サーフィンロングボードでドルフィンスルーは必要?乗り越え方を徹底解説

サーフィンロングボードでドルフィンスルーは必要?乗り越え方を徹底解説
サーフィンロングボードでドルフィンスルーは必要?乗り越え方を徹底解説
上達・テクニック・陸トレ

ロングボードを始めたばかりの多くのサーファーが最初にぶつかる大きな壁、それが「ゲッティングアウト(沖に出ること)」です。「ショートボードのようにカッコよくドルフィンスルーで波を潜り抜けたいけれど、ボードが沈まなくて押し戻されてしまう……」そんな悩みを抱えている方は非常に多いはずです。

実は、浮力の大きいロングボードでドルフィンスルーを行うのは、上級者でも至難の業です。しかし、諦める必要はありません。ロングボードにはロングボードなりの、波を乗り越えるための正しい技術と戦略が存在します。

この記事では、ロングボードにおけるドルフィンスルーの真実と、それに代わる必須テクニック「ローリングスルー」や「プッシングスルー」の具体的なやり方、そして楽に沖に出るための波の読み方までを、初心者の方にもわかりやすく丁寧に解説していきます。波との戦いを減らし、波に乗る楽しみを増やすためのヒントを一緒に学んでいきましょう。

サーフィンロングボードとドルフィンスルーの基本関係

サーフィンを始めたばかりの頃、ショートボーダーが波の下をスムーズに潜り抜けていく姿に憧れるものです。しかし、ロングボードを持って同じことをしようとすると、まるで洗面器を無理やりお風呂に沈めようとするような強烈な反発力を感じることでしょう。まずは、ロングボードとドルフィンスルーの物理的な関係性と、現実的なアプローチについて理解を深めていきましょう。

なぜロングボードでドルフィンスルーは難しいのか

最大の理由は「浮力」と「体積」にあります。一般的なショートボードの浮力(ボリューム)が25〜30リットル程度であるのに対し、ロングボードは60リットルから、場合によっては80リットル以上もの体積があります。これは、ショートボードの2倍から3倍以上の空気が入った浮き輪を沈めようとするのと同じことです。

人間の体重だけでこの巨大な浮力を、波のパワーが届かない深さまで瞬間的に沈めることは、物理的に非常に困難です。特に幅が広く厚みのあるクラシックタイプのロングボードでは、成人男性の力をもってしても、ボード全体を完全に水没させることはほぼ不可能です。そのため、「技術が足りないからできない」のではなく、「物理的に不向きな道具を使っている」と理解することが、上達への第一歩です。

「絶対にできない」わけではない例外的なケース

では、ロングボードでは100%ドルフィンスルーができないのかというと、例外も存在します。例えば、ハイパフォーマンスモデルと呼ばれる、厚みが薄く、細身で軽量なロングボードを使用している場合です。これらは浮力が抑えられているため、技術と体重があればある程度沈めることが可能です。

また、体重が重くパワーのあるサーファーが、比較的浮力の小さいボードに乗っている場合も、ノーズ(先端)だけを深く沈める「刺しドルフィン(ナイフアプローチ)」のような技術を使うことがあります。しかし、これはあくまで応用的な技術であり、一般的なロングボーダーやビギナーが最初に目指すべきスタイルではありません。無理に沈めようとして体力を消耗するよりも、ロングボードに適した別の回避方法を習得する方が、はるかに効率的で安全です。

ロングボードにおける「波の越え方」の正解とは

ロングボードで沖に出るための正解は、ドルフィンスルーに固執しないことです。その代わりに習得すべき必須テクニックが「ローリングスルー(別名:タートルロール)」と「プッシングスルー」です。この2つを波のサイズや状況に合わせて使い分けることが、ロングボーダーにとってのドルフィンスルーにあたります。

ショートボードが「潜って避ける」のに対し、ロングボードは「受け流す」あるいは「やり過ごす」というアプローチを取ります。この思考の切り替えができると、無駄な力が抜け、ゲッティングアウトが格段に楽になります。「ドルフィンスルーができない=下手」という思い込みを捨て、ロングボードならではの優雅な所作で波を越えていく技術を磨いていきましょう。

ローリングスルー(タートルロール)の正しいやり方

ロングボードで大きな波やスープ(白く崩れた波)を乗り越えるための最も基本的かつ重要なテクニックが「ローリングスルー」です。海外では亀がひっくり返る様子に似ていることから「タートルロール」とも呼ばれます。この技術を完璧にマスターすれば、頭サイズの波でも安全に沖に出ることができるようになります。

ステップ1:タイミングと事前の準備

成功の鍵は、波が到達する前の準備にあります。波のスープが目の前に迫ってきたら、まずはパドリングのスピードを緩めずに直前まで進みます。そして、波が自分に当たる2〜3メートル手前で動作を開始します。

この時、ボードのノーズ(先端)と自分の顔が近すぎないように注意してください。近すぎると、ひっくり返った際に波の衝撃でボードが暴れ、顔に当たる危険があります。通常よりも少しテールのほうを持ち、ノーズ先端から30〜40cmほど手前のレール(側面)を両手でしっかりと掴みます。この「掴む位置」と「タイミング」が遅れると、ひっくり返る動作の途中で波に飛ばされてしまいますので、早めの判断を心がけましょう。

ステップ2:反転動作(フリップ)のコツ

レールを掴んだら、思い切って体を横に倒しながらボードを裏返しにします。この時、単に腕力だけでボードを回そうとするのではなく、自分の体を水中に沈めながら、その反動と体重移動を使ってボードをひっくり返すのがコツです。自分が水の中に入り、ボードを「盾」として頭上に掲げるようなイメージを持ちましょう。

非常に重要なポイントは、ボードと体を密着させすぎないことです。ボードと体の間に少し空間を作ることで、水流の逃げ道ができ、衝撃を逃がしやすくなります。ただし、手は絶対に離さないよう、レールを力強く握り続けてください。初心者のうちは、この反転動作がゆっくりになりがちですが、波の衝撃が来る前に完全に裏返った状態(ボトム面が空を向いた状態)を作り終えている必要があります。

ステップ3:水中での姿勢と耐え方

ボードを裏返し、自分が水中にぶら下がっている状態になったら、波が通り過ぎるのを待ちます。この時、両肘を少し曲げてサスペンションのように使い、波の衝撃を吸収します。波の力が強い場合は、ボードを強く引き寄せて安定させますが、基本的にはボードの浮力を利用して水中に留まります。

よくある失敗は、脚をボードに巻き付けてしまうことです。「怖いから」といって脚でボードを挟んでしまうと、体全体が海面近くに浮き上がってしまい、最もパワーのあるスープの直撃を受けて一緒に流されてしまいます。脚は水中の深い位置にダラリと垂らしておくか、カエルのように広げてアンカー(重り)の役割をさせることが重要です。体(特に下半身)を深く沈めることで、水面の激しい乱流を避けることができます。

ステップ4:リカバリー(復帰)の動作

波の轟音が通り過ぎ、水流が落ち着いたのを感じたら、素早くボードを表向きに戻してパドリングの体勢に復帰します。これを「リカバリー」と呼びますが、ここでもたついてしまうと、次の波が来てしまい、またローリングスルーをしなければならない「ハマる」状態に陥ります。

復帰する際は、片方のレールを強く引き下げ、もう片方の手で水を押し上げるようにし、体の浮力とキックを使って一気にボードの上に這い上がります。上級者は、ボードを戻す回転力を利用して、そのままパドリングの姿勢に着地します。慣れないうちは、まずボードを戻してから、慌てずに(しかし素早く)乗り込むように練習しましょう。一連の動作をスムーズに繋げることが、体力消耗を防ぐ秘訣です。

プッシングスルーを活用して小波をクリアする

すべての波に対してローリングスルーを行う必要はありません。腰くらいまでの小さな波や、崩れかけの弱いスープであれば、より体力を使わず、素早く通過できる「プッシングスルー」が有効です。状況に応じた使い分けが、スマートなロングボーダーの証です。

プッシングスルーの基本的なメカニズム

プッシングスルーは、腕立て伏せのような体勢を取り、体とボードの間にスペースを作ることで、その隙間に波(スープ)を通すテクニックです。ボードごと沈めるドルフィンスルーとは異なり、ボードは水面に残したまま、波のエネルギーだけをやり過ごします。

具体的には、波が来る直前にレールの肩のあたりを掴み、腕を伸ばして上半身を高く持ち上げます。この時、顔に水がかかるのを嫌がって中途半端な高さにすると、波の衝撃を胸で受けてしまい、後ろに飛ばされます。腕をしっかりと伸ばしきり、できるだけ高い位置をキープすることが成功のポイントです。ボードの上を水が流れていく感覚を掴みましょう。

効果的な足の使い方とバランス

ただ腕立て伏せをするだけでは、波の衝撃でバランスを崩して転覆してしまうことがあります。これを防ぐために重要なのが「足の使い方」です。一般的には、片足をボードのテール付近に置き、つま先でデッキパッドやボード表面をしっかりと捉えて踏ん張ります。もう片方の足は少し持ち上げてバランスを取るか、両足のつま先を立てて踏ん張るスタイルもあります。

つま先でボードを後ろに蹴り出すように力を入れることで、波の進行方向とは逆のベクトルが生まれ、押し戻されるのを防ぐことができます。また、腰を高く浮かせ、お腹の下に大きなトンネルを作るイメージを持つと、よりスムーズに波が抜けていきます。腹ばいのまま波を受けるよりも、圧倒的に抵抗が減ることを実感できるはずです。

プッシングスルーが通用しない境界線

プッシングスルーは非常に便利ですが、万能ではありません。胸肩サイズ以上の波や、厚みのある強力なスープに対して行うと、腕力だけでは支えきれずにボードごと弾き飛ばされる危険があります。また、ボードが長いため、ノーズが波の裏側に刺さってしまい、そのままバックドロップのように巻き上げられることもあります。

「この波の力なら腕で支えられるか?」を瞬時に判断することが大切です。少しでも「大きい」「重そうだ」と感じたら、迷わずローリングスルーに切り替えましょう。判断ミスをして大きな波でプッシングスルーを強行すると、肩や手首を痛める原因にもなります。自分の筋力と波のパワーを天秤にかけ、安全マージンを持って選択してください。

ゲッティングアウトを楽にする波待ちとルート選び

体力勝負になりがちなロングボードのゲッティングアウトですが、実は最も重要なのは「体力」よりも「観察眼」です。海の状態を正しく読み、適切なルートを選ぶだけで、ローリングスルーの回数を半分以下に減らすことも可能です。ここでは、頭脳的なアプローチについて解説します。

カレント(離岸流)という「動く歩道」を探す

海には、岸に打ち寄せた海水が沖に戻ろうとする流れ「カレント(離岸流)」が必ず存在します。このカレントは、サーファーにとって沖へ運んでくれる天然の「動く歩道」です。カレントが発生している場所は、波が割れにくい(深くなっている)場所や、堤防の脇などが代表的です。

岸から海を観察したとき、白波が立たずに海面がざわついている場所や、ゴミや泡が沖に向かって流れている場所があれば、そこがカレントです。真正面から波が割れているインパクトゾーンに向かってパドルするのは、逆走のエスカレーターを登るようなもので、非常に非効率です。遠回りに見えても、カレントのあるチャンネル(波の切れ目)から回り込むルートを選ぶのが、ロングボードの鉄則です。

セット間隔を見極めて「凪」に進む

波は常に一定のリズムで来るわけではなく、「セット」と呼ばれる大きな波のまとまりと、波が落ち着く「小康状態」を繰り返します。セットが入っている最中に無理やり沖に出ようとするのは、まさに嵐の中に飛び込むようなもので、何度もローリングスルーを強いられ体力を消耗します。

沖に出る前には、必ず数分間ビーチで波を観察しましょう。「セットは何本続くか」「セットとセットの間隔は何分くらいか」を計ります。そして、大きなセットが終わった直後の、海面が穏やかになったタイミングを見計らって一気にパドルを開始します。この「待ち」の時間を惜しまないことが、結果的に一番早く、そして疲れずに沖へたどり着く方法です。

他サーファーの動きと「はまり」の回避

海の中にいる上手なロングボーダーの動きを観察することも非常に有効です。彼らがどこから沖に出ているか、どのタイミングでパドルを強めているかを参考にしましょう。もし、先行しているサーファーが何度も波に押し戻されている場所があれば、そこは避けるべきルートです。

また、自分が波にハマってしまい(インパクトゾーンで連続して波を食らってしまう状態)、前に進めなくなった時は、一度岸に戻る勇気も必要です。その場で戦い続けて体力を使い果たすよりも、一度浜に上がり、カレントのある場所まで歩いて移動してから再エントリーする方が、賢明で安全な場合が多いのです。無理な直進は避け、急がば回れの精神を持ちましょう。

絶対にやってはいけない「ボード捨て」

ゲッティングアウト中に大きな波が来て、ローリングスルーも間に合わないと判断した時、恐怖心からボードを放り投げて体だけで潜ってしまう行為は、絶対にやってはいけません。これを「ボードを捨てる」と言いますが、ロングボードは重量があり、波の力で飛ばされたボードは凶器となります。

もし後ろに他のサーファーがいた場合、あなたのボードが直撃して大怪我をさせる可能性があります。どんなに苦しくても、必ずリーシュコードを足で手繰り寄せるか、ボードを抱え込むようにして、自分の制御下に置いておく責任があります。沖に出るルートを選ぶ際は、他のサーファーの真正面を通らないようにラインをずらすなど、万が一の際も他人に迷惑をかけないポジショニングを常に意識してください。

ドルフィンスルーができない時の心構えと練習法

技術的なノウハウを学んでも、すぐに海で実践できるとは限りません。特に波が大きい日などは恐怖心が先に立ち、体が動かなくなることもあります。最後に、ドルフィンスルーに頼らないロングボーダーが持つべき心構えと、陸上でできるトレーニング方法についてお伝えします。

陸上でできるローリングスルーのシミュレーション

海の中で慌てないためには、陸上でのイメトレが効果的です。自宅の床やベッドの上で、ローリングスルーの動きを再現してみましょう。特に「レールを掴んで素早く裏返る」動作と、「裏返った状態でじっと耐え、素早く戻る」動作を反復します。

また、プッシングスルーに必要な腕力と体幹を鍛えるために、腕立て伏せやプランクを取り入れるのもおすすめです。特に、不安定な状態で体を支える筋肉を養うことで、波の上でもバランスを崩しにくくなります。さらに、心肺機能を高めるための有酸素運動や、いざという時に長く息を止める練習をしておくと、水中で巻かれた時のパニックを防ぐ心の余裕に繋がります。

「戻されること」を前提としたメンタル作り

ロングボードでのゲッティングアウトは、ショートボードに比べて「押し戻される」ことが頻繁にあります。「なんで進まないんだ」とイライラすると、呼吸が乱れ、余計に疲れやすくなります。「ロングボードは戻されるものだ」と割り切り、「3メートル進んで2メートル戻されたら、1メートル進んでいる」とポジティブに捉えるメンタルが大切です。

波に巻かれている最中も、力んで抵抗するのではなく、洗濯機の中の衣類のように脱力して、波の力が弱まるのを待つ冷静さを持ちましょう。力を抜くことで酸素の消費を抑えられ、リカバリーまでの体力を温存できます。海のリズムに抗うのではなく、同調する意識を持つことが、上達への近道です。

無理をしない勇気とステップアップ

最後に、自分の技術レベルに合った海況を選ぶことの重要性を強調しておきます。ローリングスルーは万能ですが、ダブル(頭の2倍)近い波や、強烈なダンパー(一気に崩れる波)では通用しないこともあります。もしビーチから見て「自分には厳しいかもしれない」と感じたり、周囲に上級者しかいないような状況であれば、その日は入水を諦めるか、スープで練習できる場所へ移動することも立派な判断です。

少しずつ波のサイズに慣れ、ローリングスルーの成功率が上がってくれば、自然と大きな波の日にも沖に出られるようになります。焦らず、段階を踏んで経験値を積み重ねていきましょう。安全に楽しんでこそ、サーフィンは長く続けられる趣味となります。

まとめ:サーフィンロングボードはドルフィンスルー以外の技術で楽しもう

まとめ
まとめ

ロングボードにおけるドルフィンスルーの問題は、多くのサーファーが通る道ですが、決して乗り越えられない壁ではありません。重要なポイントを振り返りましょう。

まず、ロングボードでドルフィンスルーができないのは物理的に当たり前のことであり、自分の技術不足を責める必要はありません。その代わりに、以下の3つの技術と戦略を磨くことが大切です。

1. ローリングスルー(タートルロール)

大きな波やスープをやり過ごすための必須テクニック。タイミングよく反転し、ボードと体の距離感を適切に保つことが成功の鍵です。

2. プッシングスルー

小波や弱いスープを効率よく越えるための技術。腕をしっかり伸ばし、つま先で踏ん張って波を受け流します。

3. 波を読む力とルート選び

カレント(離岸流)を利用し、セットの間隔を見極めることで、体力を使わずに沖へ出る賢いアプローチです。

これらの技術を組み合わせることで、ドルフィンスルーができなくても、安全かつスマートにゲッティングアウトできるようになります。「潜れないなら、回ればいい」「力で勝てないなら、頭を使えばいい」。そんなロングボード特有の奥深さを楽しみながら、次の波へとパドルアウトしていきましょう。あなたのサーフィンライフがより快適で充実したものになることを応援しています。

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