サーフィンを楽しんだ後、目が真っ赤に充血していたり、なんとなく目がゴロゴロしたりすることはありませんか。それは単なる疲れではなく、紫外線や海水、風によって目が悲鳴を上げているサインかもしれません。
長年サーフィンを続けている人の中には、紫外線ダメージが蓄積して目の病気になってしまう人も少なくありません。また、コンタクトレンズを使用しているサーファーにとっては、海の中でレンズを失う不安もつきまといます。
そこで注目したいのが「サーフィンゴーグル」です。以前は少し大げさな装備に見えることもありましたが、現在では目の健康を守るための必須アイテムとして、プロアマ問わず利用者が増えています。
この記事では、なぜサーフィンにゴーグルが必要なのかという根本的な理由から、自分に合ったゴーグルの選び方、そして多くの人が気にする「曇り」や「見た目」の問題まで、徹底的に解説していきます。
サーフィンゴーグルが必要とされる重要な3つの理由

「海でゴーグルなんて大げさではないか」と感じる方もいるかもしれません。しかし、サーフィンという環境は、私たちが想像している以上に目にとって過酷な状況です。
ここでは、なぜサーファーが目を守らなければならないのか、その医学的・物理的な理由を3つのポイントに絞って解説します。
翼状片(よくじょうへん)などの深刻な眼病予防
サーファーにとって最も恐ろしい目の病気の一つが「翼状片(よくじょうへん)」です。これは、白目の組織が異常に増殖し、黒目(角膜)の方へ三角形に食い込んでくる病気です。
初期段階では充血や異物感程度ですが、進行すると角膜が歪んで乱視がひどくなったり、視界が遮られて視力が低下したりする恐れがあります。一度発症して組織が黒目にかかってしまうと、自然治癒することはなく、手術での切除が必要になります。
この病気の最大の原因は「慢性的な紫外線被曝」と言われています。長年海に通っているベテランサーファーに多く見られることから、別名「サーファーズ・アイ」とも呼ばれることがあります。
また、白目の一部が黄色く盛り上がる「瞼裂斑(けんれつはん)」という病気も、紫外線や風、ほこりの影響で発症しやすくなります。ゴーグルで物理的に紫外線をカットすることは、これらの病気を未然に防ぐ最も有効な手段なのです。
紫外線と海面反射による強烈なダメージ
私たちが普段生活している陸上と違い、海の上は紫外線量が格段に多いことをご存知でしょうか。空から降り注ぐ太陽光に加え、海面からの照り返し(反射)があるためです。
アスファルトの反射率が約10%程度であるのに対し、水面の反射率は約10〜20%、波が立って白波が混じるとさらに乱反射が強まり、あらゆる角度から目に紫外線が飛び込んできます。
強い紫外線を長時間浴び続けると、角膜が炎症を起こす「電気性眼炎(雪目)」になることがあります。サーフィン後に目が痛くて開けられない、涙が止まらないといった症状は、まさに目が日焼けをして火傷を負っている状態です。
肌に日焼け止めを塗るのと同じように、目にもUVカット機能のあるゴーグルという「日焼け止め」が必要なのです。
物理的な怪我や風・海水からの保護
サーフィン中は、紫外線以外にも物理的な危険がたくさん潜んでいます。例えば、ワイプアウトした際に自分のサーフボードが顔に当たったり、他人のボードやフィンが飛んできたりするリスクは常にあります。
ゴーグルを装着していれば、万が一の接触時に目を直接的な衝撃から守るバンパーの役割を果たしてくれます。実際に、ゴーグルのおかげで失明などの重大な事故を免れたという事例もあります。
さらに、海上の強い風も目の敵です。風を受け続けると目は極度に乾燥し、ドライアイを引き起こします。そこに海水や砂が入ると、角膜を傷つける原因になります。
【ポイント】
目は一度傷つくと再生が難しいデリケートな臓器です。「見えにくくなる」ことはサーフィンだけでなく日常生活にも支障をきたすため、物理的なガードとしてもゴーグルは非常に有効です。
コンタクトレンズ派のサーファーには救世主

視力が悪いサーファーにとって、海での視界確保は切実な問題です。裸眼では波のうねりが見えず、かといってメガネをかけるわけにもいきません。
多くの人がコンタクトレンズを使用していますが、そこには常にトラブルのリスクが潜んでいます。サーフィンゴーグルは、そんなコンタクトレンズ派の悩みを解決する強力なアイテムとなります。
波に巻かれた時のレンズ紛失リスクを激減
コンタクトレンズをしてサーフィンをする際の最大の恐怖は「レンズが外れて流されてしまうこと」です。特に大きな波に巻かれた時や、ドルフィンスルーで激しく水中に潜る時、水の抵抗でレンズがあっけなく外れてしまうことがあります。
片目だけ見えなくなった状態で、荒れた海の中からパドリングして戻るのは非常に危険ですし、恐怖感も伴います。一度海に落ちたコンタクトレンズを見つけることは不可能です。
ゴーグルを着用していれば、水圧が直接目にかかることを防げるため、コンタクトレンズが外れるリスクを劇的に減らすことができます。安心して波に突っ込んでいけるようになるのは、精神的にも大きなメリットです。
海水中の雑菌やアカントアメーバ対策
海水は決して無菌ではありません。様々な細菌やプランクトン、砂などの微粒子が含まれています。コンタクトレンズと角膜の間にこれらの異物や細菌が入り込むと、角膜炎や結膜炎などの感染症を引き起こす原因になります。
特に注意が必要なのが「アカントアメーバ」などの微生物です。角膜に小さな傷がある状態で感染すると、重篤な視力障害を引き起こす可能性があります。
ソフトコンタクトレンズは水分を含みやすいため、海水を吸着して変形したり、汚染されたりしやすい性質があります。ゴーグルで海水の侵入を防ぐことは、目の衛生環境を守る上でも非常に重要です。
1dayコンタクト+ゴーグルの組み合わせが推奨
視力矯正が必要なサーファーにとって、最も現実的で安全な方法は「1day(使い捨て)ソフトコンタクトレンズ」と「サーフィンゴーグル」の併用です。
ハードレンズは衝撃で外れやすく、目の中で割れるリスクもあるため、スポーツ時の使用は推奨されません。また、2weekなどの長期使用タイプの場合、海水で汚れたレンズをその後も使い続けることになり、衛生面で不安が残ります。
1dayタイプであれば、万が一汚れたり外れたりしても、海から上がった後に新しいものに交換すれば済みます。ゴーグルを併用することで、その「万が一」の確率をさらに下げ、快適な視界をキープすることができます。
度付きゴーグルという選択肢
「コンタクトレンズ自体が目に合わない」「海ではコンタクトをしたくない」という方には、度付き(処方箋対応)のサーフィンゴーグルという選択肢もあります。
最近では、眼鏡店やスポーツアイウェア専門店で、自分の度数に合わせたインナーレンズを作製し、ゴーグルに取り付けられるタイプも増えています。
失敗しないサーフィンゴーグル選びの5つのポイント

いざサーフィンゴーグルを買おうと思っても、検索すると様々な種類が出てきて迷ってしまうかもしれません。見た目だけで選んでしまうと、「水が入ってくる」「曇って見えない」といった失敗につながります。
ここでは、快適に使い続けるために必ずチェックしておきたい5つの選定ポイントを詳しく解説します。
1. 日本人の顔に合う「フィット感」と「アジアンフィット」
ゴーグル選びで最も重要なのは、顔へのフィット感です。どんなに高機能なレンズでも、顔とフレームの間に隙間があれば、そこから海水が侵入し、意味をなさなくなります。
欧米ブランドのゴーグルは、鼻が高く顔の彫りが深い骨格に合わせて作られていることが多く、日本人が着用すると鼻の下や頬骨のあたりに隙間ができやすい傾向があります。
そこでおすすめなのが「アジアンフィット」や「ジャパンフィット」と呼ばれるモデル、あるいは日本のメーカー(SWANSなど)が開発した製品です。日本人の平坦な顔立ちに合わせてカーブや鼻パッドが設計されているため、密着度が段違いに良くなります。
2. 曇りを防ぐ「ベンチレーション(通気)」性能
サーフィンゴーグルの宿命的な課題が「レンズの曇り」です。冷たい海水と、体温で温まった顔の表面との温度差により、レンズ内側が結露してしまうのです。
これを防ぐために重要なのがベンチレーション(通気口)の構造です。フレームの上下やサイドに計算された空気の通り道があるモデルを選びましょう。
ただし、通気性が良すぎると風が入り込んで目が乾いたり、水が入ってきたりすることもあります。「水は通さず、空気だけ通す」という特殊な弁やメッシュ構造を採用している高機能モデルを選ぶのが失敗しないコツです。
3. 視界を確保する「偏光レンズ」とカラーの使い分け
レンズの機能によって、海での見え方は全く異なります。特におすすめなのが「偏光(へんこう)レンズ」です。
偏光レンズは、水面のギラつき(乱反射)をカットしてくれるフィルターのような役割を果たします。これにより、まぶしさが軽減されるだけでなく、波のうねりやブレイクするポイントの凹凸がくっきりと見えるようになります。
また、レンズのカラーも状況に応じて選びましょう。以下に代表的なカラーの特徴をまとめました。
| レンズカラー | 特徴・おすすめの状況 |
|---|---|
| グレー・スモーク系 | 最も一般的。色調を自然に保ちつつ、強い日差しを大幅にカットします。晴天時の使用に最適です。 |
| ブラウン・アンバー系 | コントラストを高める効果があります。曇りの日や夕方でも波の形を捉えやすく、汎用性が高い色です。 |
| クリア・薄いブルー系 | 紫外線カット機能のみを持ち、視界の明るさを確保します。早朝や夕暮れ、曇天時など、暗さが気になる時におすすめです。 |
| ミラーレンズ | レンズ表面が鏡のように反射します。ファッション性が高く、外から目が見えないのが特徴。強い日差しに対して効果的です。 |
4. 激しい動きでも外れない「ストラップ構造」
サーフィンは激しい動きを伴うスポーツです。特にドルフィンスルーやワイプアウトの衝撃はすさまじく、簡易的なサングラスタイプではすぐに外れてしまいます。
必ず「ヘッドストラップ(頭の後ろで止めるバンド)」が付いているものを選んでください。さらに、より確実に固定するために、多くのサーフゴーグルには脱着可能なバックルや、締め付け具合を調整できる機能がついています。
心配な方は、ゴーグル自体にリーシュコード(流れ止め)を付けられるかどうかも確認しましょう。ウェットスーツのネック部分や首にかける紐と繋いでおけば、万が一顔から外れても海に流失するのを防げます。
5. 万が一外れても安心な「フローティング機能」
どれだけしっかり装着していても、巨大な波に巻かれた衝撃でゴーグルが飛んでいってしまう可能性はゼロではありません。そんな時に重要なのが「水に浮く(フローティング)機能」です。
フレーム自体が軽い素材でできていたり、ストラップに浮力体が付いていたりするモデルであれば、外れても水面にプカプカと浮いてきます。沈んでしまうと回収はほぼ不可能ですので、この機能の有無は購入時の大きなチェックポイントになります。
実際に使うとどうなる?メリットだけでなくデメリットも知る

ここまでサーフィンゴーグルの良さを伝えてきましたが、実際に導入するとなると「不便な点はないのか?」と気になるはずです。正直に言えば、裸眼に比べて不自由な点はいくつか存在します。
しかし、それぞれのデメリットには対処法があります。あらかじめ知っておくことで、「こんなはずじゃなかった」という後悔を防ぐことができます。
最大の敵「レンズの曇り」と現実
どんなに高性能な「曇り止め加工」が施されたゴーグルでも、条件が揃えば曇ります。特に冬場の寒い時期や、激しく動いて顔から汗や熱気が出た時に曇りやすくなります。
曇って視界が白くなると、波が見えなくなり危険です。これを完全にゼロにすることは難しいですが、海に入る直前に市販の曇り止め液を塗ることでかなり改善されます。
また、海に入ってすぐは温度差で曇りやすいですが、ゴーグル自体が海水温に馴染んでくると曇りが取れてくることもあります。こまめに換気をする(波待ちの間に少し浮かせて空気を入れる)などのテクニックも必要になります。
水滴で見えなくなる問題の対処法
曇りと同じくらい厄介なのが、レンズの外側につく「水滴」です。サーフィンは常に水を浴びるスポーツなので、レンズ表面に水滴が残ると、それがレンズの役目をして視界が歪んだり、スポット状に見えなくなったりします。
これを防ぐには、レンズ表面に「撥水(はっすい)コーティング」が施されているものを選ぶか、車用のガラコのような撥水スプレー(プラスチックレンズ対応のもの)を塗布するのが有効です。
水滴が玉になってコロコロと落ちる状態を作っておけば、息を吹きかけたり首を振ったりするだけで視界をクリアに保つことができます。
見た目が気になる?スタイルと安全のバランス
「ゴーグルをつけるとガチ勢すぎて恥ずかしい」「見た目がダサいのではないか」と気にするサーファーは少なくありません。確かに、ファッショナブルなサングラスに比べると、ストラップ付きのゴーグルは重装備に見えます。
しかし、最近ではデザイン性の高いモデルも増えています。プロサーファーの中にも愛用者が増えており、「目を守る意識の高いサーファー」として肯定的に捉えられるようになっています。
何より、将来的に目の病気でサーフィンができなくなるリスクを考えれば、今の見た目を気にするよりも、長く波乗りを楽しむための賢い選択と言えるのではないでしょうか。
メモ:
最初は気恥ずかしいかもしれませんが、周囲は意外と他人の装備を気にしていません。むしろ「あの人、しっかり対策してるな」と一目置かれることもあります。
快適に使い続けるためのメンテナンスと曇り止めテクニック

サーフィンゴーグルは決して安い買い物ではありません。少しでも長く、性能を維持して使い続けるためには、日頃のメンテナンスが不可欠です。ここでは、プロも実践するケア方法を紹介します。
海から上がった後の正しい洗い方
使用後は必ず「真水」でしっかりと洗い流してください。海水に含まれる塩分は、乾燥すると結晶化し、レンズやフレームを傷つける原因になります。また、ゴムやスポンジ部分の劣化を早めます。
洗う際の注意点は、ゴシゴシと擦らないことです。特にレンズの内側には曇り止めコーティングが施されていることが多く、指やタオルで強く擦るとコーティングが剥がれてしまいます。
流水で優しく塩分と砂を洗い流し、水気を切ったら、直射日光の当たらない風通しの良い場所で陰干しをしましょう。車のダッシュボードなどに放置すると、熱でフレームが変形する恐れがあるので厳禁です。
曇り止めスプレーの効果的な塗り方
購入時の曇り止め効果は、使用するたびに徐々に弱まっていきます。定期的に市販の曇り止め剤を使用しましょう。
手順は以下の通りです。
- レンズの内側を中性洗剤などで軽く洗い、油分や汚れを落として乾燥させる。
- 曇り止め液(ジェルやスプレー)をレンズ内側に適量垂らす。
- 指の腹(爪を立てないよう注意)や柔らかい布で全体に均一に伸ばす。
- 指定の時間乾燥させた後、軽く水にくぐらせて余分な液を流す(流しすぎないのがコツ)。
海に入る直前に塗るタイプもありますが、前日の夜にしっかり塗って乾燥させておくと、より効果が持続しやすいと言われています。
保管時の注意点と傷防止
持ち運びや保管の際は、必ず付属のソフトケースやハードケースに入れましょう。サーフバッグの中に無造作に放り込むと、ワックスがついたり、他の道具と擦れてレンズに傷がついたりします。
レンズについた小さな傷は、光を乱反射させて視界を悪くする原因になります。特にミラーレンズや偏光レンズはデリケートなので、丁寧な扱いを心がけてください。
サーフィンゴーグル導入で長く安全に海を楽しもう
サーフィンゴーグルは、単なるアクセサリーではなく、サーファーの目を守るための重要なギアです。強烈な紫外線から将来の目の病気を防ぎ、コンタクトレンズの紛失リスクを減らし、物理的な衝撃からも守ってくれます。
確かに「曇り」や「慣れ」といった課題はありますが、自分に合ったフィット感のものを選び、適切なメンテナンスと曇り止め対策を行うことで、そのデメリットは最小限に抑えられます。
「最近、海上がり目が痛いな」「波が見えにくくなったな」と感じている方は、ぜひサーフィンゴーグルの導入を検討してみてください。クリアな視界で、不安なく波に集中できる環境は、あなたのサーフィンライフをより安全で楽しいものに変えてくれるはずです。




