「もっとたくさんの波に乗りたい」「ショートボードで伸び悩んでいる」「ただ純粋に波に乗る感覚を楽しみたい」そんな風に感じたことはありませんか?もしそうなら、あなたのサーフィンライフを劇的に変えてくれるかもしれないのが「オルタナティブサーフボード」です。コンテストで勝つためのボードとは一味違う、自由で個性的なこのボードたちは、波に乗る喜びを再発見させてくれます。この記事では、オルタナティブサーフボードの定義から種類、選び方まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。
オルタナティブサーフボードの定義と基本的な特徴

まずは、「オルタナティブサーフボード」という言葉が何を指しているのか、その基本的な定義と、多くのサーファーを惹きつけてやまない特徴について解説します。単なる道具の違いではなく、サーフィンに対するアプローチやマインドセットの違いでもあります。
「オルタナティブ」が意味する「もう一つの選択肢」
「オルタナティブ(Alternative)」という言葉には、「代わりの」「二者択一の」「型にはまらない」といった意味があります。サーフボードの世界において、長らく主流とされてきたのは、鋭いターンや空中技を競うコンテストシーンで使われる「ハイパフォーマンスショートボード(スラスター)」と、伝統的な「ロングボード」でした。オルタナティブサーフボードとは、このどちらにも属さない、言わば「第3の選択肢」を指す総称です。特定の形を指す言葉ではなく、フィッシュ、シモンズ、ミッドレングスなど、多様な形状やコンセプトを持つボードたちがここに含まれます。競技のルールに縛られず、純粋に波との調和や滑走感を楽しむために生まれた自由なボードたちと言えるでしょう。
パフォーマンスボードとの決定的な違い
一般的なパフォーマンスショートボード(トライフィン)との最大の違いは、ボードの「ボリューム(浮力)」と「アウトライン(輪郭)」にあります。パフォーマンスボードが動きの鋭さを求めて薄く、細くシェイプされているのに対し、オルタナティブボードは全体的に幅が広く、厚みを持たせているものが多いです。また、ロッカー(ボードの反り)がフラットに近いのも特徴で、これにより水の抵抗を減らし、パドルやテイクオフの速度を向上させています。鋭角に波を切り裂くような動きよりも、波のパワーを効率よく受け止め、流れるように滑る「グライド感」を重視した設計になっています。そのため、パワーのない小波や、厚くて割れにくい波でも、驚くほど長く乗り継ぐことが可能になります。
どんなサーファーにおすすめなのか
オルタナティブサーフボードは、実はあらゆるレベルのサーファーにおすすめできる懐の深さを持っています。特に、ショートボードに挑戦したけれどなかなか立てない初心者の方や、長年ショートに乗っているけれど最近伸び悩んでいる中級者の方には、特効薬のような効果を発揮することがあります。浮力があるため波をキャッチする回数が劇的に増え、ライディング中の余裕が生まれるからです。また、上級者にとっても、波のコンディションに合わせてボードを使い分けることで、サーフィンの引き出しを増やす良いトレーニングになります。「コンテストで勝つこと」よりも「今日という1日の波を最大限に楽しむこと」を優先したいサーファーにとって、これほど頼もしい相棒はいません。
代表的な種類とそれぞれの乗り味

「オルタナティブ」と一言で言っても、その種類は多岐にわたります。ここでは、代表的な5つのタイプをピックアップし、それぞれの特徴や乗り味について詳しく紹介します。見た目もユニークでおしゃれなボードが多いので、自分のスタイルに合うものを探す楽しさもあります。
フィッシュ(サンディエゴフィッシュ)
オルタナティブボードの代名詞とも言えるのが「フィッシュ」です。魚の尾びれのような「スワローテール」と、幅の広いアウトラインが特徴です。一般的には2枚の大きなキールフィン(ツインフィン)がセットされています。このボードの最大の魅力は、圧倒的な加速力です。テール幅が広いため波のパワーを受けやすく、フラットなロッカーが水の抵抗を極限まで減らすため、一度走り出すとショートボードでは味わえないようなスピード感を体験できます。ルース(滑らか)な動きも特徴で、スケートボードのような感覚で波の上を自由に走り回ることができます。小波からある程度のサイズまで対応できる汎用性の高さも人気です。
ミッドレングス
ショートボードとロングボードの中間に位置する長さ(一般的に6’6″〜8’0″程度)のボードを「ミッドレングス」と呼びます。近年、爆発的な人気を誇るカテゴリーです。ロングボードのようなテイクオフの速さと、ショートボードに近い操作性をバランスよく兼ね備えています。「ファンボード」と呼ばれていた時代もありましたが、現代のミッドレングスはシェイプが洗練されており、非常にスタイリッシュな乗り味が楽しめます。ゆったりとクルージングすることも、体重を乗せて大きなターンを描くことも可能です。波のサイズを選ばず、体力に自信がない方や、大人のサーファーが優雅に波に乗るのに最適なボードです。
ミニシモンズ
まるで石鹸のような四角く短い形状が特徴的なのが「ミニシモンズ」です。ノーズとテールを大胆にカットしたようなデザインで、極端に短く(5フィート台前半など)、幅が広いのが特徴です。一見すると乗りにくそうに見えますが、実は「プレーニングハル」と呼ばれる船底のようなボトム形状により、驚異的な揚力を発生させます。これにより、膝〜腿サイズの力の弱い波でも、信じられないほどのスピードで滑走することができます。短いので回転性も良く、小波コンディションにおける最強の武器の一つと言われています。見た目のインパクトも強く、海での注目度も抜群です。
シングルフィン
ボードのセンターに大きなフィンが1本だけ付いているスタイルです。1970年代のサーフシーンを彷彿とさせるクラシックなデザインで、サーフィンの原点とも言える乗り味を体験できます。トライフィンのように細かい動きで加速するのではなく、波のパワーゾーンをキープしながら、大きなラインを描くことが求められます。ごまかしが効かないため、正しいレールワーク(ボードの傾け方)や身体の使い方が自然と身につきます。「サーフィンが上手くなりたければシングルフィンに乗れ」と言われるほど、基本技術の習得に適しています。一本の波を大切に、優雅に乗りたい方におすすめです。
ボンザー
「ボンザー」は、3枚または5枚のフィンシステムを持つ、非常にユニークなボードです。長いセンターフィンの脇に、細長いサイドフィンが配置されています。ボトム(ボードの裏面)に入った深い溝(コンケーブ)が特徴で、これが水流を整えて爆発的な推進力を生み出します。1970年代にキャンベルブラザーズによって開発されました。シングルフィンのような直進安定性と、トライフィンのような回転性を高い次元で融合させています。特にターン後半の伸びが素晴らしく、ドライブ感(ギュンと加速する感覚)は他のボードでは味わえない独特の中毒性があります。マニアックですが、一度ハマると抜け出せない魅力があります。
オルタナティブサーフボードに乗るメリット

なぜ今、これほどまでに多くのサーファーがオルタナティブボードを選ぶのでしょうか。単に流行っているからだけではありません。そこには、サーフィンの技術向上や楽しみ方の幅を広げる、明確なメリットが存在するからです。
波に乗れる本数が劇的に増える
サーフィンにおいて最も基本的で、かつ重要なことは「波に乗ること」です。しかし、浮力の少ないハイパフォーマンスボードでは、パドリングに体力が必要で、テイクオフもシビアになりがちです。オルタナティブボードは十分な幅と厚みを持っているため、パドリングが非常に安定し、進むスピードも速くなります。その結果、うねりの段階から余裕を持ってテイクオフすることが可能になります。1回のセッションで乗れる波の本数が倍増すれば、それだけ練習の機会も増え、何より「波に乗れた!」という満足感が大きく向上します。週末サーファーにとって、この恩恵は計り知れません。
「レールワーク」の技術が自然と身につく
現代のトライフィンショートボードは、フィンの性能が非常に高く、多少雑な体の動かし方をしてもフィンが食いついて曲がってくれる側面があります。しかし、ツインフィンやシングルフィンなどのオルタナティブボードは、フィンに頼りすぎるとルースしてしまったり、失速してしまったりします。そのため、しっかりとボードを傾け、レール(ボードの側面)を波のフェイスに入れてターンをする「レールワーク」が不可欠になります。オルタナティブボードに乗ることで、このサーフィンの本質的な技術であるレールワークを、楽しみながら自然に習得することができます。結果として、ショートボードに戻った際にも、より深いターンができるようになります。
コンディションが悪い日でも楽しめる
「今日は波が小さいからやめておこう」「風が入って面が悪いから期待できない」と、海に行くのを諦めてしまうことはありませんか?オルタナティブサーフボードを持っていれば、そんな日が逆に「最高の遊び場」に変わります。特にフィッシュやミニシモンズ、ミッドレングスは、パワーのない小波や、だらだらと崩れる厚い波を得意としています。ショートボードではテイクオフすらままならないような波でも、これらのボードならスイスイと走り抜け、技を入れることさえ可能になります。サーフィンができるコンディションの範囲が広がることで、休日をより有効に使えるようになります。
自分に合ったボードの選び方

多種多様なオルタナティブサーフボードの中から、自分にぴったりの一本を見つけるにはどうすれば良いのでしょうか。見た目の好みだけで選んでしまうと、思ったように乗れずに後悔することもあります。ここでは、失敗しない選び方のポイントを3つの視点から解説します。
自分の適正浮力よりも「少し多め」を選ぶ
ショートボードを選ぶ際は、体重に合わせて適正リッター数(浮力)を細かく計算することが一般的ですが、オルタナティブボードの場合は少し考え方を変える必要があります。
オルタナティブボードの真骨頂である「グライド感」や「フロー感」は、十分な浮力があってこそ発揮されるからです。浮力を恐れずに、少し大きめのサイズを選ぶことで、テイクオフの速さと滑走の気持ちよさを最大限に引き出すことができます。「長すぎるかな?」「厚すぎるかな?」と思うくらいが、実はちょうど良いことが多いのです。
普段よく入るポイントの波質に合わせる
あなたが普段サーフィンをするポイントは、どんな波が多いでしょうか?もし、ビーチブレイクで波の力があまりなく、トロ厚い波が多いのであれば、ミッドレングスやミニシモンズ、フィッシュなどが最適です。これらは力の弱い波のパワーを効率よく拾ってくれます。逆に、リーフブレイクや河口などで、ある程度サイズがあり、しっかりとした斜面のある波に乗る機会が多いのであれば、シングルフィンや少し長めのフィッシュなどが、大きなラインでのカービングを楽しめるでしょう。自分のホームポイントの波質と、そのボードが得意とするコンディションをマッチさせることが、満足度の高いボード選びの鍵となります。
目指すスタイルや憧れのサーファーを参考にする
機能やスペックも大切ですが、オルタナティブサーフボード選びにおいて「スタイル」は外せない要素です。「ロブ・マチャドのように力を抜いてスタイリッシュに乗りたい」「レトロな雰囲気でクラシックに波と調和したい」など、自分がどんなサーファーになりたいかをイメージしてみましょう。YouTubeやInstagramで、憧れのサーファーがどんなボードに乗っているかをチェックするのも良い方法です。オルタナティブボードは、アートのような美しいデザインやカラーリングのものも多く存在します。「持っているだけでテンションが上がる」「部屋に飾っておきたくなる」といった感性で選ぶことも、長く愛着を持って使い続けるためには大切なポイントです。
乗りこなすためのコツと心構え

念願のオルタナティブボードを手に入れたら、いざ海へ。しかし、いつものショートボードと同じように乗ろうとすると、「あれ?動かない」「なんか難しい」と感じてしまうかもしれません。ここでは、オルタナティブボードのポテンシャルを引き出し、気持ちよく乗りこなすためのコツと心構えをお伝えします。
脱力して「波にボードを走らせてもらう」意識
ハイパフォーマンスボードでは、サーファー自身がボードをパンピング(上下に動かす動作)させて加速することが多いですが、オルタナティブボードでこれをやると逆効果になることがあります。ボード自体が十分な推進力を持っているため、無理に動かそうとせず、リラックスしてボードの上に立っているだけで自然と加速していきます。ガチャガチャと細かく動くのではなく、肩の力を抜いて、ボードが波の力を受けて走り出すのを待つような感覚が大切です。
「自分で加速する」のではなく、「ボードに走らせてもらう」という意識に変えるだけで、驚くほどスムーズに乗れるようになります。
スタンスと体重移動のポイント
ボードの種類によって最適なスタンス(足の位置)は異なりますが、共通して言えるのは「前足加重」の重要性です。特にフィッシュやミニシモンズなどのロッカーがフラットなボードは、前足にしっかりと体重を乗せることで、ボード全体が水面とフラットになり、爆発的なスピードを生み出します。後ろ足に体重が残りすぎると、ブレーキがかかって失速の原因となります。また、ターンをする際も、テール(後ろ)を強く蹴り込むのではなく、レール全体を水中に沈めるように、じわっと体重を移動させることで、大きな孤を描く美しいターンが可能になります。
目線は常に先へ、ライン取りを大きく
オルタナティブサーフボードは、クイックな反応よりも、流れるようなライン取り(フロー)を得意とします。そのため、目線を足元や直前の波面に落とすのではなく、もっと先のセクションや、波がブレイクしていく方向へ向けることが重要です。目線を遠くに向けることで、自然と体の軸が安定し、ボードがその方向へ導かれていきます。焦って細かいターンを繰り返すのではなく、「あそこのセクションまで一気に滑り抜けよう」「あそこで大きくターンしよう」と、波全体を使って大きくゆったりとしたラインを描くことを意識してみてください。それが、最もスタイリッシュで、このボードらしい乗り方です。
オルタナティブサーフボードでサーフィンの世界を広げよう
今回は、オルタナティブサーフボードの魅力や種類、楽しみ方について解説してきました。オルタナティブボードは、単なる「浮力のあるボード」ではなく、サーフィンの固定観念を取り払い、もっと自由に、もっと純粋に波と遊ぶための魔法の道具です。ショートボードで伸び悩んでいる方や、波に乗る本数を増やしたい方にとって、これほど心強い味方はありません。
フィッシュの疾走感、ミッドレングスの優雅さ、シングルフィンの奥深さ。それぞれのボードには、乗ってみなければ分からない独特のフィーリングと感動があります。その日の波に合わせてボードを選ぶ楽しさを知れば、きっと海へ通う足取りも軽くなるはずです。ぜひ、あなたも自分だけの一本を見つけて、新しいサーフィンの扉を開いてみてください。波に乗る喜びが、今よりもっと大きくなることを約束します。




