いい波を求めて早朝から車を走らせるサーファーにとって、車は単なる移動手段ではありません。着替えをする更衣室であり、道具を保管する倉庫であり、時には波待ちの間の仮眠室にもなる「第二の家」のような存在です。しかし、サーフボードの積載に困ったり、車中泊で体が痛くなったりと、純正の状態では不便を感じることも多いのではないでしょうか。
そこで注目されているのが、自分のスタイルに合わせて車を改造する「サーフィン車DIY」です。高価な既製品を買わなくても、ホームセンターや100均の材料を駆使すれば、驚くほど快適な空間を作り出すことができます。この記事では、初心者でも挑戦できる収納ラックの製作から、本格的なベッドキット、便利な小物収納まで、サーフィンライフを充実させるDIYテクニックを余すことなく解説します。
サーフィン仕様の車をDIYするメリットと基本計画

サーフィン専用の車作りを始めようと思ったとき、まず考えるべきはそのメリットと全体像です。DIYには手間がかかりますが、それを補って余りある魅力があります。また、無計画に作り始めると失敗の原因になるため、事前の計画が非常に重要です。
コストを抑えて自分だけの秘密基地が作れる
サーフィン仕様のカスタムカーをショップに依頼したり、専用のベッドキットを購入したりすると、数十万円単位の費用がかかることは珍しくありません。しかし、DIYであれば材料費のみで済むため、コストを大幅に抑えることが可能です。浮いたお金で新しいウエットスーツやサーフボードを購入したり、遠くへのサーフトリップ費用に充てたりすることができます。
また、自分で作るからこそ愛着が湧き、世界に一つだけの「秘密基地」を作る楽しさが味わえます。失敗しても自分で直せるという安心感もあり、車への理解も深まります。予算数千円から始められるプチDIYから、本格的な改造まで、財布と相談しながら進められるのも大きなメリットと言えるでしょう。
自分のギアやサーフボードに合わせた専用設計
市販のラックや収納グッズは汎用性を重視しているため、自分の持っているサーフボードのサイズや形状に微妙に合わないことがあります。特にロングボードやミッドレングスなど、長さのあるボードを車内に積む場合、既製品ではスペースを無駄にしてしまうことも多いのです。
DIYなら、自分のボードがぴったり収まるサイズで設計できます。「あと数センチ高ければボードが入るのに」といったストレスから解放され、空間をミリ単位で有効活用できます。フィンをつけたまま収納したい、複数のボードを重ねて積みたいといった個別の要望にも、アイデア次第で柔軟に対応できるのが最大の強みです。
車種に合わせたレイアウト計画の立て方
DIYを成功させるためには、自分の車の特徴を把握し、綿密な計画を立てることが不可欠です。ハイエースのようなバンタイプなら自由度は高いですが、軽バンやミニバン、SUVの場合は限られたスペースをどう使うかが鍵となります。
まずは、サーフボードをどこに積むかを決めましょう。天井吊り下げにするのか、ベッドの下に収納するのかによって、ベッドの高さや収納棚の位置が決まります。メジャーを使って車内寸法を正確に測り、簡単な図面を書いてみることをおすすめします。運転席のリクライニング位置や、後方視界の確保など、安全性にも配慮したレイアウトを心がけてください。
DIY初心者でも安心!必要な道具と材料の選び方
「DIYなんてやったことがない」という方でも心配はいりません。特別なプロ用工具がなくても、基本的な道具があれば十分なクオリティのものを作ることができます。最低限用意したいのは、長さを測るメジャー、電動ドライバー(インパクトドライバー)、ノコギリ程度です。
材料選びも重要です。木材なら加工がしやすく安価な「SPF材(ツーバイフォー材など)」や「コンパネ」、強度が必要な骨組みには鉄パイプにプラスチックを被覆した「イレクターパイプ」がサーファーDIYの定番です。ホームセンターの木材カットサービスを利用すれば、難しいノコギリ作業を減らし、正確な寸法の材料を手に入れることができます。
車内収納を劇的に増やす!サーフボードラックのDIY

サーファーにとって最大の悩みと言えば、かさばるサーフボードの積み方です。車内に無造作に置くと人が乗れなくなったり、ボードが破損したりするリスクがあります。ここでは、車内のデッドスペースである「天井」を活用したラックの製作方法を紹介します。
車内天井スペースを有効活用するインテリアバーの活用術
最も手軽にボードラックを作りたいなら、カー用品店やホームセンターで売られている「インテリアバー」を活用する方法がおすすめです。これは車内のアシストグリップ(手すり)に引っ掛けるだけで設置できる伸縮式のバーで、工具不要で取り付けられます。
1本あたり千円程度で購入でき、前後に2本セットすれば簡易的なボードラックが完成します。ただし、そのままでは走行中の振動でボードが滑ったり、ガタついたりするため工夫が必要です。バーの上に滑り止めのゴムマットを巻いたり、100均のクッション材を取り付けたりすることで、ボードを安定させることができます。ショートボードや軽量なボードなら、この方法で十分に収納可能です。
イレクターパイプを使った本格的なラック製作手順
ロングボードや複数のボードを積載したい場合、あるいはアシストグリップの位置が合わない場合は、イレクターパイプを使った自作ラックが最適です。イレクターパイプは強度が高く、専用のジョイントパーツを組み合わせることで自由な形のラックを作ることができます。
作り方は、まず車幅に合わせてパイプをカットします。次に、車のアシストグリップを外し、そのネジ穴を利用してパイプを固定する専用のアタッチメントを取り付けます。これで基礎となるサイドバーを設置し、その上に横渡しするバーを組み合わせることで、非常に頑丈なラックが完成します。メタルジョイントを使えば、分解や高さ調整も簡単に行えるため、将来的なレイアウト変更にも対応できます。
ショートボードとロングボードの収納ポイントの違い
ラックを作る際は、積載するボードの種類によって注意すべきポイントが異なります。ショートボードは軽くて短いですが、ノーズが尖っているため、急ブレーキ時に前方に飛び出さないよう、バンドでしっかり固定する必要があります。
一方、ロングボードは重量があり長さもあるため、ラック自体の耐荷重が重要になります。パイプの径を太いものにするか、支えとなるポイントを増やすなどの補強が必要です。また、長いボードはフロントガラス付近まで達することがあるため、運転中の視界を妨げない高さに設定することや、ルームミラーが見える位置を確保することが安全運転のために欠かせません。
ボードを傷つけないためのクッション材と固定テクニック
せっかく作ったラックで大切なボードを傷つけてしまっては本末転倒です。パイプや木材が直接ボードに当たらないよう、必ずクッション材を巻きましょう。ホームセンターで売っている配管用の保温カバーや、100均の隙間テープなどが安価で代用できます。
固定には、伸縮性のあるバンジーコードやタイダウンベルトを使用します。締め付けすぎるとボードが凹む原因になるため、適度なテンションで固定するのがコツです。また、ラックとボードの間に滑り止めのシートを一枚挟むだけで、走行中の不快なズレを劇的に減らすことができます。細かい部分ですが、こうした配慮が快適なドライブに繋がります。
快適な車中泊を実現するフラットなベッドキットの作り方

いい波を当てるためには、前夜からポイントに入って車中泊をするのが一番です。しかし、シートを倒しただけでは凹凸があり、熟睡するのは難しいもの。ここでは、自宅のベッドのように快適なフルフラット空間を作るDIY手順を紹介します。
シートの段差を解消する土台(根太)の組み方
ベッド作りで最も重要なのが、水平な土台を作ることです。車の床は意外と凸凹しており、後部座席を倒しても完全なフラットにはなりません。まずは、どの高さを基準にして水平を出すかを決めます。一般的には、倒した後部座席の背もたれの高さか、タイヤハウスの高さを基準にします。
土台の材料には、加工しやすい2×4材などの木材か、軽量で丈夫なイレクターパイプが適しています。床の形状に合わせて脚の長さを調整し、水準器(スマホアプリでも可)を使って水平を確認しながら骨組みを組んでいきます。この段階でしっかりと強度を出しておかないと、寝返りを打った時にキシミ音がしたり、最悪の場合崩れたりする危険があるため、接合部は金具でしっかりと固定しましょう。
コンパネとクッション材で作る快適な床板の製作
土台ができたら、その上に載せる天板(床板)を作ります。材料は厚さ12mm以上のコンパネ(合板)が一般的です。車内のカーブに合わせてコンパネをカットするのは難しい作業ですが、段ボールで型紙を作ってから板に写すと失敗が少なくなります。
板のままだと体が痛いため、コンパネの上にウレタンチップスポンジなどを貼り付け、その上から合皮レザーや厚手の布で包み込みます。裏側でタッカー(大きなホッチキス)を使って布を留めれば、プロが作ったような美しい仕上がりのベッドマットが完成します。合皮レザーを選ぶと、濡れたウエットスーツや飲み物をこぼした時でもサッと拭き取れるので、サーファーには特におすすめです。
荷物もたっぷり入る床下収納スペースの確保
ベッドキットを自作する大きなメリットは、ベッドの下を広大な収納スペースとして使えることです。土台の高さを決める際、自分が持っているポリタンクや収納ボックスの高さに合わせて設計すれば、無駄のない収納空間が生まれます。
サーフィンでは、ウエットスーツ、バケツ、着替え、工具など荷物が多くなりがちです。ベッド下の奥側には使用頻度の低いものを、手前側(バックドア付近)には出し入れの多いポリタンクやバケツを置けるようにすると便利です。また、長尺物を入れるために、土台の脚の位置を工夫して、トンネル状のスペースを確保しておくと、予備のサーフボードや釣り竿なども収納できます。
取り外し可能にして普段使いと両立させる工夫
サーフィン専用車として使うなら固定式でも構いませんが、普段は家族の送迎や買い物に使う場合、後部座席が使えないと不便です。そこで、ベッドキットは簡単に取り外しができる「分割式」で作ることをおすすめします。
天板を2〜4枚程度に分割して作っておけば、使わない時は重ねてラゲッジスペースに収納できます。また、土台部分も工具なしで分解できる構造にするか、後部座席を起こした状態でもラゲッジ部分だけ棚として使えるように設計しておくと便利です。車検の際にも荷室の荷物を降ろす必要があるため、着脱のしやすさは長く使い続けるための重要なポイントになります。
濡れたウエットスーツや小物を整理する便利グッズのDIY

サーフィン後の濡れた道具の扱いは頭を悩ませる問題です。また、ワックスやフィンキーといった細々したアイテムは車内で行方不明になりがち。ここでは、ちょっとした工夫で快適さが格段にアップする小物収納と水回りアイデアを紹介します。
バックドアを活用したウエットハンガー掛けの設置
海から上がった後、ウエットスーツを脱いで乾かしたり、着替えをかけたりする場所があると非常に便利です。バックドア(リアハッチ)を開けた状態の扉部分は、まさに絶好のハンガースペースとなります。
簡単な方法としては、バックドアの金属部分に強力なマグネットフックを取り付けることです。これだけで、ハンガーをかけるポイントが完成します。さらに本格的にするなら、バックドアの内張りを留めているクリップ穴を利用して、イレクターパイプやステンレスバーを取り付けるDIYもあります。ここにS字フックを常備しておけば、ウエットスーツだけでなく、ランタンや濡れたタオルを干す場所としても活躍します。
ポリタンクやバケツが倒れない固定枠の作成
お湯を入れたポリタンクが走行中のカーブで倒れ、車内が水浸しになる悲劇は、サーファーなら一度は経験したくないものです。これを防ぐために、ポリタンクがぴったり収まる固定枠をDIYしましょう。
木材の端材でポリタンクの底面サイズに合わせた四角い枠を作るだけでも十分な効果があります。枠の底にマジックテープ(オス側)を貼り付けておけば、車のカーペットにしっかり食いついてズレません。また、100均で売っているワイヤーネットを結束バンドで箱型に組み立て、専用のスタンドを作るのも手軽で効果的です。タンクの横に電動シャワーのポンプを収納する小さなポケットを追加するのも良いアイデアです。
100均アイテムを活用した小物収納アイデア
サーフィンには、ワックス、スクレーパー、日焼け止め、リペアテープなど、小さな道具がたくさん必要です。これらを整理するには、100均の収納グッズが最強の味方になります。
また、窓の上部や側面のちょっとした隙間に、突っ張り棒を渡してワイヤーネットを取り付ければ、壁面収納が生まれます。そこに小さなカゴを引っ掛ければ、ワックスなどの小物を放り込んでおける定位置になります。どこに何があるか一目でわかるようにしておくことで、波乗り前の準備がスムーズになり、忘れ物防止にもつながります。
車内の防水対策と汚れ防止シートの自作
サーファーの車は、砂と海水でどうしても汚れやすくなります。特にシートやフロアマットに入り込んだ砂は掃除が大変です。これを防ぐために、防水シートカバーを自作または活用しましょう。
厚手のレジャーシートや防水加工された生地を、シートの形状に合わせてカットし、ゴム紐をつけて被せるだけで立派な防水カバーになります。既製品を買うよりも安く、好きな柄で作れるのが魅力です。また、ラゲッジルームの床には、ホームセンターで切り売りされている「クッションフロア」や「ゴムマット」を敷くのがおすすめです。水や汚れを弾くので、汚れても雑巾で拭くだけで綺麗になり、掃除の手間が劇的に減ります。
サーフィン後の着替えや休憩を快適にする目隠し・断熱DIY

車中泊や着替えの際、外からの視線は気になるものです。また、真夏や真冬の過酷な環境下で車内で過ごすには、断熱対策が欠かせません。プライバシーと快適な温度を守るためのDIYテクニックを見ていきましょう。
プライバシーを守るカーテンやシェードの自作
着替えや睡眠時の目隠しとして、窓を覆うシェードは必須アイテムです。車種専用のサンシェードは高価ですが、銀マット(キャンプ用のアルミロールマット)やプラダン(プラスチック段ボール)を使えば、数百円で自作できます。
作り方は簡単で、新聞紙で窓の型を取り、それに合わせて銀マットをカットするだけです。少し大きめにカットして窓枠にはめ込むようにすれば、吸盤なしでも固定できます。布製のカーテンを付けたい場合は、100均のカーテンワイヤーや、ピラーの隙間にクリップを挟んで突っ張り棒を渡す方法があります。マグネットをカーテンの上部に縫い込み、窓枠の金属部分に貼り付ける方法も、取り外しが簡単でおすすめです。
夏の暑さと冬の寒さを防ぐ断熱材の施工方法
車のボディは鉄板一枚なので、外気の影響をダイレクトに受けます。特に冬場の車中泊では、底冷えで眠れないことも。本格的に快適さを求めるなら、車体の断熱加工に挑戦してみましょう。
簡単なのは、内張りを剥がして、ボディの鉄板部分に断熱材(グラスウールやスタイロフォーム)を詰め込む方法です。天井やドアの内部、床下に施工することで、冬は暖かく、夏はエアコンの効きが良くなります。内張りを剥がすのはハードルが高いという場合は、窓ガラスの断熱を強化するだけでも効果があります。先ほど紹介した自作シェードの素材を厚手のものにしたり、断熱効果のあるスタイロフォームを窓の形に切ってはめ込む「窓埋め」を行ったりするのが有効です。
換気を確保するための網戸(バグネット)の設置
夏の車中泊では、暑さ対策として窓を開けて寝たいところですが、蚊などの虫の侵入が問題になります。そこで役立つのが車用網戸(バグネット)のDIYです。
一番簡単なのは、車のドア枠ごと覆える袋状のネットを自作することです。園芸用の防虫ネットや柔らかいメッシュ生地を袋状に縫い、ドアを開けた状態で上から被せるだけで完成します。また、プラダンを窓の半分程度のサイズに切り抜き、中をくり抜いて網戸を貼り付け、窓ガラスの溝にはめ込むという方法もあります。これなら換気をしながらプライバシーも守れ、虫の心配をせずに快適な睡眠をとることができます。
LEDランタンや照明の配置で夜も快適に
夜の車内で過ごす時間を快適にするには、照明計画も大切です。純正のルームランプだけでは暗すぎたり、バッテリー上がりが心配だったりします。そこで、電池式や充電式のLEDライトを活用しましょう。
天井のラックやサイドバーに、マグネット式のLEDバーライトを取り付けると、調理や読書に十分な明るさを確保できます。雰囲気作りには、ストリングライト(イルミネーションライト)を天井に這わせるのもおしゃれです。暖色系の明かりを選ぶと、リラックス効果が高まり、サーフィンで疲れた体を癒やす空間になります。USB充電式のものを選べば、モバイルバッテリーで給電できるので配線の手間もありません。
まとめ:サーフィン仕様の車DIYで波乗りライフをもっと自由に
サーフィン仕様の車をDIYすることは、単に収納スペースを増やすだけでなく、サーフィンというライフスタイルそのものをより豊かに、より自由にする手段です。自分の手で作ったラックにボードを積み、自作のベッドで波音を聞きながら眠る時間は、何にも代えがたい特別な体験となるでしょう。
最初は小さな収納の工夫から始めてみてください。失敗しても修正できるのがDIYの良いところです。少しずつ手を加えて、自分の車を世界最高の「サーフトリップ・ベース」へと進化させていきましょう。快適な車があれば、フットワークも軽くなり、きっと今まで出会えなかった素晴らしい波との出会いが待っているはずです。


