海の上を颯爽と駆け抜け、鋭いターンを決めるショートボード。そのかっこいい姿に憧れて、「サーフィンを始めるなら絶対にショートボード!」と考えている方は多いはずです。
しかし、インターネットで検索すると「初心者にショートボードは無理」「まずはロングボードから」といった厳しい意見を目にして、不安になっていませんか?
確かにショートボードはロングボードに比べて難易度は高いですが、正しいボード選びと適切な練習方法を知っていれば、初心者から始めることも不可能ではありません。大切なのは、自分のレベルに合った道具を選び、焦らず基礎を固めることです。
この記事では、これからショートボードでサーフィンを始めたい初心者の方に向けて、失敗しないボードの選び方や、最短で上達するための練習のコツをわかりやすく解説します。憧れのショートボーダーへの第一歩を、ここから踏み出しましょう。
初心者がいきなりショートボードは無謀?難易度と現実

「最初はロングボードから始めた方がいい」とよく言われますが、なぜ初心者がいきなりショートボードに乗るのは難しいのでしょうか。まずはその理由と、それでもショートボードに挑戦する場合の心構えについて解説します。
「乗れない・進まない」ショートボードの特性
ショートボードが初心者にとって難しい最大の理由は、「浮力(ボリューム)」が少ないことにあります。浮力が少ないと、ボードの上に腹ばいになっただけで体が水中に沈み込んでしまい、水の抵抗を大きく受けます。
そのため、パドリング(手で漕ぐ動作)をしてもなかなか前に進まず、波に追いつくことができません。ロングボードなら簡単に乗れるような小さな波でも、ショートボードでは波のパワーを捉えるのが難しく、テイクオフ(ボードの上に立つこと)のチャンス自体が極端に少なくなってしまいます。
それでもショートボードから始めたい人が知っておくべき現実
「難しいとわかっていても、やっぱりショートボードに乗りたい」という強い意志があるなら、それなりの覚悟が必要です。初心者がいきなりショートボードを選んだ場合、最初の数ヶ月は「ほとんど波に乗れずに終わる」という日が続くことも珍しくありません。
多くの人がこの「乗れない期間」に楽しさを感じられず、挫折して辞めてしまいます。しかし、この厳しい時期を乗り越えて、一本でも自分の力で波に乗れた時の感動は格別です。最初からショートボードを選ぶなら、「最初は乗れなくて当たり前」と割り切って、長期的な目線で取り組む必要があります。
挫折せずに楽しむためのマインドセット
ショートボードでのデビューを成功させるために大切なのは、他人と比べないことです。周りでロングボードに乗っている初心者が次々と波に乗っていても、焦る必要はありません。そもそも道具の特性が違うのですから、同じ土俵で比べること自体がナンセンスです。
また、「今日はテイクオフできなくても、パドリングの持久力をつける日」や「波待ちのバランスを練習する日」など、波に乗ること以外に小さな目標を設定しましょう。小さな成長を積み重ねることが、モチベーションを維持する鍵となります。
そして何より、海にいる時間を楽しむことが一番です。波に乗れなくても、海に浮いている心地よさや、自然との一体感を味わう余裕を持つことが、長く続ける秘訣です。
ショートボードならではの魅力とは
難易度が高い一方で、ショートボードには他のボードにはない大きな魅力があります。その一つが、スピード感と自由自在なコントロール性能です。一度スピードに乗れば、波の斜面を滑り降りる疾走感は病みつきになります。
また、「ドルフィンスルー」というテクニックを習得しやすいのもショートボードの利点です。これは、向かってくる波の下を潜ってかわす技術で、サイズのある波の日でも沖に出やすくなります。
【ショートボードのメリット】
・持ち運びが楽で、車への積み込みや自宅での保管が簡単。
・ドルフィンスルーができるようになれば、様々なコンディションの海に入れる。
・鋭いターンや技を決められるようになると、サーフィンの奥深さが広がる。
失敗しない!初心者向けショートボードの選び方

初心者がショートボードで挫折するかどうかは、最初のボード選びにかかっていると言っても過言ではありません。見た目のかっこよさだけでプロモデルのような薄いボードを選ぶのはNGです。ここでは、初心者が選ぶべきスペックを解説します。
何よりも「浮力(ボリューム)」が最重要
初心者にとって正義なのは、圧倒的に「浮力」です。浮力はリッター数(L)で表され、この数値が大きければ大きいほど、水に浮きやすく、パドリングもテイクオフも楽になります。
一般的に上級者は自分の体重に合わせたギリギリの浮力を選びますが、初心者はそれよりもはるかに大きな浮力が必要です。以下の目安を参考に、余裕を持ったサイズを選びましょう。
| 体重 | 初心者適正ボリューム(目安) |
|---|---|
| 50kg | 28L 〜 32L |
| 60kg | 32L 〜 38L |
| 70kg | 38L 〜 45L |
| 80kg | 45L以上 |
※これはあくまで「ショートボード」として選ぶ場合の目安です。これより大きくても問題ありません。最初は「少し大きすぎるかな?」と思うくらいがちょうど良いです。
安定感を生む「幅」と「厚み」をチェック
長さだけでなく、ボードの「幅」と「厚み」も重要です。幅が広いボードは左右にグラグラしにくく、テイクオフ時の安定感が増します。初心者の場合、幅は50cm(約19 3/4インチ)以上あるものが望ましいでしょう。
厚みがあると浮力が増すだけでなく、パドリング時に胸を張るのが楽になります。薄いボードは水に沈みすぎてバランスを取るのが難しいため、全体的にポッテリとした厚みのあるデザイン(エッグシェイプやフィッシュなど)を選ぶのがおすすめです。
素材はPUより「EPS」がおすすめな理由
サーフボードの素材には、主に従来の「PU(ポリウレタン)」と、軽量な「EPS(イーピーエス)」の2種類があります。初心者には断然「EPS」素材がおすすめです。
EPSは発泡スチロールのような素材を芯材に使っており、同じサイズでもPUより軽く、浮力が強いのが特徴です。この「軽さ」と「浮力の強さ」が、パドリングの助けとなり、小波でも走り出しやすくなります。また、比較的頑丈で壊れにくいというメリットもあります。
練習に最適!「ソフトボード」という選択肢
「ショートボードに乗りたいけれど、最初はやっぱり不安」という方には、ショートボードの形状をした「ソフトボード(スポンジボード)」が救世主となります。
表面が柔らかい素材でできているため、万が一自分や他人にぶつかっても怪我のリスクが低く、何より浮力が規格外に大きいです。最近では、プロも楽しんで乗るような高性能なソフトボードが多く販売されています。
最初はショートレングスのソフトボードで波に乗る感覚とテイクオフの回数を稼ぎ、慣れてきてから本格的なハードボード(FRP製)に移行するというステップは、実は最も上達が早い賢いルートです。
ショートボード初心者がマスターすべき基礎テクニック

道具を揃えたら、次は技術です。ショートボードはごまかしが効かないため、基礎基本を徹底することが大切です。ここでは海で意識すべきポイントを解説します。
進むパドリングのコツは「姿勢」と「重心」
ショートボードは接水面積が小さいため、パドリングの姿勢がスピードに直結します。ポイントは、ボードの中心(ストリンガー)の上に体の中心を合わせ、しっかりと胸を反ることです。
胸を反ることで重心が安定し、ノーズ(ボードの先端)が水面に突き刺さるのを防げます。また、目線は常に前へ向けましょう。下を向くと重心が前にズレてバランスを崩してしまいます。
波のパワーをキャッチする位置取り
ショートボードはロングボードのように「うねり」の状態から乗るのは困難です。波が崩れ始める直前の、パワーが一番ある場所(ピーク)にポジションを合わせる必要があります。
初心者はつい波が怖いと感じて、波が割れてしまった後の白い泡(スープ)の方へ逃げがちですが、それではショートボードは走りません。勇気を出して、波が盛り上がってくるピークの近くで波待ちをする練習をしましょう。上手な人の動きを観察し、どこから乗っているかを見るのも勉強になります。
素早いテイクオフ動作を身につける
ショートボードのテイクオフは、一瞬の判断とスピードが命です。波に押されたと感じたら、迷わず手を胸の横につき、一気に立ち上がります。
この時、絶対にやってはいけないのが「膝をついてから立つ」ことと「下を見ること」です。膝をつくと動作が遅れる上にバランスが悪くなります。また、下を見ると頭の重みでノーズが刺さり、パーリング(転倒)の原因になります。
手をついて体を持ち上げる瞬間、目線を行きたい方向へ向けることで、自然と体がスムーズに動き、進行方向へボードが走り出します。
沖に出るための必須スキル「ドルフィンスルー」
ショートボード最大の壁であり、必須スキルが「ドルフィンスルー」です。波が押し寄せてきた時、ボードごと水中に潜って波をやり過ごす技術です。
コツは以下の通りです。
- 波が来る直前に、両手でレールを掴み、腕を伸ばしてノーズを深く沈める。
- その反動を利用し、片足(または膝)でテール(ボードの後ろ)を蹴り込み、体全体を水中に押し込む。
- 波が通り過ぎたら、浮力を利用して水面に浮上する。
初心者のうちは、ボードの浮力に負けて深く沈められないことが多いです。まずは平水面や小さな波で、「ノーズを沈める」「お尻を高く上げない」練習を繰り返しましょう。
最短で上達するための練習方法と環境づくり

週末だけのサーフィンでも、工夫次第で上達スピードを上げることは可能です。海に入れない時間の使い方が、ライバルとの差を生みます。
スクールを利用して基礎を固める
自己流には限界があります。特に最初は、サーフィンスクールでプロやインストラクターに教わることを強くおすすめします。ショートボード特有のバランスの取り方や、その日の波に合ったアドバイスをもらえるため、変な癖がつくのを防げます。
「初心者なのにショートボードなんて生意気だと思われないか」と心配する必要はありません。ショートボード専門のコースがあるスクールも多いので、予約時に相談してみましょう。
自宅でできる陸上トレーニング(陸トレ)
サーフィンに行けない日は、自宅でトレーニングを行いましょう。特に効果的なのが「テイクオフの反復練習」です。
床にヨガマットなどを敷き、パドリングの姿勢から一瞬で立ち上がる動作を繰り返します。この時、足の位置が毎回同じ場所に来るように意識してください。陸上でスムーズにできない動作は、不安定な海上では絶対にできません。1日10回でも良いので、毎日続けることで体が動きを覚えます。
また、パドリングに必要な背筋や、バランスを取るための体幹トレーニングも有効です。
自分のレベルに合ったポイント選び
練習する場所(ポイント)選びも重要です。混雑しているポイントや、波が大きすぎるポイントは初心者には危険であり、練習になりません。
初心者に適しているのは、腰〜腹くらいのサイズで、波が速すぎないコンディションです。また、カレント(離岸流)などの危険がないか、事前に情報を集めることも大切です。自分と同じくらいのレベルの人が多い場所や、遠浅で足がつく場所を選ぶと、安心して練習に取り組めます。
必要な道具とメンテナンスの知識

ボード以外にも必要な道具があります。ショートボードならではの選び方や、道具を長持ちさせるためのメンテナンスについて紹介します。
フィンやリーシュコードの選び方
フィンはボードの動きを左右する重要なパーツです。最初はボードに付属しているもので十分ですが、慣れてきたら少し大きめのフィンを選ぶと安定感が増します。取り外し可能なシステム(FCS2やFuturesなど)が主流なので、ボードの規格に合ったものを選びましょう。
リーシュコードは、ボードと体を繋ぐ命綱です。ショートボード用には、ボードの長さと同じくらいか、少し長めのもの(6フィート程度)を選びます。太さは5mm〜7mm程度のものが一般的です。古くなると切れる危険があるため、1年に1回は買い替えましょう。
デッキパッドは、後ろ足を置く位置に貼る滑り止めです。ショートボードではテールを踏み込んでターンするため、必ず貼るようにしましょう。
ワックスアップの基本
ショートボードは足の裏全体でボードをコントロールするため、滑り止めのワックスは丁寧に塗る必要があります。ベースコート(下地)をしっかり塗って粒を作り、その上から水温に合わせたトップコートを塗ります。
特にショートボードは、足を置く位置だけでなく、ドルフィンスルーで手を置くレール部分にもワックスを塗っておくと、手が滑らずしっかりボードを沈められます。
ボードの保管とリペアについて
サーフボードは熱と衝撃に弱いです。特にEPS素材は熱に弱いため、夏場の車内や直射日光の当たる場所に放置するのは厳禁です。剥離(膨らみ)の原因になります。
また、ぶつけてヒビが入った場合は、すぐにリペア(修理)が必要です。水が入ったまま使用すると、中のフォームが腐って重くなり、ボードの寿命を縮めます。小さな傷ならリペアテープで応急処置ができますが、早めにプロショップに相談しましょう。
まとめ:焦らず楽しみながらショートボードデビューを
サーフィン初心者にとって、ショートボードは確かにハードルの高い選択肢です。浮力が少なく、最初はパドリングすらままならないかもしれません。しかし、適切なボリュームのボードを選び、基礎練習を積み重ねれば、必ず乗れるようになります。
大切なポイントを振り返りましょう。
・ボード選び:最初は「浮力たっぷり」の大きめサイズやEPS、ソフトボードを選ぶ。
・技術:パドリングの姿勢と、下を向かないテイクオフを徹底する。
・心構え:「最初は乗れないもの」と割り切り、小さな成長を楽しむ。
ショートボードで波のフェイスを走る感覚は、他の何にも代えがたい快感です。何度も海に通い、波に揉まれながら、少しずつサーファーとしての体と感覚を作っていってください。諦めなければ、憧れのショートボーダーになれる日は必ず来ます。まずは次の週末、海へ出かけてみましょう!



