれば、それだけ深く潜れるようになり、成功率が格段に上がります。
体幹を鍛えてバランスを保つ
水中でボードが暴れないように抑え込むには、強い体幹が必要です。プランクなどの体幹トレーニングを取り入れましょう。
特に、不安定な水中で体を一直線に保つ力は、ドルフィンスルーだけでなく、パドリングやライディングの安定感にも繋がります。1日30秒からでも良いので、継続することが大切です。
股関節の柔軟性を高めるストレッチ
ドルフィンスルーの際、足を高く振り上げたり、スムーズにつま先をテールに乗せたりするには、股関節の柔軟性が求められます。体が硬いと、どうしても動作が遅れたり、ボードに力がうまく伝わらなかったりします。
お風呂上がりなどに股関節周りのストレッチを行うことで、水中での足の動きがスムーズになり、結果としてドルフィンスルーのキレが良くなります。
ミッドレングスでドルフィンスルーを成功させるまとめ
ミッドレングスでのドルフィンスルーは、ショートボードに比べて確かに難易度が高いテクニックです。しかし、浮力の特性を理解し、正しいフォームを身につければ、必ずスムーズに沖に出られるようになります。
今回のポイントを振り返ります。
最初は失敗して戻されてしまうことも多いかもしれませんが、諦めずにトライし続けてください。ドルフィンスルーが楽になれば、体力を温存して沖に出られるようになり、その分たくさん波に乗れるようになります。ぜひ次回のサーフィンで実践してみてください。




