「週末なのに波がない」「海に行ける回数が減ってしまい、感覚が鈍りそうで不安」
サーファーなら誰しも、そんなもどかしい思いをしたことがあるはずです。海に入れない時間をどう過ごすかで、次のライディングが変わるとしたらどうでしょうか。
サーフィンの陸上トレーニング、いわゆる「陸トレ」に革命を起こしたアイテムこそが、カーバー(Carver)のCX4トラックです。数あるサーフスケートの中でも、なぜCX4がショートボーダーから絶大な支持を得ているのか。
それは、単に「進む」だけでなく、波の上と同じような「レールワーク」を求められるからこそ、本物のスキルが身につくからです。この記事では、カーバーCX4の魅力から、具体的な練習方法、自分に合ったモデルの選び方までを詳しく解説します。
カーバーCX4の特徴とは?他のトラックとの違いを徹底比較

サーフスケートの世界には様々な種類の「トラック(車軸)」が存在しますが、その中でもカーバーのCX4は、独特の地位を確立しています。
初心者から上級者まで幅広い層に愛用されていますが、その構造や乗り味は、他のトラックとは明確に異なります。まずは、CX4の基本的なメカニズムと、比較されやすい「C7トラック」などとの違いを深く理解していきましょう。
CX4トラックの基本構造とメカニズム
CX4トラックの最大の特徴は、見た目が一般的なスケートボードのトラックに近い「リバースキングピン(RKP)」と呼ばれる構造を採用している点です。
しかし、中身は全く別物です。ハンガー(車軸部分)の角度が垂直近くまで立つように設計されており、デッキを傾けるだけでノーズが驚くほどクイックに曲がります。
この構造により、バネなどの複雑なパーツを使わずに、ブッシュゴムの反発力だけでサーフィンのようなターンを生み出します。シンプルだからこそ壊れにくく、ダイレクトな反応が得られるのがCX4の真骨頂です。
C7トラックとの決定的な違い
カーバーを語る上で避けて通れないのが、元祖である「C7トラック」との比較です。C7は内部にスプリング(バネ)と回転アームが組み込まれており、非常に軽い力でノーズが左右に振れる「スイング系」のトラックです。
C7が平地でもグングン加速できる「オートマチック車」だとすれば、CX4は自分でしっかり荷重移動しないと動かない「マニュアル車」のような存在です。
C7はルースで滑らかな動きが得意ですが、CX4はよりカチッとした乗り味で、サーフボードのレールを水面に食い込ませるような、強い踏み込みが必要になります。これが「サーフィンの練習になる」と言われる最大の理由です。
C5トラックとの比較と選び方
近年登場した「C5トラック」は、CX4をさらに低重心にし、軽量化したモデルです。これは、サーフスケートでオーリー(ジャンプ)などのストリートトリックを行いたい人向けに開発されました。
純粋にサーフィンのターンを練習したいのであれば、高さ(クリアランス)があり、深いバンク角(傾き)を実現できるCX4の方が有利です。
C5はウィールも小さくなる傾向があるため、パークでアグレッシブに攻めるスケーター寄りです。波乗り感覚を養いたいサーファーには、やはりCX4のバランスが最適解と言えるでしょう。
初心者にも扱いやすい安定感の理由
「CX4は上級者向け?」と思われがちですが、実は初心者にも大きなメリットがあります。それは「直進安定性」です。
C7などのスプリング系トラックは、止まっている時やプッシュ(足で地面を蹴る動作)をする時に、前輪がグラグラと動きやすく不安定になりがちです。
一方、CX4は構造がシンプルなため、中心に戻ろうとする力が強く働きます。そのため、初めてサーフスケートに乗る人でもふらつきにくく、安心してプッシュの練習から始めることができます。
また、この安定感のおかげで、サーフスケートパークにある斜面(バンク)やボウルに入った際も、予期せぬ挙動で転倒するリスクを減らすことができます。
サーフィン上達に効く!カーバーCX4での具体的な練習法

道具を手に入れただけでは上手くなりません。CX4の特性を理解した上で、海での動きを意識したトレーニングを行うことが重要です。
ここでは、ただ漫然と滑るのではなく、実際のサーフィンに直結させるための具体的な練習メニューや意識すべきポイントを紹介します。CX4ならではの「反発」を利用した動きをマスターしましょう。
アップス&ダウンスの感覚を掴む
サーフィンの加速テクニックである「アップス&ダウンス」。CX4でこれを練習する際は、単に足首だけで板を左右にパタパタさせるのはNGです。
CX4はしっかり体重を乗せないと曲がらないため、膝を柔らかく使い、上半身のリードで板を傾ける必要があります。つま先側(トゥサイド)と踵側(ヒールサイド)へ、交互にしっかりと加重・抜重を繰り返してください。
「ブッシュゴムを潰す」イメージで体重を預け、そのゴムが元に戻ろうとする反発力を推進力に変える感覚が掴めれば、海の上でも爆発的な加速ができるようになります。
カットバックとボトムターンの連動
CX4の真価は、深いターンにあります。スピードがついたら、腰を落として低い姿勢を作り、手を水面につくようなイメージで大きくターンしてみましょう。
特に意識したいのが「目線」です。行きたい方向へ顔と肩をしっかり向けることで、CX4のトラックは素直に追従してきます。
ボトムターンで溜めたエネルギーを、トップでのアクション(リッピングやカットバック)で解放する。この一連の流れをコンクリートの上で反復することで、身体が自然と動くようになります。
体幹トレーニングとしての効果
CX4に乗っていると、知らず知らずのうちに体幹が鍛えられます。不安定なボードの上でバランスを取りながら、遠心力に耐えてターンをする動作は、インナーマッスルを強烈に刺激します。
特に、お腹に力を入れて骨盤を安定させないと、CX4のクイックな動きについていけず振り落とされてしまいます。
15分ほど本気で滑るだけで汗だくになるはずです。ジムに行かなくても、楽しみながらサーフィンに必要な筋力とバランス感覚を養えるのは、CX4ならではのメリットです。
レールワークを意識した体重移動
サーフィン初心者がつまずきやすいのが「レールが入っていない」状態でのターンです。板がフラットなまま無理やり曲がろうとしても失速してしまいます。
CX4は、デッキを傾ける(レールを入れる)動作が推進力に変わる構造です。「どれくらい傾ければ、どれくらいの半径で曲がるのか」という感覚を、反復練習で体に叩き込みましょう。
足の裏全体で板を感じ、微妙な体重移動でターン弧をコントロールできるようになれば、実際の波でもスムーズなライン取りができるようになります。
自分に合った1本を選ぶためのカーバーCX4モデル選び

カーバーには無数のモデルが存在し、デッキのデザインも長さもバラバラです。「どれを選んでも同じCX4なら一緒でしょ?」と思うのは早計です。
デッキの長さやホイールベース(前輪と後輪の間隔)によって、乗り味は劇的に変わります。自分の身長や、目指すサーフィンスタイルに合わせた最適な一本を見つけるための基準を解説します。
デッキの長さ(ホイールベース)の重要性
モデル選びで最も重要なのが「ホイールベース」です。これはトラックの穴から穴までの距離を指します。
一般的に、ホイールベースが短いと回転半径が小さくなり、キビキビとした動き(スナップやリッピング)がしやすくなります。逆に長いと、大きな弧を描くゆったりとしたターン(大きなボトムターンやカービング)が得意になります。
サーフィンの練習用としては、自分のスタンス幅(肩幅より少し広いくらい)が自然に取れる長さが必要です。狭すぎると窮屈で安定せず、広すぎると動かすのにパワーが必要になります。
人気モデル「Triton(トライトン)」の特徴
これからカーバーCX4を始める人に特におすすめなのが、「Triton(トライトン)」シリーズです。これはカーバーのセカンドライン的な位置付けで、品質はそのままに価格が抑えられています。
Tritonシリーズは、日本人の体格にも合いやすい29インチ〜32インチ程度のサイズ展開が豊富です。デザインもシンプルで飽きが来ず、最初の1本として申し分ないスペックを持っています。
もちろんトラックは正規のCX4が搭載されているため、乗り心地は高級モデルと遜色ありません。コストパフォーマンスを重視するなら、まずはここからチェックしてみましょう。
身長やスタイルに合わせた選び方の基準
具体的なサイズの目安として、身長160cm〜175cmくらいの一般的な男性であれば、デッキ全長は「30インチ〜32インチ」程度がゴールデンサイズと言われています。
もしあなたが身長が高かったり(180cm以上)、普段ロングボードやミッドレングスに乗っていてゆったり乗りたいなら、「33インチ以上」を選ぶと良いでしょう。
逆に、女性や子供、あるいは激しいアクションを練習したいショートボーダーなら、「29インチ〜30インチ」の短めのモデルを選ぶと、コントロールしやすくなります。自分の身長と「どんなサーフィンがしたいか」を照らし合わせて選んでください。
デッキの形状(コンケーブ)にも注目
長さだけでなく、デッキの凹凸(コンケーブ)も重要です。足がしっかりとホールドされるように、デッキの縁が反り上がっているタイプがおすすめです。
CX4でのターンは遠心力がかかるため、コンケーブが深いと足がズレにくく、安心して体重を預けられます。特に後ろ足(テール側)のキックがしっかりしているモデルなら、蹴り込むようなアクションもしやすくなります。
ネットで購入する場合は写真で横からのアングルを確認し、実際にショップに行けるなら、靴を履いた状態で上に乗ってみて、足の裏へのフィット感を確かめることを強くおすすめします。
カーバーCX4の乗り心地をカスタマイズする調整方法

CX4の素晴らしいところは、簡単な調整だけで「全く別の乗り物」に変えられる点です。「なんとなく曲がりにくい」「柔らかすぎて怖い」と感じたら、すぐに調整してみましょう。
特別な技術は必要ありません。付属のレンチ一本あれば、駐車場で滑りながら自分好みのセッティングを見つけることができます。ここでは、メンテナンスも兼ねた調整テクニックを紹介します。
ブッシュゴムの交換で硬さを変える
トラックの動きを決定づける心臓部が「ブッシュゴム(ブッシング)」です。ウレタン製のゴムパーツで、これの硬さを変えるのが最も効果的なチューニングです。
体重が軽い人や、もっとグニャグニャ動かしたい人は、数値の低い(例:85A)柔らかいブッシュに交換しましょう。逆に、体重がある人や、高速での安定感を求めるなら、硬い(例:92A以上)ブッシュにします。
純正のブッシュも優秀ですが、「RipTide(リップタイド)」などのサードパーティ製パーツに変えると、反発の質感が劇的に向上し、よりサーフィンに近い粘りのあるターンが可能になります。
キングナットの締め具合で動きを調整
パーツ交換をしなくても、トラックの中心にある大きなナット(キングピンナット)を回すだけで乗り味は変わります。
時計回りに締めればトラックの動きが制限され、安定感が増します。初心者は少し締め気味からスタートすると良いでしょう。
反時計回りに緩めれば、トラックが柔軟に動き、軽い力でターンできるようになります。ただし、緩めすぎるとナットが外れたり、走行中に分解する危険があるため、ネジ山が隠れる程度を限界として調整してください。
メンテナンスの頻度と注意点
CX4は構造がシンプルですが、メンテナンスフリーではありません。特に「ピボットカップ」と呼ばれる、ハンガーの支点となる部分には定期的なグリスアップが必要です。
滑っていて「ギシギシ」という異音がし始めたら、グリス切れの合図です。一度分解し、古い汚れを拭き取ってから、シリコングリスや専用のワックスを塗りましょう。
また、海沿いで使用すると潮風で金属パーツが錆びやすくなります。滑った後は真水を含ませた布で拭き、乾いた布で仕上げる習慣をつけると、ベアリングやトラックの寿命が大幅に伸びます。
ウィール交換による走行性能の変化
タイヤ(ウィール)を変えることでも、乗り心地は激変します。純正では69mm〜70mm程度の大きめで柔らかいウィール(78A前後)がついていることが一般的です。
グリップ力を高めたい場合は、接地面積が広いスクエアリップのウィールを選びましょう。逆に、スライド(ドリフト)させて遊びたい場合は、接地面積が狭く、少し硬めのウィールを選ぶとテールを流しやすくなります。
路面の状況に合わせてウィールを選ぶのも楽しみの一つです。荒れたアスファルトなら大きくて柔らかいもの、綺麗なコンクリートパークなら少し小さくて硬いもの、といった使い分けができるようになると上級者です。
購入前に知っておきたいメリットとデメリット

ここまでCX4の魅力を語ってきましたが、全ての人にとって100点満点のトラックというわけではありません。高い買い物ですので、良い点だけでなく、気になる点もしっかり把握しておきましょう。
実際に所有しているユーザーの声や、長年使ってみて分かった「リアルな評価」をまとめました。これらを天秤にかけて、購入を検討してください。
構造がシンプルで壊れにくいというメリット
CX4最大のメリットは、やはりその耐久性です。C7トラックのように内部に金属バネやベアリングなどの細かい可動部品がないため、故障のリスクが極めて低いです。
砂やホコリが入り込んでも、分解清掃が容易です。消耗品であるブッシュゴムさえ交換していれば、本体は何年でも使い続けることができます。
ラフに扱っても性能が落ちにくいという点は、毎日のように練習したいサーファーにとって、長期的なコストパフォーマンスの良さに繋がります。
パークやバンクでも滑りやすい安定感
サーフスケートを持ってスケートパークに行きたいと考えているなら、CX4一択と言っても過言ではありません。
急な斜面を降りる(ドロップイン)際や、ボウルの中を高速で周回する際、可動域が広すぎるトラックだと不安定で恐怖を感じます。CX4は適度な制限があるため、ハイスピードでもハンドルがぶれにくいのです。
「海が荒れている時はパークで練習」というスタイルを確立できるのは、CX4の持つ汎用性の高さのおかげです。
C7に比べると少し動きが硬い?デメリットの検証
デメリットとしてよく挙げられるのが、「初速をつけるのが難しい」という点です。C7なら平地で止まった状態からでも、ノーズを振るだけで簡単に進み始めますが、CX4は最初のひと蹴り(プッシュ)が必要です。
また、低速域では動きが少し「重い・硬い」と感じるかもしれません。しかし、これは裏を返せば「ごまかしが効かない」ということです。
楽に進めることよりも、しっかりレールを入れて加速する技術を身につけたいサーファーにとっては、この「重さ」こそが必要な負荷であり、デメリットというよりはトレーニング効果を高める要素と言えます。
パーツ供給の安定性と偽物への注意
カーバーは非常に人気があるため、残念ながら市場には安価なコピー品や偽物が出回っています。見た目はそっくりでも、トラックの金属の質やブッシュの性能が全く異なり、すぐに壊れたり、思うように曲がらなかったりします。
正規品であれば、万が一の破損時も交換パーツが手に入りやすく、メーカーのサポートも受けられます。
「安物買いの銭失い」にならないよう、信頼できる正規取扱店やサーフショップで購入することを強くおすすめします。本物のCX4だけが持つ、あの独特の反発力は、コピー品では決して再現できません。
まとめ
今回は、サーフィンの陸トレアイテムとして不動の人気を誇る「カーバーCX4」について徹底解説しました。
CX4は単なる移動手段としてのスケートボードではなく、波のない日でもサーフィンの感覚を研ぎ澄ませてくれる最高のパートナーです。
リバースキングピン構造によるダイレクトな反応、自分自身の荷重移動で加速を生み出す感覚、そしてパークでも遊べる汎用性と耐久性。これら全てが、あなたのサーフィンスキルを次のレベルへと引き上げてくれるでしょう。
最初は思うように進まないかもしれませんが、諦めずに練習を続けてみてください。ある日突然、海の上で「あ、これカーバーでやった動きだ!」とリンクする瞬間が訪れるはずです。
ぜひ、あなたにぴったりのCX4モデルを手に入れて、サーフィンライフをより充実させてくださいね。




