「若い頃に憧れていたサーフィンを、今から始めてみたい」「健康のために海に入りたいけれど、体力的に不安がある」そんな風に思っている方は多いのではないでしょうか。実は今、40代や50代からサーフィンを始める「おじさんサーファー」が増えています。海という大自然の中で波に乗る感覚は、何物にも代えがたい爽快感と喜びを与えてくれます。
もちろん、若い頃と同じように体力だけで乗り切ることは難しいかもしれません。しかし、適切な道具選びと無理のない練習方法、そして大人の余裕を持ったマナーを身につければ、年齢に関係なく上達し、長く楽しむことが可能です。この記事では、サーフィン初心者の「おじさん」世代に向けて、道具選びから基礎トレーニング、海での実践テクニックまでをやさしく丁寧に解説します。あなたも新しい趣味として、波乗りの世界へ飛び込んでみませんか。
サーフィン初心者の「おじさん」でも遅くない!始めるメリットと現実

「この歳からサーフィンなんて、笑われないだろうか?」そんな不安を抱く必要は全くありません。海を見渡せば、白髪混じりのベテランサーファーから、最近始めたばかりの同年代まで、多くの大人が波を楽しんでいます。まずは、中高年からサーフィンを始めることのメリットと、向き合うべき現実について理解しておきましょう。
体力面の変化と向き合う
まず直面するのが、体力や筋力の低下という現実です。若い頃なら勢いでこなせたパドリング(手で漕ぐ動作)も、最初はすぐに息が上がり、腕がパンパンになってしまうかもしれません。また、瞬発力の低下により、ボードの上に立ち上がる「テイクオフ」の動作に遅れが生じることもあります。
しかし、これは決してネガティブな要素だけではありません。自分の体力の限界を知ることは、無理なコンディションの海に入らないという安全管理につながります。サーフィンは全身運動であり、継続することで確実に基礎体力が向上します。最初は5分漕ぐだけで疲れていたのが、徐々に30分、1時間と楽しめるようになります。今の自分の体をありのままに受け入れ、焦らず少しずつ体を作っていく過程そのものを楽しむ心の余裕が、大人にはあります。
精神的なリフレッシュ効果
社会人として長年勤め上げてきた「おじさん」世代にとって、サーフィンは最高のリフレッシュ手段となります。海の上に浮かんでいる間は、仕事のプレッシャーや家庭の悩みから完全に解放されます。スマートフォンもパソコンもない環境で、ただ波を待つ時間は、究極のデジタルデトックスと言えるでしょう。
波の音、潮の香り、太陽の光を全身で浴びることで、自律神経が整い、深いリラックス効果が得られます。たとえうまく波に乗れなくても、海に浸かるだけでストレスが洗い流される感覚は、多くのサーファーが口を揃えて言う魅力の一つです。週末に海でリセットすることで、週明けからの仕事にも前向きに取り組めるようになるでしょう。
同世代のコミュニティと出会い
サーフィンは個人競技ですが、海に通ううちに自然と顔見知りが増えていきます。特に、朝早くから海に入っているのは、生活リズムの整った中高年層が多い傾向にあります。休憩中に駐車場で「今日は波がいいですね」「あの板、調子はどうですか?」と何気ない会話から交流が始まることも珍しくありません。
職場や家庭とは異なる、利害関係のない「趣味の仲間」ができることは、人生の後半戦を豊かにしてくれます。同じような悩みや目標を持つ同世代の仲間と励まし合いながら上達を目指すのは、学生時代の部活動のような楽しさがあります。サーフショップ主催のスクールやイベントに参加すれば、よりスムーズにコミュニティに入っていけるでしょう。
かっこいい大人の趣味としての魅力
サーフィンを続けていると、自然と体が引き締まってきます。特に背中や肩周りの筋肉が発達し、逆三角形のシルエットに近づきます。ビール腹が気になり出したおじさん世代にとって、楽しみながら体型維持ができるのは大きなメリットです。日焼けした肌と引き締まった体は、健康的な若々しさを演出してくれます。
また、サーフィンカルチャーに触れることで、ファッションやライフスタイルにも変化が生まれます。ラフでありながら洗練されたサーフファッションを取り入れたり、早寝早起きの朝型生活にシフトしたりと、生活全体にメリハリがつきます。「趣味はサーフィンです」と胸を張って言える、かっこいい大人を目指しましょう。
中高年サーファーが選ぶべき道具とは?浮力と安定性がカギ

サーフィン初心者の「おじさん」が最も力を入れるべきは、道具選びです。ここで見栄を張って上級者向けの道具を選んでしまうと、波に乗れずに挫折する原因となります。キーワードは「浮力」と「安定性」。体力やパドル力を道具で補うことが、上達への近道です。
パドリングが楽になるボード選び
サーフボードには様々な種類がありますが、初心者の大人が選ぶべきは「ロングボード」か「ミッドレングス」、あるいは「ソフトボード」です。ショートボードのような薄くて短い板は、浮力が少なくパドリングに多大な体力を要するため、初心者には不向きです。
ロングボード(9フィート以上)は、圧倒的な浮力と安定性があり、小さな波でも簡単に乗ることができます。パドリングも進みやすく、体力に自信がない方でも波に乗る楽しさをすぐに味わえます。
ミッドレングス(7〜8フィート程度)は、ロングボードより持ち運びが楽で、ある程度の動かしやすさも兼ね備えています。車への積載事情などでロングボードが難しい場合におすすめです。
最近特に人気なのがソフトボード(スポンジボード)です。表面が柔らかい素材でできているため、万が一自分や他人にぶつかっても怪我のリスクが低く、浮力が非常に大きいためテイクオフが驚くほど簡単になります。まずはこれらのボードで波に乗る感覚を掴みましょう。
体温を守るウェットスーツの重要性
若い頃とは違い、体の冷えは体力を急速に奪い、腰痛や関節痛の原因にもなります。そのため、ウェットスーツは保温性が高く、自分の体にフィットするものを選ぶことが重要です。既製品でも高品質なものは多いですが、体型が変化しやすい中高年世代には、オーダーメイドをおすすめします。
特に冬場や水温の低い地域では、裏起毛素材や、水の浸入を最小限に抑える「セミドライ」タイプのスーツが必須です。夏場であっても、長時間海に入っていると体は冷えますし、日焼けやクラゲ対策としても、薄手のタッパーやラッシュガードを着用するのが賢明です。体を温かく保つことは、怪我の予防だけでなく、パフォーマンスの維持にも直結します。
安全対策のためのリーシュコードやプロテクター
サーフボードと自分の足をつなぐ「リーシュコード」は、命綱とも言える重要なアイテムです。これが切れてしまうと、ボードが流されて泳いで戻らなければならないだけでなく、流れたボードが他人に当たって大怪我をさせる恐れがあります。リーシュコードは消耗品と考え、1年に1回は新品に交換しましょう。
また、ボードの長さに合ったコードを選ぶことも大切です。ロングボードには太くて長いロング用のリーシュを使用します。さらに、初心者のうちは自分のボードが跳ね返ってきて体に当たることがよくあります。頭部を守るためのサーフハットや、必要であればヘルメットの着用も検討してください。最近はおしゃれなデザインのサーフハットも増えており、日焼け対策と頭部の保護を兼ねて着用する人が増えています。
あると便利なサポートグッズ
快適なサーフィンライフを送るために、ボードとウェットスーツ以外にも揃えておきたいアイテムがあります。大人の余裕を持って準備を整えましょう。
1つ目は「日焼け止め」です。海上の紫外線は強力で、シミやシワの原因になるだけでなく、日焼けそのものが体力を消耗させます。ウォータープルーフで、スティックタイプなどの強力なものを選びましょう。
2つ目は「お着替えポンチョ」です。駐車場での着替えの際、裸を見せずにスムーズに着脱できます。冬場は防寒着としても活躍する必須アイテムです。
3つ目は「ポータブルシャワーや水タンク」です。ポイントによってはシャワー設備がない場所もあります。お湯を入れて持参すれば、海上がりに温かいお湯で潮を流せます。
4つ目は「キーボックス(セキュリティボックス)」です。車の鍵を安全に保管するためのダイヤル式ボックスで、ドアノブや牽引フックに取り付けて使用します。最近の電子キーは水に濡らせないため必需品です。
海に入る前に!怪我を防ぐための体作りと陸上トレーニング

道具を揃えたらすぐに海へ行きたいところですが、ちょっと待ってください。普段あまり運動をしていない方がいきなり不安定なボードの上に乗るのは危険です。まずは陸上で、サーフィンに必要な体作りと動作の練習を行いましょう。
ストレッチで柔軟性を高める
サーフィンでは、パドリングで背中を反る、テイクオフで足を引き込む、ライディングで膝を曲げるといった動作が必要になります。体が硬いとこれらの動作がスムーズに行えず、腰や首を痛める原因になります。特にデスクワークが多い方は、肩甲骨周りと股関節が固まっていることが多いので重点的にほぐしましょう。
肩甲骨周りのストレッチは、パドリングの可動域を広げます。腕を回すだけでなく、肩甲骨を寄せる・開く動きを意識してください。股関節の柔軟性は、素早いテイクオフに不可欠です。開脚や前屈、四股踏みなどを毎日のお風呂上がりに行うだけでも効果があります。「体が動く」という感覚は、海での安心感につながります。
水泳やウォーキングで基礎体力を
サーフィンは想像以上に体力を消耗します。特に「パドル筋」と呼ばれる背中や肩の筋肉、そして不安定な足場に対応する体幹の強さが求められます。これらを鍛えるのに最も効果的なのは水泳です。クロールでの泳ぎ込みは、パドリングに必要な筋持久力と心肺機能を同時に高めてくれます。
プールに通う時間が取れない場合は、早歩きのウォーキングやジョギングで下半身と心肺機能を強化しましょう。また、自宅でできる「プランク」などの体幹トレーニングも有効です。バランスボールに乗ってテレビを見るだけでも、インナーマッスルが刺激され、ボード上でのバランス感覚が養われます。
陸上でのテイクオフ動作練習
波の上で一瞬にして立ち上がる「テイクオフ」は、初心者にとって最初の難関です。この動作を海の中でいきなり成功させるのは至難の業。陸上で何も考えずにスムーズにできるようになるまで、反復練習することが重要です。
床にうつ伏せになり、両手を胸の横につきます。そこから腕立て伏せの要領で上半身を起こし、同時に両足を素早く引き込んで立ち上がります。この時、膝をつかずに一気に足の裏をつくのがポイントですが、筋力が足りない場合は膝をついてから立ち上がる方法でも構いません。大切なのは、目線を常に前(進行方向)に向けること。下を見るとバランスを崩します。1日10回でも良いので、毎日続けることで体が動きを記憶します。
いざ海へ!無理せず楽しむための基本テクニック

準備が整ったらいよいよ海へ向かいます。しかし、海は常に変化しており、危険も潜んでいます。初心者の「おじさん」が安全に楽しむためには、技術だけでなく、状況判断能力も必要です。
波の選び方とポジション取り
初心者が最もやってはいけないのが、自分の技量を超えた大きな波の日に海に入ることです。まずは「膝〜腰」程度の小さな波の日を選びましょう。天気図や波情報サイトをチェックし、風が弱く、波が穏やかな日を狙います。
また、混雑しているポイントは避けましょう。人が多いと波の取り合いになり、接触事故のリスクが高まります。上手なサーファーが集まるピーク(波が一番最初に崩れる場所)には近づかず、少し離れた場所や、波が崩れた後の白い波(スープ)で練習するのが賢明です。「誰もいない場所でひっそり練習したい」と思うかもしれませんが、完全に一人きりの場所はトラブル時に誰も助けてくれないため、適度に人がいる場所の端っこを選ぶのがベストです。
パドリングのコツと省エネ方法
体力の消耗を抑えるためには、効率的なパドリングが欠かせません。力任せにバシャバシャと水を叩くのではなく、指先から深く水に差し込み、ボードの下を通すように長く水をかくことを意識してください。
背中を反りすぎると腰を痛めるので、胸を少し張る程度にし、重心をボードの中心に保ちます。ボードの先端(ノーズ)が水面から拳一つ分くらい浮いている状態が理想です。ノーズが沈むと水の抵抗を受け、浮きすぎると進みません。また、常に全力で漕ぐのではなく、波を追いかける時だけ出力を上げるなど、メリハリをつけることで長時間海に入っていられます。
テイクオフのタイミングと視線
波に乗るためには、波と同じ速度まで加速する必要があります。波が近づいてきたら、岸に向かって全力でパドリングを開始します。自分が思っているよりも「あと2かき」多く漕ぐくらいの気持ちで、十分にスピードに乗ってから立ち上がりましょう。
重要なのは「視線」です。初心者はどうしても足元やボードを見てしまいがちですが、これでは頭の重みでバランスが崩れ、失速してしまいます。テイクオフの瞬間から、常に行きたい方向(岸や波の進行方向)を遠く見るように心がけてください。視線が安定すれば、体も自然と安定します。
落水時の対処法と安全確保
サーフィンにワイプアウト(落水)は付きものです。派手に転ぶことを恐れてはいけませんが、転び方にはコツがあります。まず、できるだけ海面に対してフラットに(背中やお尻から)落ちるようにし、深く潜らないようにします。
そして最も重要なのが、水面に顔を出す際に「両手で頭をガードする」ことです。自分のボードが空中に舞い上がり、落ちてくる可能性があるからです。また、海中でむやみに暴れず、落ち着いて浮上しましょう。リーシュコードが足に絡まないように注意し、浮上したらすぐにボードを手繰り寄せ、次の波や他のサーファーが来ていないか周囲を確認します。
大人の余裕を見せる!海でのルールとマナーの徹底

サーフィンには、世界共通のルールと、その土地ごとのマナーが存在します。これらを知らずに海に入ると、トラブルの原因になるだけでなく、「嫌われるおじさん」になってしまいます。大人の良識と余裕を持って、マナーを守る姿は、周囲からも尊敬されます。
ワンマンワンウェイブの原則
サーフィンの最も基本的かつ重要なルールが「ワンマンワンウェイブ」です。これは、1つの波に乗れるのは1人だけ(ピークに近い優先権を持つ人だけ)という決まりです。誰かが既に乗っている波に、横から割り込んで乗る行為は「前乗り(ドロップイン)」と呼ばれ、最大のタブーとされています。
もし意図せず前乗りをしてしまった場合は、すぐにボードを引いて波から降ります。そして、相手に対して「すみませんでした!」としっかり謝罪しましょう。素直に非を認め、誠意を持って対応できるのが大人の強みです。波に乗ることに夢中になりすぎず、常に周囲を確認する癖をつけてください。
ローカルサーファーへの配慮と挨拶
海には、そのポイントを長年守り、清掃活動などを行っている「ローカルサーファー」が存在します。ビジターである私たちは、彼らのホームにお邪魔させてもらっているという謙虚な気持ちを持つことが大切です。
海に入る時や近くを通る時に、「おはようございます」「お疲れ様です」と挨拶をするだけで、お互いに気持ちよく過ごせます。無言で仏頂面のまま海に入っていくのと、笑顔で挨拶をするのとでは、周囲の印象は全く違います。コミュニケーションをとることで、その日の波の状況や注意点を教えてもらえることもあるでしょう。
混雑を避けるポイント選び
初心者のうちは、ボードのコントロールが未熟なため、人の多い場所に行くこと自体がリスクになります。上手なサーファーが多いメインポイントは避け、少し波質が落ちても空いている場所を選びましょう。
また、集団で海に入るのも避けるべきです。仲間とおしゃべりしながら波待ちをするのは楽しいですが、大人数でポイントを占領するのはマナー違反です。海に入ったら適度に散らばり、大声で騒がないように配慮しましょう。静かに海と向き合う姿勢こそが、かっこいいサーファーの姿です。
まとめ:サーフィン初心者の「おじさん」だからこそ味わえる最高の波
サーフィンは、年齢を重ねてから始めても十分に楽しめるスポーツです。体力的なハンデは、適切なボード選びと、無理のないペース配分、そしてこれまでの人生経験で培った「大人の余裕」でカバーできます。
波に乗れた瞬間の、まるで空を飛んでいるような疾走感。海上がり心地よい疲労感とともに眺める夕日。そして、同じ海を愛する仲間との出会い。これらは、勇気を出して一歩踏み出した人だけが得られる特権です。
最初はうまくいかないことの方が多いかもしれません。しかし、焦る必要はありません。誰かと比べるのではなく、昨日の自分よりも少しだけ長く波に乗れた、少しだけパドリングが楽になった、そんな小さな成長を噛み締めてください。安全とマナーを第一に、あなたらしいサーフィンライフを楽しみましょう。海はいつでも、挑戦するあなたを待っています。




