最高の波を求めて海へ向かうサーファーにとって、車中泊は単なる節約手段ではなく、理想のライフスタイルの一部です。朝一番の波を逃さないために、ポイントの目の前で目覚める贅沢は他には代えがたいものがあります。しかし、車のシートを倒しただけでは完全に平らにはならず、翌朝「体が痛い」と感じたことはないでしょうか。
ぐっすり眠って万全の体調で海に入るためには、車内の「完全フラット化」が欠かせません。市販のベッドキットは高価ですが、DIYなら費用を抑えつつ、自分のボードやギアに合わせたオーダーメイドの空間が作れます。
この記事では、初心者でも挑戦できる車中泊のフラット化DIYについて、基礎から本格的なベッド作りまでをやさしく解説します。自分の車を最高の「サーフ・ベースキャンプ」に変えてみませんか。
車中泊をフラットにするDIYの基本とメリット

車中泊において、なぜこれほどまでに「フラット(平ら)」であることが重要視されるのでしょうか。まずはその理由と、DIYで環境を整えるメリットについて整理しておきましょう。ここを理解することで、自分に必要なDIYのレベルが見えてきます。
なぜ「完全フラット」が重要なのか
多くの車はシートをリクライニングさせて「フルフラット」にできると謳っていますが、実際にはシートの凹凸や傾斜が残ることがほとんどです。このわずかな段差が、睡眠中に体に大きな負担をかけます。腰への負担や血行不良を招き、翌日のサーフィンのパフォーマンスを低下させる原因にもなりかねません。
完全に平らな床を作ることで、家のベッドと同じような感覚で寝返りを打てるようになります。熟睡できるかどうかは、翌日の波乗りの楽しさを大きく左右するのです。
エコノミークラス症候群に注意
長時間同じ姿勢で足を曲げたまま寝ると、血栓ができるリスクがあります。足を伸ばして真っ直ぐ寝られるフラットな環境は、健康を守るためにも必須条件です。
DIYならコストを抑えて自分好みにできる
車種専用のベッドキットは非常に高品質ですが、数万円から十万円以上するものも珍しくありません。一方、ホームセンターで材料を揃えてDIYすれば、数千円から数万円程度で制作可能です。浮いた予算を新しいウェットスーツや遠征費に回せるのは大きな魅力です。
サーファーに特化した仕様に作れる
既製品はあくまで一般的な用途向けに作られています。しかしDIYなら「ロングボードを中積みしたい」「ポリタンクを置く場所を固定したい」といった、サーファーならではのこだわりを設計に組み込めます。自分のギアにシンデレラフィットする空間を作れるのが、DIYの最大の醍醐味です。
初心者でも簡単!隙間や段差を埋める手軽なアイデア

いきなり木材を切ったりするのはハードルが高いと感じる方もいるでしょう。まずは、大掛かりな工作をせずに、身近なアイテムを使って段差を解消する「プチDIY」の方法を紹介します。これだけでも寝心地は劇的に改善します。
タオルとクッションで段差を埋める
最も基本的な方法は、シートのくぼみにバスタオルやクッションを詰め込むことです。特に腰や背中が当たる部分の段差を丁寧に埋めるだけで、体が沈み込むのを防げます。使わないときは枕や車内の清掃用として使えるため、荷物が増えないのもメリットです。
お風呂用マットやジョイントマットの活用
100円ショップやホームセンターで売られているジョイントマットや、お風呂用のウレタンマットは優秀な資材です。カッターで簡単に切れるため、車の形状に合わせてカットし、段差の上に敷くだけで底冷えを防ぐ断熱材代わりにもなります。
ニトリやIKEAのマットレスを流用する
家庭用の折りたたみマットレス(六つ折りなどが便利)を車内に持ち込むのも一つの手です。特にニトリなどの長座布団や細身のマットレスは、軽自動車やミニバンの幅に合うことが多く、多くの車中泊ユーザーに愛用されています。段差を埋めた上にこれを敷けば、ほぼベッドに近い寝心地が得られます。
本格的なベッドキットを自作するための材料選びと道具

より快適で見た目も美しい空間を目指すなら、木材やパイプを使ってベッドキットを自作してみましょう。ここでは、ホームセンターで手に入る代表的な材料と、必要な道具について解説します。
土台となるフレームの材料
ベッドの脚となるフレームには、主に「木材(2×4材など)」か「イレクターパイプ」が使われます。木材は加工しやすく温かみがありますが、重量が出やすいのが難点です。一方、イレクターパイプは鉄パイプに樹脂をコーティングしたもので、軽くて丈夫、かつジョイントパーツが豊富で組み立てが簡単なため、車中泊DIYの定番素材となっています。
天板に使う木材の選び方
ベッドの床面となる板には「コンパネ(コンクリートパネル)」や「構造用合板」を選びましょう。厚みは体重を支えるために最低でも12mm、できれば15mmあると安心です。薄いとたわんでしまい、破損の原因になります。
クッション材と表皮
板の上に直接寝袋を敷くと体が痛くなるため、クッション材を貼るのがおすすめです。「チップウレタン」という少し硬めのスポンジを使うと、底付き感がなく快適です。
また、その上を覆う表皮(生地)選びも重要です。サーファーなら迷わず「PVCレザー(合皮)」を選びましょう。水や汚れに強く、濡れたものを置いてもサッと拭き取れるため、海辺での使用に最適です。
必要な道具
本格的なDIYには以下の道具があると便利です。
- 電動ドライバー:ネジ締めや穴あけに必須です。
- ノコギリ:細かい調整に使います(大まかなカットはホームセンターに頼むのがコツです)。
- タッカー:大きなホッチキスのような道具で、生地を板に留める際に使います。
- ヤスリ:木材の角を丸めて、車内や怪我を防ぐために使います。
【実践編】コンパネとイレクターパイプで作る最強のフラット空間

ここからは、実際にイレクターパイプとコンパネを使ってベッドを作る手順を解説します。この方法は強度があり、下のスペースを収納として使えるため、荷物の多いサーファーに最もおすすめのスタイルです。
1. 車内の寸法を正確に測る
DIYの成功は採寸で決まると言っても過言ではありません。シートを倒した状態で、縦・横・高さを測ります。特に車内はタイヤハウスなどの出っ張りがあり、単純な四角形ではありません。型紙(新聞紙や段ボールをつなぎ合わせたもの)を作って床に敷き、形状を写し取ると失敗が少なくなります。
2. 設計図を書いて材料を計算する
採寸データを元に、簡単な設計図を書きます。パイプをどこに通すか、脚は何本必要かを書き出します。このとき、ベッドの下に収納したいクーラーボックスやポリタンクの高さを考慮して、ベッドの高さを決めるのがポイントです。
メモ: 天井との距離も重要です。ベッドが高すぎると、座ったときに頭が天井についてしまい、着替えが窮屈になります。
3. ホームセンターで材料をカットしてもらう
大きなコンパネを自分で真っ直ぐ切るのは大変です。設計図を持ってホームセンターに行き、「カットサービス」を利用しましょう。プロの機械で正確に切ってもらえば、作業時間の短縮にもなり、仕上がりも綺麗になります。イレクターパイプも同様にカットしてもらえる店舗があります。
4. フレームを組み立てる
カットしたパイプとジョイントパーツを使って、ジャングルジムのようにフレームを組み上げます。接着液で固定する前に、一度車内に入れて仮組みし、サイズに間違いがないか確認しましょう。微調整が終わったら、専用の接着液を流し込んで固定します。
5. 天板の加工とクッションの取り付け
カットしたコンパネの角をヤスリで丸めます。次に、板のサイズに合わせてカットしたウレタンマットを載せ、その上から少し大きめにカットしたPVCレザーを被せます。レザーを引っ張りながら裏側に回し、タッカーでバチンバチンと留めていきます。角の部分はギャザーを寄せるように丁寧に留めると、プロのような仕上がりになります。
6. 設置と固定
完成したフレームを車内に置き、その上にクッション付きの天板を載せれば完成です。走行中にズレないよう、フレームと板をサドルバンドなどの金具で固定するか、マジックテープで簡易固定する工夫をしましょう。
サーファーならではの工夫!ボード収納と濡れモノ対策

ただ平らに寝られるだけでなく、サーフィンを快適にするためのプラスアルファのアイデアを紹介します。限られた車内スペースを有効活用しましょう。
ベッド下をサーフボード収納にする
ベッドの高さを調整することで、床下に「サーフボード収納庫」を作ることができます。ショートボードなら横並びに、ロングボードなら助手席を倒して縦に長いトンネルを作ることで収納可能です。大切なボードを就寝中に体の下に入れておけば、車上荒らしの心配もなく安心して眠れます。
防水対策と湿気対策
海から上がった後の車内は湿気がこもりがちです。ベッドの表皮をPVCレザーにしておけば、濡れたウェットスーツやバスタオルを置いても水が染み込みません。また、板の裏側(木材がむき出しの部分)に防腐塗料を塗っておくと、カビの発生を防いで長持ちします。
天井スペースの活用
車内のアシストグリップに「インテリアバー」を渡すことで、天井付近にも収納スペースが生まれます。ここには軽い着替えや、乾かしたいタオルなどを吊るしておけます。ボードを中積みする場合も、このバーを活用すれば寝るスペースを圧迫しません。
換気システムの導入
夏の車中泊や、濡れたギアを積んでいるときは換気が重要です。窓を少し開けて網戸(ウィンドウネット)を装着したり、USBで動く小型の扇風機を設置して空気を循環させましょう。湿気を逃がすことで、車内の不快な臭いも軽減されます。
DIYする際の注意点と車検について

自作のベッドキットは便利ですが、法律や安全面で守るべきルールがあります。せっかく作ったのに「車検に通らない」ということにならないよう、以下の点に注意してください。
「荷物」として扱われるように作る
車検の際、ベッドが溶接やボルトで車体に完全に固定されていると、「構造変更」とみなされ、ナンバー区分の変更手続きが必要になる場合があります。これを避けるためには、ベッドを「工具を使わずに取り外し可能な荷物」として積載している状態にするのが一般的です。車検の時だけ降ろせるような設計にしておきましょう。
重量と積載バランス
厚い木材を使いすぎると、ベッド自体がかなりの重量になります。車の最大積載量を超えないように注意が必要です。また、重いものが高い位置にあると重心が高くなり、カーブでの走行安定性が悪くなるため、なるべく軽量な素材選びを心がけましょう。
走行中の安全性確保
最も重要なのは安全性です。万が一の急ブレーキや衝突事故の際に、ベッドの板やフレームが前方に飛んできて搭乗者を直撃することがないよう、しっかりと固定する必要があります。ラッシングベルトやタイダウンベルトを使って、車内のフックとベッドを固定するなどの対策を必ず行ってください。
まとめ
今回は、サーフィンのための車中泊フラット化DIYについて解説しました。
車内を完全にフラットにすることで、睡眠の質は劇的に向上します。タオルを詰めるだけの簡単な方法から、イレクターパイプを使った本格的なベッド製作まで、自分のスキルや予算に合わせた方法でチャレンジしてみてください。
DIYの最大の魅力は、自分のサーフィンスタイルに合わせて進化させられることです。ボードのサイズや荷物の量に合わせて工夫を凝らした愛車は、単なる移動手段を超えて、最高の旅の相棒となるはずです。快適なベッドを手に入れて、次の週末は最高の波と目覚めを楽しんでください。



